Inter BEE 2025 幕張メッセ:11月19日(水)~21日(金)

キャプション
Event Report 2025.08.01 UP

【Hollywood Report】LAの新名所Cosm LAで「Matrix体験」

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター

IMG
Image Courtesy of Cosm / ©Cosm

〇はじめに

10数年ほど前、LAX(ロサンゼルス国際空港)の近くに、「ハリウッドパーク競馬場」があった。筆者は馬刺しは大好物だが、ギャンブラーではない。しかし、友人達と一緒に人生初の競馬を1度だけ体験したのが、ここハリウッドパーク競馬場であった。

この競馬場は2013年に閉鎖され、その後大規模な再開発が実施された。その結果、ハリウッドパーク競馬場の跡地は、「ハリウッドパーク・エンターテインメント複合施設」(以降、ハリウッドパーク)として生まれ変わった。

ここハリウッドパークには、2022年のスーパーボウルで知られるSoFiスタジアムがあり、コンサート会場YouTubeシアターも隣接している。その後もハリウッドパーク周辺の再開発は続いており、NBAクリッパーズの本拠地インテュイット・ドーム(Intuit Dome)などの新しい施設が続々とオープンしている。

そんな中、ある日、

「あのエリアに、謎の映像施設が出来て、良くわかんないけど、なんか凄いらしいっす」

という噂話が飛び込んできた。

しかも、その謎の施設で、なんと映画「マトリックス」(1999)の公開25周年記念に併せた、謎のイベントが開催されるらしい、という情報が飛び込んできた。

…このように、全てが謎だらけで、詳細が全くわからないままだった(本当)が、これはもう、とりあえず行ってみるしかないだろう。

かくして、ハリウッドパークの広大に敷地内にある、Cosm LA(コズムLA)を訪問する流れとなったのである。


〇映画「マトリックス」(1999)の公開25周年記念のイベント

このイベントの正式名称はThe Matrix in Shared Reality。

告知広告によれば:
「マトリックス・イン・シェアード・リアリティ」は、Cosm、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ、Little Cinemaの3社が協賛でお届けする没入型映画体験です。観客はLEDドームシアターの中で映画『マトリックス』を体験します。この体験は、従来の映画スクリーンの枠を超え、映画のアクションと連動し、スクリーン自体を超えて広がるダイナミックな映像を通して、ネオとトリニティの世界に観客を没入させます。(英語)

とあった。

そこで、さっそくオンラインでチケットをゲットし、現地に向かってみる事にした。

〇場所はハリウッド地区ではない(重要)

目指すは、ハリウッドパーク。

名前に「ハリウッド」の文字が含まれている為、LAの地元民以外の皆様は混乱される事と思うが、場所はハリウッド地区ではなく、LAX空港近郊のイングル・ウッド地区と呼ばれるエリアに位置する。この記事を読まれ、実際に現地を訪れてみたい読者の方は、この点は訪問前に要チェック!である。

(東京駅の近くに、東京ディズニーランドがある訳ではない…、のと同じかもしれない)

筆者のアパートから車を飛ばす事、35分。ハリウッドパークの敷地内へ入ると、これまでビヨンセのコンサート等で何度か足を運んだ事があるSoFiスタジアムから数百メートルの場所に、Cosm LAは鎮座していた。

Cosm LAの隣には「パーキング3番」があるので、もし車で来場された場合はここに停めれば良い。シアターの中で、駐車券をスキャンすればバリデーション(入館記録)が貰えるので、4時間までは無料で駐車出来る。

〇ロビー付近は、映画「マトリックス」一色

IMG
画像:ロビーは、もう映画「マトリックス」一色(筆者撮影)

Cosm LAの中に入ると、普段はスポーツ観戦用のスポーツバーとして使用されているロビー付近のLED
パネルが、映画「マトリックス」の雰囲気一色で埋め尽くされていた(笑)。

しかも、ロビーのバーでは、劇中に登場する「赤い薬と、青い薬」をモチーフにしたカクテルが呈される等の徹底ぶりである。

IMG
画像:赤か青か。どちらを飲むかは、貴方次第です。(筆者撮影)
IMG

ロビーは、10~20代の頃に映画館で「マトリックス」を観たであろう世代で埋まり、ネオやモーフィアス風の黒ジャケットで身を包んだ紳士、全身が「マトリックス」キャラクターで埋まった衣装を着こんでいる女性、例のサングラスを掛けている人など、まるで「マトリックス」のコンベンションに来てしまったかのような雰囲気だった(笑)

つまり、『若き良き時代に映画館で「マトリックス」を観た俺たちが、今度は圧巻の没入型映像も交えて、あの時の感動と興奮を、もう一度、みんなで一緒にシェアしようじゃないか』というイベントだった。

IMG
画像:大勢のマトリックスファンで賑わう、開演前のロビー(筆者撮影)
IMG
画像:ロビーにて(筆者撮影)

〇ドームシアター内部

バーでくつろいだ後は、エスカレーターを上がり、ドームシアターへと移動。

Cosm LAのドームシアター内の席は1~3階席に別れ、全席指定。まるでラスベガスのシアターのような、数人掛けのテーブル席となっている。テーブルにはメニューが置いてあり、ここでもドリンクやフードをオーダーする事が出来る。

シアター内では、直径26.5メートルのLEDドームスクリーンによって、12Kの解像度で没入型エンターテイメント体験を楽しめるという。

IMG
画像:ドームシアター内部の様子。右手には、モニターが並んだ調整室が見える。(筆者撮影)

このドームスクリーンは、旧来のオムニマックス(=IMAXドーム)シアターを彷彿させる形状の、LEDドームスクリーンである。それもそのはず、Cosmの歴史はプラネタリウムから始まる75年もの歴史があり、近年では旧オムニマックスのフィルム上映によるドームシアターを、ドーム型のLEDスクリーンのシアターにリニューアルするなどの実績を誇っているらしい。

ドームスクリーンなので、シアター中央付近席のチケットをゲットすると、映像部分が人間の視野の殆どをカバーする為、ベストな没入感が体験出来る。つまり、2階席の中央部分がおススメである。

ドームシアター内の観客席数は公表されていないものの、筆者が自分で数えてみた概算では319席(1階:30席/2階:118席/3階:171席)が確認出来た。ちなみに、サンノゼに現存するIMAXドームは直径25メートルで客席数280人だそうで、CosmLAはそれよりドームがわずかに大きくフロア数も多い分、概算で319席程というのは妥当な数字と言えるかもしれない。

スポーツイベントの際に観戦が出来るロビーのバーなどを含めると、施設全体では1,700人を収容出来るという。

〇チケットの価格帯は

チケットは現地窓口でも購入出来るようだが、当日SOLD OUTになっている可能性もあり、やはり公式サイトからの事前オンライン購入がお勧め。

気になるチケットの価格帯だが、階によって異なり、1人~6人掛けのテーブルが用意されている。

月曜夜8時半の上映回の例:
3階席
1人掛け/2人掛け/4人掛け/6人掛けテーブル
1人$55

2階席
1人掛け/2人掛け/5人掛け/6人掛けテーブル
1人$60

1階席
2人掛けテーブル
1人$35

※価格は日程によって変動する。上記はあくまでも1例である。
※購入時に税金、決済手数料などが追加される。
※イベント毎に「21歳以上」などの年齢制限があるので、公式サイトにて要確認。

IMG
画像:1階席は、スクリーンにかなり近く、画面を見上げる形となるので、比較的リーズナブルな価格に設定されている。(筆者撮影)
IMG
画像:2階席と3階席の比較。(筆者撮影) ・2階席は料金がやや高めだが、ドームスクリーン中央付近に近く、ベストな没入感が得られる。 ・3階席は上部後方から見下ろす形となるが、全体を見回す事が出来、十分な没入感が味わえる。

〇The Matrix in Shared Reality

…さて、映画が始まった。

上映中のドームシアター内の実際の様子は、下記予告編をご覧頂ければ、ご理解頂けると思う。



ドームスクリーンの中央部分に映画本編が映り、時折、そのストーリー展開に合わせて、長方形スクリーンの外枠部分からドームスクリーン全体まで没入型映像が表示されるという演出である。

この演出がなかなか効果的で、映画のスクリーン枠が、拡大しながら人間の視野全体に広がっていくような不思議な没入感が味わえ、非常に興味深いものがあった。

場内からは、「おおおおおぉぉぉぉぉ」という低い驚きの声と拍手が沸き起こり、かなりの臨場感がある。

IMG
画像:上映中の様子。映画本編のスクリーン枠の外側には、この為に制作された没入型映像がドームスクリーン全体に広がる。 Image Courtesy of Cosm / ©Cosm

この演出は、全ての映画で効力を発揮し得る訳でもなく、”マトリックスならでは”の没入感と言える。筆者は「よく、この演出アイデアを考えたな」と感心する事しかりであった。

ドームスクリーン全面に広がる没入型映像は出ずっぱりではなく、各シークエンスに合わせて、オン/オフが効果的に使い分けられていた。

しかも、ショットによっては、没入型映像がカメラの動きにシンクロして、ローテーションしたりする。また、映画本編のスクリーン枠周囲には、没入型映像にマッチしたデザインの枠が表示される事もあり、そういった細部まで演出が行き届いている点はさすがであった。

これらの観点から、満足度はかなり高かったと言えるだろう。

〇Cosm LAとは

興奮の余り、Cosmそのものに関するご紹介を忘れていたが(笑)、ここでCosmについて、しかと言及しておこう。

Cosmは、2024年6月にLAのハリウッドパークにオープン、次いで8月にダラスにオープンした。今後、デトロイトとアトランタにもオープンを予定しているという。

興味深いのは、普段は「没入型スポーツイベント観戦」に主力を置いている点である。



Cosm広報部門より:
Cosmは、世界のコンテンツ体験を再定義する、体験型メディアと没入型テクノロジーのリーディングカンパニーです。 Cosmのテクノロジーは、場所の障壁を取り除き、プレミアリーグの試合を観戦するためにロンドンまで飛行機で行く必要も、お気に入りのNBAチームを間近で観戦するためにコートサイドチケットを購入する必要もありません。Cosmの没入型施設は、先駆的なテクノロジーによって仮想世界と現実世界を繋ぎ、可能性の領域を広げ、人々を「シェアードリアリティ」と呼ばれる空間へお連れします。Cosmのシェアードリアリティ体験は、スタジアムの雰囲気、熱狂する観客、上質なドリンクやフードの選択肢、最先端の映像を融合させ、まるでプレミアリーグのピッチサイド、ノートルダムスタジアムの50ヤードライン、NBAのコートサイド、UFCのオクタゴンの中にいるかのような臨場感をゲストに提供します。




各スタジアムには専用の魚眼レンズを搭載したカメラが配置され、その映像がドームシアターへと配信される。つまり、スポーツイベントをリアルタイムで、試合が”あたかも目の前で繰り広げられている”かのような「没入型観戦」が、大きなドームスクリーンで体感出来るという画期的なアイデアである。

このドームシアターでのスポーツ観戦は大人気のようで、例えば、7月26日のドジャーズVSレッドソックス戦などは、Cosm公式サイトでSOLDOUTの表示が出ていた。

また、スポーツ観戦のみならず、通常はラスベガスまで足を運ばないと鑑賞する事が出来ない、シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)の有名なショー「オー(O)」を、臨場感溢れるドームスクリーン&没入型映像によって体感出来るのも、大変興味深い。



そして、かつて(現在のようにハリウッド映画を上映するようになる以前の)IMAXシアターで上映されていたような、宇宙や大自然などをテーマにした、教育価値の高い伝統的なドキュメンタリー大型映像作品も、複数上映されている。



このように各種のイベントが時間別に上映されており、それぞれの上映時間は、公式サイトで確認出来る。

〇シアターのテクニカル・スペック

ここまで来ると、読者の方の多くは、Cosmのドームシアターのテクニカル・スペックについて、大変興味をお持ちの事と思う。

ここで、その詳細を、さっくりとご紹介させて頂こう。



Cosm広報部門より:
Cosmは、2025年7月現在、ロサンゼルスとダラスにシアターがあります。各シアターには、直径 87 フィート(直径26.5メートル)、12K LED ドームが設置されています。このドームは、数千個の交換可能な LED モジュールで構成されており、各モジュールは所定の位置にはめ込まれ、個別に設置することで、大きく均一なディスプレイを形成します。私たちはこれを「CX ディスプレイ」と呼んでいます。CX ディスプレイは、Unreal Engine環境によるCX エンジン (最も汎用性が高く強力な没入型エクスペリエンス エンジン) と最高の空間オーディオ機能を搭載しており、最高の解像度、明るさ、コントラスト、寿命を備えた没入型 LED ドームでゲストを包み込み、コンテンツに命を吹き込みます。このCX システムは、LEDドームソリューションであり、比類のない没入感を提供することで、Cosm のエクスペリエンスを推進します。


IMG
画像:とりあえず、寄って見たくなっちゃうのが人情である。LEDスクリーンは、寄ると、こんな感じ(筆者撮影)
IMG
画像:もう少し引くと、こんな感じ。各モジュールが識別出来る(筆者撮影)

↓こちらは筆者の感想である:

ドームシアターの画面は、かなり明るい。これは旧来のフィルム上映では不可能だった明度である。

また、ドームシアター上部の「極」の部分も、映像が歪曲する事なく、均整の取れた映像が映っていたのが印象的であった。(←映像関係者以外は、誰も注視しない箇所ではあるが)

〇ラスベガスのSphereとは、何が違うのだろうか

さて、ここで多くの読者の方が、「ラスベガスのSphereとは、何が違うのだろうか」という点に興味を持たれると思う。

下記は、SphereとCosmの両方を訪問した、筆者による比較である。

運営会社の違い
Sphere:マディソン・スクエア・ガーデン・カンパニー (The Madison Square Garden Company)
Cosm: コズム(Cosm)

場所の違い
Sphere: ラスベガス
Cosm:ロサンゼルス、ダラス、デトロイト(予定)、アトランタ(予定)


外観の違い
Sphere: 直径157メートルの球体に映像が映り、特に夜間は光り輝き、人目を引く
Cosm:普通の建物

IMG
画像:Cosm LAの外観 (筆者撮影)

キャパシティーの違い
Sphere:18,600人
Cosm:1,700人(但し、ロビーのバー、ドームシアターなど施設全体を含む)

ドームシアターのスペックの違い
Sphere:直径157メートル(建物外観)/16K LED カナダSACO Technologies社製
Cosm:直径 26.5メートル / 12K LED  Cosm自社開発

ロビー/アトリウムの違い
Sphere: AIロボット、観客のデジタル・アバター動画の自動生成、バーなど
Cosm: 広いロビー空間はスポーツイベント観戦の際、スポーツバーとして使用される

コンテンツの違い
Sphere:自社制作映画、コンサート開催など
Cosm:スポーツ観戦、自社制作映画、シルク・ドゥ・ソレイユのショー映像、特別企画など


…などなど、上記のような違いがある。

大きさやド派手さだけを見ればSphereに軍配が上がるかもしれないが、今回のマトリックスのイベントやアイデア性、そして上映コンテンツの多彩さなどは、Cosmが勝っていると言えるかもしれない。

Cosmに再び訪問してみたいか?と聞かれたら、筆者は間違いなく「YES」と答えるだろう。今度は、是非シルク・ドゥ・ソレイユの映像を、ここのドームスクリーンで鑑賞したみたい。

〇ハリウッドパークへのアクセス

LA観光の際は、UberやWaymoでの移動が便利だ。Googleマップのリンクはこちら

・LAX空港周辺のホテルから 車で15分前後
・ビバリーヒルズ方面から   車で30分前後
・ダウンタウンLA方面から  車で45分前後
・サンタモニカ方面から    車で45分前後
・ハリウッド方面から     車で50分前後
・アナハイム/ディズニーランド方面から 車で1時間前後
※朝夕の通勤ラッシュ時は上記の2倍くらい掛かる場合もあり、時間に余裕を持って移動されるのがおススメ。

〇おわりに

さて、筆者の独断と偏見と独自目線からLAの新名所Cosmをご紹介させて頂いたが、読者の皆様には、次回のLA訪問で是非訪れて頂きたい場所の1つである。

公開ご紹介したThe Matrix in Shared Realityは映画「マトリックス」の25周年記念イベントの一環であるため、いつまで上映されるかは、現時点では未定だという。

詳細は、CosmLA公式サイトをご確認あれ。

  1. 記事一覧へ