Inter BEE 2022

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Special 2021.10.12 UP

リアルでの「出会い」こそがInter BEEの醍醐味

半澤 公一 イノベーション

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 「Inter BEE 2021」。今年はリアルでの開催が決定した。プロオーディオシーンのなかで生業を立ててきた私のような者にとっては、やはりこの上なく喜ばしい。自身の身体には11月半ばになると、まるで体内にタイマーがあるように音響機材のトレンドやこれからの可能性を更新する機会が訪れる。意識を変えてくれるタイミング、それが「Inter BEE」に他ならない。この展示会に訪れる参加者の年齢層は幅広い。音響を勉強したい、あるいはこれからその方面へと進みたい10代後半から業界では重鎮と呼ばれる諸先輩の方々まで。それぞれに求める切り口や目的は異なるのだろうが、それらの空間を参加者の皆が共有する場所。これがやはり醍醐味だろう。

 最新機材群はむろんのこと、誌面でしか見たことのない著名エンジニアが、まさに隣でヘッドフォンを聞いていたり、あるは通路で大御所と呼ばれるプロデューサーとすれ違ったりと、普段の生活では考えにくいことが簡単に起きてしまう。自分にとってのアイドルと同じ空間で同じ空気を吸った事実だけでもそれは魅力倍増だ。やはり「Inter BEE」のキーワードは「出会い」だろう。

リアル開催が決まった「Inter BEE 2021」

 冒頭にもお知らせしたとおり、今年の開催は例年と同じく「幕張メッセ」での開催が決まった。同時にオンラインでも構成される予定で初日、11月17日から1か月間、アーカイブも含めて提供される。緊急事態宣言が解除されととは言え、県をまたぐ移動がまだまだスムーズに行えない時期にあって、特に関東地方から遠く離れプロオーディオに従事する音響マンにとっては朗報である。これも昨年の開催を経験したからこそ打ち出せる方針であり、手法も充分にふまえながら、さらに精度が高いオンライン開催にも期待が持てる。

 しかし、リアル開催が実現するとは言っても、コロナ禍前と寸分違わない同じ内容とまでは実現が難しいと予想もされる。やはり密を避けてという条件が必須となれば、難しくなるイベントが出てくることは容易に想像できる。事務局の方に伺った話では、例えば大人数を収客しての講演やパネルディスカッションといった催事をリアルで行うことや、特に人気催事のひとつである「INTER BEE EXPERIENCE」も本年は苦渋のジャッジを強いられることになった。

3つの人気イベント。しかし・・・

 この「INTER BEE EXPERIENCE」は例年「X-Speaker」、「X-Headphone」、「X-Microphone」の3本立てで構成されるが、どれも大人数を集客するイベントであり、感染対策の条件を避けるのは厳しい部分も多く含んでいる。本年は例年の構成に代って、ごく小規模ながら限定企画を準備しているということなので、期待したいところだ。

 一方、講演などについてはオンラインという手段は有効には働くだろう。ただし話題は何もネガティブなものだけではない、心強いトピックを紹介しておこう。

 9月18日にリリースされた専門誌「PROSOUND」で執筆を担当した際、インタビューを行った2社の例だ。世界中がコロナ禍にあるなか、むろんこれらメーカーも売り上げの低下や活動に制限を受けることを余儀なくされている。このうち1社は英国で半世紀の歴史を持つ「Martin Audio」社だが、感染対策をしっかり取りながら、同社にラインアップする製品群にプロダクトとして隙間があった中規模用のスピーカーシステムが新規開発されている。約2時間にわたり、ゼネラルマネージャーと話をしたが、同社が受けたさまざまなマイナス成長を悲観的に捉えるだけではなく、沈着冷静に状況を分析。この先に感染収束を見た時、すぐに動き出せる準備を着々と進めていたことが印象に残っている。発言のひとつひとつ、どれもが地に足がついて頼もしい。

 またもう1社はこれもスピーカーメーカーで、フランスの「Frenetlk」。こちらは2019年に初めての製品を世に送り出したという新進のブランドだ。設備用途に特化しており、後発メーカーだけに様々なアイデアを搭載。特にオーディオネットワーク「Dante」の機能を活かし、セットアップや接続の容易さを前面に謳っている出色の新顔である。

 人もそうだが物資も移動の機会が限られる現在の状況にあって、これら前述したの製品が展示されるかどうかは約束できないが、両者ともにインタビューでは日本のマーケットを高い興味を覚えていた事は見逃せない事実だ。

キーワードはやはり「出会い」

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 こうした例のように音響機器についての更新が見て取れ、また実際に触れられることは、まさにリアル開催の強みであり、音響マンにとって申し分ない機会だ。加えて「人との出会い」はさらにエキサイティングな出来事だろう。

 先にも述べたように、驚くような出会いが期待できることもあるかもしれない。仮にそうしたハプニングに触れる事はが無かったとしても、あるブースを訪問すれば担当者が迎え出てくれる。見知った顔かも知れないし、初めての出会いかも知れない。しかし興味ある製品について、カタログやポップには記されることのない開発時のハプニングや隠れた話題を提供してくれることも少なくない。そうなれば製品にも一層興味が湧くといった、良い循環ができる。それをきっかけに、メーカー担当と親しくなれれば、展示会の後も新しい情報元になる事だろう。「Inter BEE 2021」はぜひ会場に足を運び、そしてアーカイブで復習するといった方法がオススメだ。

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