Event Report
2025.08.01 UP
【Hollywood Report】LAの新名所Cosm LAで「Matrix体験」

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター
10数年ほど前、LAX(ロサンゼルス国際空港)の近くに、「ハリウッドパーク競馬場」があった。筆者は馬刺しは大好物だが、ギャンブラーではない。しかし、友人達と一緒に人生初の競馬を1度だけ体験したのが、ここハリウッドパーク競馬場であった。
この競馬場は2013年に閉鎖され、その後大規模な再開発が実施された。その結果、ハリウッドパーク競馬場の跡地は、「ハリウッドパーク・エンターテインメント複合施設」(以降、ハリウッドパーク)として生まれ変わった。
ここハリウッドパークには、2022年のスーパーボウルで知られるSoFiスタジアムがあり、コンサート会場YouTubeシアターも隣接している。その後もハリウッドパーク周辺の再開発は続いており、NBAクリッパーズの本拠地インテュイット・ドーム(Intuit Dome)などの新しい施設が続々とオープンしている。
そんな中、ある日、
「あのエリアに、謎の映像施設が出来て、良くわかんないけど、なんか凄いらしいっす」
という噂話が飛び込んできた。
しかも、その謎の施設で、なんと映画「マトリックス」(1999)の公開25周年記念に併せた、謎のイベントが開催されるらしい、という情報が飛び込んできた。
…このように、全てが謎だらけで、詳細が全くわからないままだった(本当)が、これはもう、とりあえず行ってみるしかないだろう。
かくして、ハリウッドパークの広大に敷地内にある、Cosm LA(コズムLA)を訪問する流れとなったのである。
〇映画「マトリックス」(1999)の公開25周年記念のイベント
このイベントの正式名称はThe Matrix in Shared Reality。
告知広告によれば:
「マトリックス・イン・シェアード・リアリティ」は、Cosm、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ、Little Cinemaの3社が協賛でお届けする没入型映画体験です。観客はLEDドームシアターの中で映画『マトリックス』を体験します。この体験は、従来の映画スクリーンの枠を超え、映画のアクションと連動し、スクリーン自体を超えて広がるダイナミックな映像を通して、ネオとトリニティの世界に観客を没入させます。(英語)
とあった。
そこで、さっそくオンラインでチケットをゲットし、現地に向かってみる事にした。
目指すは、ハリウッドパーク。
名前に「ハリウッド」の文字が含まれている為、LAの地元民以外の皆様は混乱される事と思うが、場所はハリウッド地区ではなく、LAX空港近郊のイングル・ウッド地区と呼ばれるエリアに位置する。この記事を読まれ、実際に現地を訪れてみたい読者の方は、この点は訪問前に要チェック!である。
(東京駅の近くに、東京ディズニーランドがある訳ではない…、のと同じかもしれない)
筆者のアパートから車を飛ばす事、35分。ハリウッドパークの敷地内へ入ると、これまでビヨンセのコンサート等で何度か足を運んだ事があるSoFiスタジアムから数百メートルの場所に、Cosm LAは鎮座していた。
Cosm LAの隣には「パーキング3番」があるので、もし車で来場された場合はここに停めれば良い。シアターの中で、駐車券をスキャンすればバリデーション(入館記録)が貰えるので、4時間までは無料で駐車出来る。
Cosm LAの中に入ると、普段はスポーツ観戦用のスポーツバーとして使用されているロビー付近のLED
パネルが、映画「マトリックス」の雰囲気一色で埋め尽くされていた(笑)。
しかも、ロビーのバーでは、劇中に登場する「赤い薬と、青い薬」をモチーフにしたカクテルが呈される等の徹底ぶりである。
ロビーは、10~20代の頃に映画館で「マトリックス」を観たであろう世代で埋まり、ネオやモーフィアス風の黒ジャケットで身を包んだ紳士、全身が「マトリックス」キャラクターで埋まった衣装を着こんでいる女性、例のサングラスを掛けている人など、まるで「マトリックス」のコンベンションに来てしまったかのような雰囲気だった(笑)
つまり、『若き良き時代に映画館で「マトリックス」を観た俺たちが、今度は圧巻の没入型映像も交えて、あの時の感動と興奮を、もう一度、みんなで一緒にシェアしようじゃないか』というイベントだった。
バーでくつろいだ後は、エスカレーターを上がり、ドームシアターへと移動。
Cosm LAのドームシアター内の席は1~3階席に別れ、全席指定。まるでラスベガスのシアターのような、数人掛けのテーブル席となっている。テーブルにはメニューが置いてあり、ここでもドリンクやフードをオーダーする事が出来る。
シアター内では、直径26.5メートルのLEDドームスクリーンによって、12Kの解像度で没入型エンターテイメント体験を楽しめるという。
このドームスクリーンは、旧来のオムニマックス(=IMAXドーム)シアターを彷彿させる形状の、LEDドームスクリーンである。それもそのはず、Cosmの歴史はプラネタリウムから始まる75年もの歴史があり、近年では旧オムニマックスのフィルム上映によるドームシアターを、ドーム型のLEDスクリーンのシアターにリニューアルするなどの実績を誇っているらしい。
ドームスクリーンなので、シアター中央付近席のチケットをゲットすると、映像部分が人間の視野の殆どをカバーする為、ベストな没入感が体験出来る。つまり、2階席の中央部分がおススメである。
ドームシアター内の観客席数は公表されていないものの、筆者が自分で数えてみた概算では319席(1階:30席/2階:118席/3階:171席)が確認出来た。ちなみに、サンノゼに現存するIMAXドームは直径25メートルで客席数280人だそうで、CosmLAはそれよりドームがわずかに大きくフロア数も多い分、概算で319席程というのは妥当な数字と言えるかもしれない。
スポーツイベントの際に観戦が出来るロビーのバーなどを含めると、施設全体では1,700人を収容出来るという。
チケットは現地窓口でも購入出来るようだが、当日SOLD OUTになっている可能性もあり、やはり公式サイトからの事前オンライン購入がお勧め。
気になるチケットの価格帯だが、階によって異なり、1人~6人掛けのテーブルが用意されている。
月曜夜8時半の上映回の例:
3階席
1人掛け/2人掛け/4人掛け/6人掛けテーブル
1人$55
2階席
1人掛け/2人掛け/5人掛け/6人掛けテーブル
1人$60
1階席
2人掛けテーブル
1人$35
※価格は日程によって変動する。上記はあくまでも1例である。
※購入時に税金、決済手数料などが追加される。
※イベント毎に「21歳以上」などの年齢制限があるので、公式サイトにて要確認。
…さて、映画が始まった。
上映中のドームシアター内の実際の様子は、下記予告編をご覧頂ければ、ご理解頂けると思う。
この演出は、全ての映画で効力を発揮し得る訳でもなく、”マトリックスならでは”の没入感と言える。筆者は「よく、この演出アイデアを考えたな」と感心する事しかりであった。
ドームスクリーン全面に広がる没入型映像は出ずっぱりではなく、各シークエンスに合わせて、オン/オフが効果的に使い分けられていた。
しかも、ショットによっては、没入型映像がカメラの動きにシンクロして、ローテーションしたりする。また、映画本編のスクリーン枠周囲には、没入型映像にマッチしたデザインの枠が表示される事もあり、そういった細部まで演出が行き届いている点はさすがであった。
これらの観点から、満足度はかなり高かったと言えるだろう。
興奮の余り、Cosmそのものに関するご紹介を忘れていたが(笑)、ここでCosmについて、しかと言及しておこう。
Cosmは、2024年6月にLAのハリウッドパークにオープン、次いで8月にダラスにオープンした。今後、デトロイトとアトランタにもオープンを予定しているという。
興味深いのは、普段は「没入型スポーツイベント観戦」に主力を置いている点である。
ここまで来ると、読者の方の多くは、Cosmのドームシアターのテクニカル・スペックについて、大変興味をお持ちの事と思う。
ここで、その詳細を、さっくりとご紹介させて頂こう。
↓こちらは筆者の感想である:
ドームシアターの画面は、かなり明るい。これは旧来のフィルム上映では不可能だった明度である。
また、ドームシアター上部の「極」の部分も、映像が歪曲する事なく、均整の取れた映像が映っていたのが印象的であった。(←映像関係者以外は、誰も注視しない箇所ではあるが)
さて、ここで多くの読者の方が、「ラスベガスのSphereとは、何が違うのだろうか」という点に興味を持たれると思う。
下記は、SphereとCosmの両方を訪問した、筆者による比較である。
運営会社の違い
Sphere:マディソン・スクエア・ガーデン・カンパニー (The Madison Square Garden Company)
Cosm: コズム(Cosm)
場所の違い
Sphere: ラスベガス
Cosm:ロサンゼルス、ダラス、デトロイト(予定)、アトランタ(予定)
外観の違い
Sphere: 直径157メートルの球体に映像が映り、特に夜間は光り輝き、人目を引く
Cosm:普通の建物
キャパシティーの違い
Sphere:18,600人
Cosm:1,700人(但し、ロビーのバー、ドームシアターなど施設全体を含む)
ドームシアターのスペックの違い
Sphere:直径157メートル(建物外観)/16K LED カナダSACO Technologies社製
Cosm:直径 26.5メートル / 12K LED Cosm自社開発
ロビー/アトリウムの違い
Sphere: AIロボット、観客のデジタル・アバター動画の自動生成、バーなど
Cosm: 広いロビー空間はスポーツイベント観戦の際、スポーツバーとして使用される
コンテンツの違い
Sphere:自社制作映画、コンサート開催など
Cosm:スポーツ観戦、自社制作映画、シルク・ドゥ・ソレイユのショー映像、特別企画など
…などなど、上記のような違いがある。
大きさやド派手さだけを見ればSphereに軍配が上がるかもしれないが、今回のマトリックスのイベントやアイデア性、そして上映コンテンツの多彩さなどは、Cosmが勝っていると言えるかもしれない。
Cosmに再び訪問してみたいか?と聞かれたら、筆者は間違いなく「YES」と答えるだろう。今度は、是非シルク・ドゥ・ソレイユの映像を、ここのドームスクリーンで鑑賞したみたい。
LA観光の際は、UberやWaymoでの移動が便利だ。Googleマップのリンクはこちら。
・LAX空港周辺のホテルから 車で15分前後
・ビバリーヒルズ方面から 車で30分前後
・ダウンタウンLA方面から 車で45分前後
・サンタモニカ方面から 車で45分前後
・ハリウッド方面から 車で50分前後
・アナハイム/ディズニーランド方面から 車で1時間前後
※朝夕の通勤ラッシュ時は上記の2倍くらい掛かる場合もあり、時間に余裕を持って移動されるのがおススメ。
さて、筆者の独断と偏見と独自目線からLAの新名所Cosmをご紹介させて頂いたが、読者の皆様には、次回のLA訪問で是非訪れて頂きたい場所の1つである。
公開ご紹介したThe Matrix in Shared Realityは映画「マトリックス」の25周年記念イベントの一環であるため、いつまで上映されるかは、現時点では未定だという。
詳細は、CosmLA公式サイトをご確認あれ。