第二回 INTER BEE AWARD 開催に寄せて
昨年、Inter BEE 60周年記念企画として誕生した「INTER BEE AWARD」が、今年も第二回として開催された。
私は本年も引き続き審査員を務めることとなり、放送・メディア産業の未来像を提示する本アワードの意義を改めて実感している。
アワードの企画そのものには直接関与していないが、審査員としての視点から企画提案を行うことができる立場にある以上、その責務の重さを強く意識している。Inter BEEの審査会場は、例年きわめて刺激的な議論の場であり、今年もまたその空気を肌で感じた。
これまで数多くのアワード審査に携わってきたが、本アワードほど本質的かつ建設的な意見が交わされる場は稀である。
審査員一人ひとりが「日本の、そして未来の放送・メディア産業の在り方」を真摯に見据えながら、鋭い視点で作品を評価していく。その議論の密度と熱量こそが、本アワードの最大の価値である。
今年も審査委員長には、長年にわたり日本のテレビ放送とデジタル映像技術の発展に貢献してきた為ケ谷秀一氏を迎え、阿部健彦氏(株式会社テレビ朝日)、遠藤諭氏(株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員)、樫村雅章氏(尚美学園大学大学院 芸術情報研究科 情報表現専攻 教授)、杉沼浩司氏(日本大学 生産工学部 数理情報工学科 非常勤講師)、松田一朗氏(映像情報メディア学会 副会長)、そして筆者も審査員として参画した。放送技術・IT・半導体など各分野の専門家が名を連ねた。
分野横断的な知見が交わることで、単なる映像技術の優劣を超え、産業全体の未来像を問い直す議論が生まれている。
私は「INTER BEE IGNITION×DCEXPO」のプロデュースを担当し、新しいメディアの在り方を提示する役割を担っている。
しかし、応募作品の中で「新しいメディアの形」を正面から提示するものは、まだ多くはない。
この現実は、私自身の発信力やプロデュース力の課題を浮き彫りにするものであり、同時に、日本のメディア産業が次のフェーズに進むための課題を象徴しているようにも感じる。本稿は、そうした問題意識の延長線上にある。
INTER BEE IGNITION×DCEXPOをはじめとする新しいメディア創出の現場から、いかにして「次の時代の放送・メディアの在り方」を生み出していくのか。その道筋を模索するための、ひとつの思考の整理として記したい。