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2026.08.21 UP
【Hollywood Report】デジタルドメイン 6月にモントリオール・スタジオをひっそりと閉鎖していた
鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター
VFX大手のデジタルドメイン(本社ロサンゼルス)が、グローバル拠点の1つ、モントリオール・スタジオを2026年6月に”ひっそりと”閉鎖していたことが明らかになった。
実に2ケ月前のニュースではあるが、この閉鎖は米メディアがこぞって報道した訳でもなく、ハリウッドのVFX制作現場でもほとんど話題に上らなかったという事情もあり、筆者もつい先日、この事実を知ったばかりである。
しかしながら、VFX業界での出来事としては歴史に残る閉鎖でもあるので、ここで改めてご紹介させて頂く事にしよう。
デジタルドメインは、同社ホームページによれば世界9箇所(ロサンゼルス、バンクーバー、モントリオール、ルクセンブルク、ハイデラバード、北京、上海、深圳、香港)に拠点を持つ。
※8月時点では、ホームページは更新されておらず、モントリオールは拠点の1つとして、まだ掲載されている。
デジタルドメインは2012年の会社更生法適用から企業買収を経て無事に存続され、現在は中華系企業であり、その関係で中国にも複数の拠点があるが、このグローバル拠点の1つだったモントリオール(カナダ/ケベック州)が6月に閉鎖されていた。
デジタルドメインのモントリオール・スタジオは、2020年2月12日に正式オープン。
この背景には、カナダのケベック州による、ハリウッド映画産業に対する大規模な税制優遇措置(タックスクレジット)があった。
クライアントであるハリウッドのメジャー映画スタジオは、VFX大手各社に、「ケベック州のタックスクレジットを利用したい。モントリオールにスタジオを開いて欲しい」と強く要請。これを受けて、アメリカやイギリスに本社を持つ大手VFXスタジオが、次々とモントリオールに拠点をオープンしたという経緯があった。
もちろん、デジタルドメインも、その1つだ。
例えば、映画館へ行き、VFXヘビーなハリウッド映画のエンドクレジットを最後の最後まで観ていると、他のお客さんが殆ど帰ってしまったあたりで、画面に「ケベック州」のロゴが大きく表示されることがある。
これが、まさに、このタックスクレジットである。
カナダによるタックスクレジットは、バンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州が先駆けで、バンクーバーに多くのVFXスタジオが終結しているのも、全く同じ理由である。
一時期、バンクーバー vs モントリオールのタックスクレジット合戦が繰り広げられていたこともあり、モントリオールが勢いを増していたピーク時には「今や、モントリオールは実質的にVFXハブである」(英語)という表現がそこかしこで見られていた。実際、カナダ政府のサイトにも、同様の記事が掲載されていた。
筆者もこの頃、著名DCCツールのユーザー会や新バージョンの発表イベントが、LAやバンクーバーをすっっ飛ばして、モントリオールで大々的に開催されていたのを覚えている。「そのうちSIGGRAPHも、モントリオール開催になってしまうのでは…」、と要らぬ心配をしていた程であった。
しかしながら、過去数年、ケベック州はタックスクレジットを縮小。これに伴い、映画スタジオがモントリオールに大規模なVFXプロジェクトを発注する利点が薄れ、モントリオールではVFX業界の縮小が始まった。
デジタルドメインが6月をもってモントリオール・スタジオを閉鎖したのは、こうした理由である。
昨今の人材募集投稿を見る限り、デジタルドメインはバンクーバー・スタジオでの人材募集や規模拡大に注力しているのが伺える。LA本社では、6月にモーションキャプチャー・ステージが施設のリース期間終了と共にその役割を終え、現在は精鋭部隊によるリーダーシップ・チームやクライアント・サービスなどを主軸に、文字通りグローバル・ヘッドクォーターとして堅実に運営されている様子である。
6月のデジタルドメイン モントリオール・スタジオの閉鎖に関連して、ネット検索を掛けても、実際のところ米メディアによる報道は殆ど出てこない。
その代わり、ソーシャルニュースサイトReddit(レディット)などでは、モントリオール・スタジオ閉鎖に関連し、モントリオールやVFX業界の今後を危惧するVFX業界関係者の投稿で溢れている。
ハリウッド映画のVFX業界は、こうした世界中のタックスクレジットが盛んな地域を追い掛けるのが当たり前になっており、現在はオーストラリアが”ホットな場所”として注目されている。過去数年、大手VFXスタジオがシドニーやメルボルンに進出する動きが目立っており、最近ではオーストラリアでの人材募集が多く見られる。
LA在住の筆者としては、こうした「タックスクレジットありき」のビジネスモデルではなく、映画の都であるロサンゼルスに仕事を戻して欲しいと節に願っているところなのだが……今後の動向から、ますます目が離せない、今日この頃である。