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Event Report 2025.08.27 UP

【Hollywood Report】「夏の締めくくり ジョン・ウィリアムズ 映画音楽コンサート@ハリウッド・ボウル」

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター

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〇はじめに

LAは「エンターテインメント・キャピタル」である。ここに住んでいると、他の地域ではなかなか体験出来ない、「ハリウッドならでは」の、映画に関連した貴重なイベントに参加出来る機会も少なくない。今回はやや趣向を変えて、8月末にハリウッド・ボウルで開催された、ジョン・ウィリアムズ作曲の映画音楽コンサートの模様をご紹介させて頂こう。

ジョン・ウィリアムズと言えば『スター・ウォーズ』のメインテーマが真っ先に思い浮かぶが、彼が音楽を手掛けた映画は、映画史、VFX史に名を残す作品も多く、その映画音楽の数々をロサンゼルス・フィルハーモニックが演奏するという、非常に豪華なコンサートである。それでは、その模様をご紹介する事にしよう。

○作曲家ジョン・ウィリアムズとは

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画像:シーズン開催が近くなると、郵送されてくるハリウッド・ボウルのフライヤーより

まず、ジョン・ウィリアムズをご存知ない方の為に簡単にご説明させて頂くと、「『スター・ウォーズ』の映画音楽を作曲した人」と言うのが一番わかり易いだろう。

スピルバーグ作品の数々や、『スター・ウォーズ』シリーズ、『ハリー・ポッター』シリーズなどのサントラを作曲した、ハリウッドを代表する映画音楽の作曲家であり、今年で93歳を迎えるそう。

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画像:ハリウッド・ボウルの入り口には、本日の演目がドドーンと

○ハリウッド・ボウルとは

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画像:開場直後のハリウッド・ボウル。巨大な野外音楽堂である。背後にはハリウッド・サインが見える。

ハリウッド・ボウルは、ハリウッド・サインに近い山の中腹の、広大な地形を利用して作られた巨大な野外音楽堂で、ロサンゼルスを訪問された際は是非訪れて頂きたい名所の1つである。
特に毎年6月から9月のシーズン中は、クラシック、ジャズ、ロック、映画上映&生オーケストラによるサントラ演奏まで幅広いジャンルのコンサートが、連日連夜開催される。座席数17,376席という規模を誇っている。

○Maestro of the Movies: Celebrating the Music of John Williams

ハリウッド・ボウルにおけるジョン・ウィリアムズによるコンサートは1981年から、ほぼ毎年開催されているという。例外だったのは2015年で、同年末に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の作曲作業に専念する為、お休みであった。また2020年シーズンは、コロナのパンデミックの影響によって休止された。

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画像:2021年、コロナ渦を経て1年ぶりに再オープンした時のハリウッド・ボウル。Welcome Back!の文字がスクリーンに。

このコンサートは、前半と後半の、休憩を挟んでの2部構成である。元々ジョン・ウィリアムズが全曲の指揮を振っていたが、さすがにご高齢という事もあり、2016年以降、前半は映画音楽の作曲家デイビッド・ニューマン がタクトを取り、後半をジョン・ウィリアムズが指揮、という構成で行われていた。
昨年2024年のコンサートでは、ジョン・ウィリアムズが体調面の配慮から急遽ご欠席されるというアナウンスがあり、デイビッド・ニューマンが全曲の指揮を務めた。
さて、今年2025年はどうだろうか…と懸念されていたが、今回からデイビッド・ニューマンがコンサートを完全に引き継ぎ、継続して開催される運びとなったようだ。ジョン・ウィリアムズはもちろんご健在であるが、93歳で3日間連続のコンサートで指揮を振るのは、さぞご大変であろう事は容易に推察出来る。

さて、なぜデイビッド・ニューマンが引き継いだのだろうか。

デイビッド・ニューマンは、代々「作曲家ファミリー」で、父親のアルフレッド・ニューマンも著名な作曲家であり、一族にも作曲家が多い。ジョン・ウィリアムズがアルフレッド・ニューマンと仕事をしていた頃、仕事場に遊びに来ていた少年がデイビッド・ニューマンで、その頃からのおつきあいなのだそう。そんなご縁から、このコンサートでの指揮を務めるようになったというエピソードが、過去のコンサートで紹介されていた。

〇今年のコンサート模様

この日は前半と後半で、全19曲が演奏された。

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画像:今年のコンサートのポスター。ミレニアムファルコンの窓枠と、ハリウッド・ボウルの形状を併せたお洒落なデザインである。イラストの中のお客さんを見ると、ティラノ(注:ゴジラではない)、オビワン、ジョーズ(背びれのみ)、ジョーンズ博士、ハン・ソロ、チューイなどがいて、笑える。

第1部/前半:
1. アメリカ国歌 (The Star-Spangled Banner)
2. 映画『フック』より ネヴァーランドへの飛行 (The Flight to Neverland from "Hook")
3. 映画『遥かなる大地へ』より 交響組曲 (Suite from Far and Away)
4. 映画『SAYURI』より  サユリのテーマ (Sayuri's Theme from Memoirs of a Geisha)
5. 映画『ジョーズ』より  Out to Sea / The Shark Cage Fugue (Shark Cage Fugue/Out to Sea from Jaws)
6. 映画『ミッション・インポッシブル』より テーマ(Theme from Mission: Impossible)
7. 映画『E.T.』より Three Million Light Years From Home from (Three Million Light Years From Home from "E.T. The Extra Terrestrial")
8. 映画『E.T.』よりStargazers (Stargazers from "E.T. the Extra-Terrestrial")
9. 映画『E.T.』よりフライング・テーマ  (Flying Theme from E.T. the Extra-Terrestrial)

前半では、スピルバーグ監督作品を中心に、多彩なサントラが披露された。

4曲目と5曲目の曲紹介の際、デイビッド・ニューマンが「『SAYURI』の次は、『ジョーズ』を演奏します」とアナウンスした瞬間、あまりもコントラストが違いすぎる映画なので、場内からは笑いが起こっていた(笑)

しかしながら、演奏した 「映画『ジョーズ』より  Out to Sea / The Shark Cage Fugue」は、我々が聴き慣れた”あの”メインテーマではなく、劇中で出てくるサントラからの1曲で、なかなかマニアックで通向けの選曲であった。

また、6曲目の『ミッション・インポッシブル』は、ジョン・ウィリアムズによる作曲では無いが、今年公開されたタイムリーな作品という事もあり、映画ファンへのサービスとして演奏されたようだ。

続く3曲は映画『E.T.』からの出展。休憩前の締めくくりで演奏された「フライング・テーマ」は、まるで魂が昇華していくようなエンディング(笑)で、圧巻であった。


第2部/後半:
10. 映画『スーパーマン』(1978)より マーチ(Superman March)
11. 映画『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』より  Scherzo for Motorcycle (Scherzo for Motorcycle and Orchestra from Indiana Jones and the Last Crusade)
12. 映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』より  ヘレナのテーマ (Helena's Theme from "Indiana Jones and the Dial of Destiny")
13. 映画『レイダース/失われたアーク より レイダース・マーチ』 (Raiders March (From "Indiana Jones and the Raiders of the Lost Ark")
14. 短編アニメ『親愛なるバスケットボール』より (Dear Basketball)
15. 映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』より ハン・ソロの冒険(The Adventures of Han from "Solo: A Star Wars Story")
16. 映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』より  レイア姫のテーマ (Princess Leia's Theme from Star Wars: A New Hope )
17. 映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』より フィナーレ (Throne Room and Finale from Star Wars: A New Hope)

後半は、今年映画『スーパーマン』が公開された事もあり、冒頭で「映画『スーパーマン』(1978)より マーチ」が
演奏された。そしてステージ上のスクリーンには、過去のサントラ収録やコンサートでジョン・ウィリアムズが自ら指揮を振る映像などが映し出され、感慨深いものがあった。

続けて『インディ・ジョーンズ』シリーズの名曲の数々が、映画クリップと一緒に演奏され、こちらもかなり盛り上がった。久しぶりに、シリーズを全編に渡って鑑返してみたい気持ちに駆られた。

14曲目に演奏されたのは、ジョン・ウィリアムズがサントラを作曲した、5分間の短編アニメーション「Dear Basketball」(親愛なるバスケットボールへ)

この短編アニメーションは、故コービー・ブライアントがNBAの2015~16シーズンを最後に引退した際に発表した同題のポエムをベースに作られた作品で、「リトル・マーメイド」のアリエルをデザインしたことでも知られる元ディズニーのベテランアニメーター、グレン・キーンがドローイング&アニメーションを描き、コービーと個人的に親交のあたったジョン・ウィリアムズが作曲を担当したショート・フィルムであった。この作品は2018年の第90回アカデミー賞で、短編アニメーション賞を受賞している。

実は、この作品は2017年の、このコンサートの場でプレミアが行われ、筆者もここハリウッド・ボウルにいた。ステージ上にはコービー本人が登壇し、映像に合わせてナレーションを読んだ。この「プレミア上映」の場にいることができたのは、一生に一度、あるかないかの貴重な体験だったかもしれない。

さて、この日の演奏では、オーケストラの演奏をバックに「Dear Basketball」の映像が、コービーのナレーション入りで流れ、場内からは大きな拍手が沸き起こっていた。

最後の3曲は『スター・ウォーズ』のサントラのオンパレードだった。まずは「映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』より ハン・ソロの冒険」というマニアックな選曲で始まり、『レイア姫のテーマ』、『フィナーレ』で幕を閉じた。


アンコール
18. 映画『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』より ヨーダのテーマ(Yoda's Theme from Star Wars: The Empire Strikes Back)
19. 映画『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』より 帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)(Imperial March (Darth Vader's Theme) from Star Wars: The Empire Strikes Back

さて、アンコールも、やっぱり『スター・ウォーズ』ざんまいであった。

アンコールで「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」が始まると、満員の観客席からは一斉にライトセーバーが乱舞した。これだけの数のライトセーバーが舞うと、壮観である。

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画像:「ダース・ベイダーのテーマ」では観客席で何千本というライトセーバーが舞う
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過去のコンサートでジョン・ウィリアムズが語ったコメントによれば、観客席でライトセーバーが乱舞するこの光景は、「ここハリウッド・ボウルで”自然発生”した、ここでしか見られない風物詩」なのだそう。

当初、ライトセーバー持参者はごく少数だったのが、毎年どんどん増え続け、とうとう大半の観客が持参するようになってしまった(笑)

今では、コンサート当日に売店でもライトセーバーが販売されるようになり、おそらく「1年間で最もライトセーバーが売れる日」に違いない。

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画像:ライトセーバーを持参していない方は、売店でどうぞ(ハリウッド・ボウルのギフトショップにて)

○おわりに

このように、素晴らしいコンサートであった。

ハリウッド・ボウルはハリウッドのチャイニーズ・シアター付近から徒歩でも10分程で、シーズンは6月〜9月である。このシーズン中にロサンゼルスを訪れる際には、是非とも訪問して頂きたい場所の1つである。

きっと素晴らしい思い出として、一生心に残るコンサートになる事だろう。

ハリウッド・ボウル公式サイト
https://www.hollywoodbowl.com/

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