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Special 2021.11.24 UP

NetflixがScanlineVFXの買収計画を発表

鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター

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ScanlineVFXが、メインVFXベンダーとして参加した映画『ゴジラvsコング』の広告  LA市内の映画館にて筆者撮影

11月22日、米Netflixのスタジオ・オペレーション部門バイスプレジデント、エイミー・ラインハルト(Amy Reinhard)氏は、同社ブログ上でVFX大手ScanlineVFXを買収する計画である事を明らかにした。この買収手続きは2022年の第1四半期に完了する予定で、買収額などは明らかにされていない。

 ScanlineVFXはドイツに本社を置き、ドイツのミュンヘンとシュトゥットガルト、ロサンゼルス、バンクーバー、モントリオール、ロンドン、韓国のソウルなど世界中に制作拠点を持つ大手。最近VFXで参加しているハリウッド映画は『ミッドウェイ』、『ゴジラvsコング』、『ブラック・ウィドウ』、『エターナルズ』など錚々たる作品が名を連ねる。

 社長のステファン・トロジャンスキー(Stephan Trojansky)氏が自ら開発した流体シュミレーション・ツールFlowlineを武器に、ハリウッドでは特に2000年代中盤頃から「流体の表現と言えばScanlineVFX」と言われる程の信頼と実績を築き上げた。2007年にはFlowlineの開発が評価され、アカデミー賞の科学技術賞を受賞した事でも知られている。

 

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ScanlineVFXが、VFXベンダーとして参加した映画『ブラック・ウィドウ』 の広告  LA市内の映画館にて筆者撮影 (C)Disney

 また、デジタル・ドメインやリムズ&ヒューズ等から著名なVFXスーパーバイザーを迎え入れ、スタジオ・リーダーシップも強化、近年では流体シミュレーションだけでなく、ハイレベルなクリーチャーからエンバイロメントまでの広範囲を網羅する高度なVFXを手掛けている。

 開発にも力を注ぎ、現場ツールのみならず、プロダクション運営ツールを自社開発するなど、その開発力にも定評がある。昨年のコロナによるロックダウンの際も、世界中の全拠点がいち早くリモートワーク体制にシフトした事例が業界内でも注目を浴びたのは記憶に新しい。今回の買収は、こうした強大な開発力が評価された結果と言えるだろう。

 Netflixによる今回の買収の主な目的は、ScanlineVFXが持つパイプライン、インフラストラクチャ、そしてアーティストやエンジニア等を含むクルーに投資し、Scanlineの自社開発プロダクション運営ツールEyeline Studiosやバーチャル・プロダクションと言った先駆的な技術をサポートしながら、VFX表現の幅を極限まで押し広げていく事にあるという。

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ScanlineVFXが、VFXベンダーとして参加した映画『エターナルズ』の広告  LA市内の映画館にて筆者撮影 (C)Disney

 さて、今回の買収により”ScanlineVFXがNetflixの作品だけを手掛けていく”という訳では決してないという。ScanlineVFXはNetflixとの連携に加え、今後も「独立したVFX部門」として運営され、これまで通りさまざまなクライアントからVFXを受注していく予定だそう。Netflixも同様に、自社作品で必要とされるVFXショットを世界中のスタジオに発注し続けていくという。

 これにより、Netflixから作品を発信しストーリーを創り出す「クリエイター」達が、世界最先端のVFXテクノロジーにアクセスする事を可能にし、最も魅力的かつ最先端のストーリーテリングを提供する事を実現していくのが狙いだという。

今後のNetflixとScanlineVFXの動向からますます目が離せない、今日この頃である。

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