Special 2026.08.25 UP 【Hollywood Report】ティペット・スタジオ、破産手続きから無事に脱却、経営再建に成功 鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター 画像:第7回VESアワード(2009)にて、ジョルジュ・メリエス賞を受賞したフィル・ティペット(筆者撮影) 〇はじめに 2024年6月6日の本欄で、「ティペット・スタジオが米連邦破産法11条の適用を申請、経営再建へ」という記事を寄稿させて頂いた。 その後、筆者は経過を心配し、先日改めて調査をしてみたところ、同スタジオは無事に破産状態から脱却、通常の事業運営ができるまで復活していた事がわかった。 これは、ファンにとっては嬉しいニュースであろう。 通常、米メディアは企業などが破産状態に入ると喜んでさかんに報道するが、うまく再建に成功した場合や、その後の動向などの明るい話題については、あまりフォローアップしてくれない傾向にある(笑) そこで、せっかくなので、今回はその話題を皆様にお伝えする事にしよう。 〇経緯:2024年、チャプター11で破産法の適用を申請 2024年5月1日、ティペット・スタジオ(本社カリフォルニア州バークレー)は米連邦破産法11条の適用を申請していた。これは会社更生形の倒産手続きで、経営の立て直しを図るのが目的だが、叶わずに企業が消滅してしまうケースも少なくない。 この2ヶ月前の3月14日、ティペット・スタジオはインドのVFXスタジオPhantomFXに買収されたという報道があった。これによると、「今回の買収によってPhantomFXはティペット・スタジオの株式の80%を取得し、世界中のクライアントに最高レベルのポスト・プロダクション・サービスを提供していく」とあり、ティペット・スタジオの経営責任者であるゲイリー・マンデル氏の続投も報じられていた。 その直後に報じられた会社更生法の適用のニュースは、ハリウッドのVFX業界を驚かせた。 当時、カリフォルニア北部破産裁判所の公式サイトでは、破産法11条に基づくティペット・スタジオの申請手続きの経緯が随時更新されており、経営再建が進んでいる様子が伺えていた。 〇経緯:2025年4月、破産状態から正式に脱却 ティペット・スタジオは、経営再建手続き以降も、『センチネル』、『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』、バンコクのアトラクション『ジュラシック・ワールド・ザ・エクスペリエンス』、マーベルの『アイアンハート』、ドラマ『ミニチュア・ワイフ』などのプロジェクトを順調にこなしていた。 その後、再建プロセスは順調に進み、2025年4月1日、米国破産裁判所はティペット・スタジオの再建計画を正式に承認、同社は破産状態から脱却し、通常の事業運営を継続できるようになった。 最近では、映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』の中で、ハット・ツインズ(The Twins)の宮殿の巨大ドロイドの、ストップモーション・アニメーションなどを手掛けている。 〇おわりに ティペット・スタジオは、同社ホームページによると、現在もインドのVFXスタジオPhantom Megia Group傘下の企業という位置づけで運営されているようだ。 近年、アメリカ西海岸ではVFXスタジオの閉鎖や縮小など暗いニュースが続いている事もあり、ティペット・スタジオが無事に経営再建に成功したという出来事は、心強いものがある。 先日、筆者はロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH2026を取材していた。その中のプロダクション・セッションでも、ティペット・スタジオの名前を何度が耳にする機会があり、その度に筆者は嬉しく感じたものである。 ティペット・スタジオの今後の活躍が、楽しみである。 ティペット・スタジオ フィル・ティペットによって設立されたVFXスタジオ。カリフォルニア州バークレーに本社及びスタジオがあり、現在はインドのPhantom Mecia Group傘下の企業。創設者のフィル・ティペットは、ハリウッドのSFX/VFX、ストップモーション・アニメーションの分野で「レジェンド」と崇められる存在であり、特に『スター・ウォーズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』での仕事ぶりが有名。1983年にILMから独立し、北カリフォルニアのバークレーにティペット・スタジオを設立。以降はストップモーションやクリーチャーに強いVFXスタジオとして、ハリウッド映画の視覚効果に大きく貢献してきた。カナダのトロントにもスタジオを持つ。近年ではILMとのコラボレーションも多く、複数の『スター・ウォーズ』関連作品に優れたストップモーション・アニメーションを提供し続けている。 記事一覧へ 前の記事へ