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Event Report 2026.10.29 UP

MIPCOMカンヌ2026現地レポート: YouTube、AI、ブランドが存在感──変わりゆく国際コンテンツ市場の最前線

コンテンツビジネス・ジャーナリスト 長谷川朋子

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104の国・地域から1万100人が参加したMIPCOM 2026の会場、カンヌのパレ・デ・フェスティバル1©S. d'HALLOY/IMAGE & CO

世界最大級のTVコンテンツ国際流通マーケット「MIPCOM2026」(主催:RXフランス社)を今年もフランス・カンヌ現地で取材した。
10月12日から15日まで4日間にわたって開催され、今や業界の主役であるYouTubeがさらに存在感を高め、AI企業や広告代理店、クリエイターなど新たなプレイヤーが集結。
104の国と地域から1万人超が参加した。世界的なメディア再編や制作投資の縮小が続くなか、新たな収益源やビジネスモデルを模索する動きが鮮明になった。

参加規模は縮小、日本企業は幅広い活動

主催者の発表によると、今年のMIPCOM参加者数は前年より約500人減の1万100人、うちバイヤーは約150人減の3150人で、参加国・地域も前年の107から104に減少した。国別では米国、英国、フランス、ドイツ、トルコなどが上位を占め、日本は9位と東アジアで最多だった。

また本会期に先立ち10月10~11日に開催されたキッズ向けコンテンツ市場「MIPJUNIOR」の参加者は、前年の700人から600人に減少。バイヤーも190人から165人となった。

全体の参加規模は縮小傾向にあるが、会期終盤に行われた記者会見で、MIPCOMディレクターのルーシー・スミス氏は、「世界のエンターテインメント産業は大きな変革に直面している。大手メディア企業の合併・再編が進む一方で、クリエイター、企業ブランド、テック企業、デジタルプラットフォームの4者がコンテンツ経済圏の主要な担い手になりつつある」と語った。

従来のコンテンツ売買、共同制作、企画開発を中核事業としつつ、ブランド、AI、縦型コンテンツ、クリエイターの4領域を新たな成長分野に位置づけるという考えだ。「MIPCOMは従来の中核事業から離れようとしているわけではない。むしろ、その周辺に広がる新たなビジネス機会を生み出す場へと進化している」と、スミス氏は今後の方向性を説明した。

日本企業も、従来の海外ビジネスから新たな成長分野まで、幅広い取り組みを見せた。
一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)と総務省が主催し、テレビ局10社が参加した新作フォーマットの恒例プロモーションイベント「JAPANESE FORMAT SHOWCASE~TREASURE BOX JAPAN~(ジャパニーズ・フォーマット・ショーケース~トレジャー・ボックス・ジャパン~)」に加え、国際共同制作ドラマをテーマにしたセッションでは、フジテレビが英国のITV Studiosなどと、その可能性を語った。

アジア発コンテンツの国際展開や協業をテーマにしたサミット「Asia x Global Executive Summit」には、日本テレビやフジテレビも参加。
また、ビデオリサーチはコンテンツビジネスにおけるデータ活用の価値を議論する新たなセッションを企画し、総務省、TBSらが登壇。さらに、電通のエンターテインメント部門(dentsu entertainment)も新企画「MIP BrandWorks」に参画した。

議論の中心はNetflixからYouTube

今年の会場で特に目立ったのが、前年の初出展からさらに参加規模を拡大し、スポンサーとしても存在感を示したYouTubeだ。ドイツのRTL Deutschlandと共に登壇したセッションでは、YouTubeを通じて新たな視聴者を獲得し、自社配信サービスへの誘導や収益拡大につなげる取り組みを紹介。また、NBCUniversalとのセッションでは、スポーツコンテンツのリーチ拡大やファンとの接点づくり、収益化について議論が交わされた。

またクリエイターの台頭を象徴したのが、YouTubeなどのSNSで累計数十億回の再生数を誇り、約200人規模の制作スタジオを率いるクリエイター、ダール・マン氏だ。MIPCOM初のプレオープニング・ヘッドライナーとして登壇し、Samsung TV Plus向けの新たなドラマシリーズ『Unlikely Families』を発表。デジタル発の個人クリエイターが独自のIPと制作体制を持ち、従来のテレビ市場へと事業を広げる動きを印象づけた。

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MIPCOM初のプレオープニング・ヘッドライナーとして登壇した、YouTube発のクリエイター、ダール・マン氏 ©S. d'HALLOY/IMAGE & CO

一方、この数年の主役だったNetflixは、最高コンテンツ責任者のベラ・バジャリア氏が登壇し(同社は10月15日に同氏の退任を発表)、フランスでは映画・シリーズに年間約2億5000万ユーロ、メキシコでは2025年から4年間で10億ドルを投じる計画を紹介し、地域に根ざした作品を世界に届ける戦略を語った。

最終日に行われたラップアップセッションでは、MIPCOM Daily Newsなどに寄稿する業界ジャーナリストのアンディ・フライ氏が「NetflixがYouTubeやTikTok、クリエイターたちに対して、まるで脇役のような立場になっているのは興味深い」と指摘。

「5年前にはNetflixが業界を変革する側だったが、今では広告型プラットフォームによって変革を迫られている」と、議論の中心が移り変わっていることを振り返った。
ただし、YouTubeの成長がすべての制作会社に利益をもたらすわけではない。

フライ氏は、大手メディア企業や一部の成功したクリエイターがビジネスを拡大する一方、中規模の制作会社やクリエイターにとっては収益化が難しい状況にも言及した。

広告ブランド、AI、縦型に注目集まる

新たな取り組みとして注目されたのは、ブランドとエンターテインメント産業をつなぐ「MIP BrandWorks」だ。
前述の通り、電通が初のヘッドラインパートナーを務め、ブランド、広告代理店、制作会社、スタジオ、クリエイターなどの経営層が参加する「CXO Summit」も開催され、IP開発やコンテンツへの資金提供、事業提携の可能性を探った。

電通のエンターテインメント部門グローバル責任者、キャシー・ボックスオール氏は、「ブランドがなぜコンテンツに関わるべきなのかという議論から、いかに自社の計画に組み込み、ファンダムやブランドへの愛着、成長につなげるかという段階に移った」と説明した。

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BEAJと総務省が主催したTREASURE BOX JAPAN。日本のテレビ局10社が新作フォーマットを披露した(筆者撮影)

引き続き関心が集まるAI分野では、大規模出展したAIネイティブの映画・ドラマスタジオ、Utopai Studiosのセシリア・シェンCEOによる基調講演に多くの参加者が詰めかけた。また特別企画「MIP AI Entertainment Forum」も開催され、制作工程へのAI導入から権利処理、AI学習用データの活用まで幅広く議論された。

市場トレンドの縦型ショートドラマでは、Fox Entertainmentと俳優ケヴィン・ハートによる制作会社Hartbeatが新たな提携を発表した。
進行中の縦型シリーズ25本のうち、反響を得た作品はFox側で映画・TVシリーズ化を検討する。会場では縦型コンテンツの制作、配信、収益化をめぐる議論も相次いだ。

RXフランスは、2027年3月16~17日にロンドン・ブックフェアと併設で新たなカンファレンス「MIP Talks」を開催することも改めて発表した。
「IPからファンダムへ、ファンダムからグローバルビジネスへ」をテーマに、出版、クリエイター、ブランドなど、IP開発の初期段階に関わる企業との接点を広げる。ロンドンで過去2回開催されたマーケット「MIPロンドン」に代わる形だ。

スミス氏は、「私たちの目標は、10年前、15年前のMIPCOMを再現することではない。
現在の世界のエンターテインメント産業の姿と、これから向かおうとしている方向を反映する場であり続けることだ」と強調した。次回のMIPCOM カンヌは2027年10月18~21日に開催される。

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