Inter BEE 2025 幕張メッセ:11月19日(水)~21日(金)

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Special 2025.10.30 UP

【INTER BEE MEDIA Biz】企画セッション「10年後、メディア再編はどう進んでいるか」事前レポート

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左側、脇浜氏(上)、下山氏(下)、右側、境(上)、栗原氏(下)

メディア再編は、多くのメディア関係者にとって近い将来には避けられない課題となるはずだ。少子高齢化や新興メディアの台頭により、放送・新聞業界の経営環境は厳しさを増している。だがこれまではなかなかこのテーマを正面切って議論しにくかった。INTER BEE MEDIA Biz「10年後メディア再編はどう進んでいるか」セッションでは、この難しい題材を扱う。ノンフィクション作家の下山進氏、京都産業大学教授の脇浜紀子氏、PwCコンサルティング合同会社の栗原岳史氏をパネリストに招き、メディア業界の外側からの目線で客観的に意見を出し合ってもらう。モデレーターはメディアコンサルタントである筆者、境治が務める。先日、パネリストのみなさんにリモートで集まっていただき事前打合せを行ったので、その様子をレポートする。多様な視点による意見が打ち合わせの時点で次々に出て、当日の議論の盛り上がりが予感できた。
(メディアコンサルタント 境治)

10年後、メディアを取り巻く環境をできる限り予測する

筆者がこのセッションを企画したのは、これから先、メディアの変化が加速することを直視し、これまでと同じ形ではいられなくなることを共有するためだ。たとえば、団塊の世代は今後の10年で最大の塊ではなくなり、その子である団塊ジュニア世代は60歳を超え社会の第一線から退場する。既存メディアを支えてきた大きな集団が力を失い、視聴率や購読数の今まで以上の急減は避けられない。当日は、モデレーターとしてこうした議論の背景を最初に明らかにしたい。パネリストの皆さんには忖度せず率直な見解を述べてもらうつもりだが、楽しい議論にもなるだろう。

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PwCコンサルティングの栗原氏は、前職ではNHKの敏腕政治記者だった。栗原氏には10年後のメディア環境についてのレポートをお願いしている。いわば10年後のメディアを先取りする「調査報道」だ。打合せの場でも、すぐに見せられるデータとして2029年までのテレビや新聞の状況予測を示してくれた。当日は、その先まで何らかの形で提示してくれる。既存サービスの衰退が明らかになるだろう。栗原氏は一方で、SVODサービスも急成長後に現在飽和状態に入りつつあると分析。「平均加入月数が15ヶ月程度で、見たいものを見尽くしてしまう」という課題も指摘した。単純に既存メディアが下がり、新興メディアやサービスが取って代わるとも言えないかもしれない。またメディア再編の方向性の一つとして「他分野とのシナジー」について語った。この「シナジー」はこの議論のキーワードになりそうだ。

メディア再編は外から?エンタメとニュースの関係は?

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今年、新著「持続可能なメディア」(朝日新聞出版)を上梓した下山氏は、2023年には「2050年のメディア」(文春文庫)を出版している。また同名のコラムをAERA誌上で連載中だ。文藝春秋社で長らく編集者として活躍し、「技術革新によるメディアの変化」を一貫したテーマとしている。フジテレビ問題ではダルトン・インヴェストメンツに取材するなどテレビについての言及も多い。打合せでは、テレビ再編について「放送法の規制緩和が必要」と指摘した。栗原氏の言う「シナジー」を具現化するには、確かに合併や買収が起きにくい規制は足かせになるかもしれない。また、「テレビ局の経営陣はほとんどが新入社員から上がってきた人たち」であり、内部からの改革には限界があるとの見解を示した。下山氏にはこうした再編についての考えとともに「持続可能なメディア」とはどんなものかも当日語ってもらう予定だ。

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脇浜氏は、2016年まで在籍していた読売テレビのアナウンサーとして知る人も多いだろう。在籍中から研究活動にも勤しんできた一方で、早くからネットを通じた映像配信にも果敢に取り組み、IoTを活用したテレビのイノベーションにも取り組んでいた。また、関西のテレビ局が広域放送局であるため、個々の府県の情報が薄まることにも問題意識を持ち、地域発の情報発信の必要性を提唱している。打合せで脇浜氏は、「再編を考える際に、エンタメとニュースを分けた議論も必要だ」と見解を述べた。これも、もう一つの「再編」の軸だと筆者はとらえる。日本ではテレビコンテンツの配信事業が伸びているがドラマなどのエンタメが中心で、ニュースや情報番組の配信はYouTubeなどに頼っている。メディア業界の課題として浮上するのは時間の問題だろう。脇浜氏からは、今年の海外イベントで仕入れた事例も開陳してもらえる。日本のメディア再編議論にも参考になるだろう。
このように多岐にわたる「10年後のメディア再編」の議論は、エキサイティングなものになりそうだ。興味ある方は、InterBEEの来場登録を済ませた上で、下記リンクから聴講予約をどうぞ。一緒に議論するつもりでご参加いただきたい。

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