Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2023.12.19 UP

Unity、Weta Toolsからの撤退を発表

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター

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SIGGRPAH2023会場内に施された、UnityによるWeta Toolsの広告。(筆者撮影)

筆者は、2021.11.16付のInter BEEニュースセンター で、「UnityがWeta Digital買収の最終合意を発表」という記事を随筆させて頂いた。

あれから2年が経過したが、この程ハリウッドの各メディアが報じたところによれば、UnityはWeta Toolsからの撤退を発表した。

これにより、Unity傘下にあったWeta Digital開発チームに所属するエンジニア265名(Unityの全世界の従業員の3.8%に相当)は12月10日を持ってUnityを解雇され、これまで提供されていたUnityからWētā FX※への技術サポートも、同日を持って終了する形となる。

※Wētā FX
ニュージーランドに本社を持つ大手VFXスタジオで、映画監督のピーター・ジャクソンによって設立された。技術開発力に定評があり、これまでに数々のハリウッド映画のVFXを手掛けている。

ただ、Wētā FXはUnityから解雇されるWeta Digital開発チームの人員を、可能な限り「呼び戻す」形で再雇用する方向で調整しているという。

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SIGGRPAH2023にて、会場入り口付近に施されたラッピング広告。(筆者撮影)

これらの報道によると、Wētā FXは11月25日に声明を発表した。その声明を要約すると、次のようになる。

・11月25日、Unity と Wētā FX は、12月10日付けで Unity と Wētā FX のサービス 契約を終了することに相互に合意した。この件については、最初に10月26日にUnityからWētā FX へ対してアプローチがあり、その後UnityとWētā FXは 11 月25日に合意に達した。

・Unity は取得したテクノロジーを引き続き所有し、その製品を長期的に強化するための最良の方法を検討していく。また、Wētā Toolsは引き続き、Wētā FXで利用可能となる。

・Wētā FXは、可能な限り多くのWētā Digital開発チームのエンジニアに、再雇用の機会を提供していく。

・UnityとWētā FXは両社とも、今回影響を受けた人材にサポートを提供していく。

・これにより、Unityは専門知識と人材を中核事業に集中させる。Wētā FX は Wētā Toolsについては今後、社内のスタッフから直接サポートを受けることになる。これは両社にとって合理的な近道となる。

・Wētā Digital の名前と商標は Wētā FX に戻るが、現段階ではWētā FX の社名を変更する予定はない。

という、両社が歩み寄った内容となっており、混乱を最小限に防ぐ姿勢が伺える。

さて筆者はこの夏、LAで開催されたSIGGRPAH2023を取材していた。その際、Unityによって展開されたWētā Toolsのプロモーション及びプレゼンテーションは、かなり力の入ったものであった事が印象深く残っている。

会場内では、あちこちにWētā Toolsの広告が見られた。また、会期中は、キーノート・プレゼンテーション(Keynote Presentations)におけるプレゼンテーションの他、コンベンションセンター内の部屋を借り切ってのデモなどが開催されていた。

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SIGGRAPH2023にて、部屋を借り切ってのWētā Toolsデモ会場の案内パネル(筆者撮影)

これらのプレゼンテーションやデモを見た範囲では、Wētā Digitalの技術の蓄積がUnityのゲームエンジン上で存分にリアルタイムで稼働しているという段階では未だなく、プレゼンテーションの中で上映された映像はいずれも既出の映画作品などからの引用であった。故に、UnityにおけるWētā Toolsは、「まだ、始まったばかり」という印象であった。

また、SIGGRAPH2023会期中に別途開催されたWētā FXによる映画のVFXプレゼンテーションでは、数ギガにも及ぶデータを、自社開発のソフトウェアで長時間掛けて処理する事によって、映画の中であれだけのクオリティの高いVFXを実現したという発表が行われていた。「これが、リアルタイムで処理出来るようになるまでには、まだ年月が掛かるだろうな」、というのが筆者の感想であった。

今回、Unityでの展開が途中で終了してしまったのは大変残念ではあるが、Wētā Tools自体は引き続きWētā FXに戻る形で開発が継続されていくという事なので、今後の動向からますます目が離せない今日この頃である。

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