Inter BEE 2020

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Special 2019.12.16 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019セッションレポート】「放送コンテンツの海外展開、次の一手は配信か?」~世界動向をマクロな視点で切り取る~

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世界的に動画配信サービス全盛の時代を迎え、放送コンテンツの国際流通情勢にも変化がみられる。そんななか、今年のINTER BEE CONNECTEDでは配信を軸に海外展開を考察するセッション「放送コンテンツの海外展開、次の一手は配信か?」を企画。欧米、アジアの市場トレンドに詳しいパネリストを迎えて、現状と想定される効果について解説した。        
(テレビ業界ジャーナリスト/長谷川朋子)

Netflixだけじゃない、中国、東南アジアで強さを誇る動画配信プレイヤー

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パネリストは放送コンテンツの海外展開について長年にわたり研究を続ける佛教大学社会学部教授大場吾郎氏と、映像コンテンツの国際情勢に詳しいTBSホールディングスメディア企画室の薄井裕介氏の2人。進行役は在京5社配信ビジネス検討会/TVer運営会議メンバーであるテレビ朝日岩田淳氏が務め、まずは海外の配信サービスの現状と、日本のコンテンツの取引状況について報告が行われた。

大場氏は今秋、中国・北京に訪問したばかりという。中国の配信事情を語る上で欠かせない中国3大動画配信プラットフォームであるiQIYIとYouku、テンセントビデオの基本情報をまとめた図を示しながら「それぞれMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)が5億、6億の規模。iQIYIは有料会員数が1億人を突破したと聞いている。出資関係にも注目すると、iQIYIは中国最大の検索エンジンを運営するバイドゥ傘下にあり、Youkuはアリババグループ、テンセントビデオは中国最大のコミュニケーションツールWeChatを展開するテンセントがリリースした動画サービスになる」と説明した。

一方、日本の放送局は中国市場をどのように見ているのか。大場氏によると、「ここ数年は配信業者が買って、買って、買いまくる状況で、最重要マーケットとして認識されるようになった。ここにきて、ネットコンテンツも規制が徐々に強化され、新たな売り方を模索し始めていると聞く。チャイナリスクを常に考えていかないといけないマーケットである」という。そもそも日本のコンテンツは中国で人気があるのだろうか。その辺りも掘り下げて、「中国において日本のコンテンツはコアなファンで支えられているニッチマーケットだが、口コミサイト(Douban)で高く評価された作品は関心を広く集められる。また日本のドラマの脚本は面白いという評価もある。だが、限られた枠の中で他国のコンテンツと競争する必要がある。中国で人気を集めるイギリスやタイ、ベトナムのドラマなどと比較すると、日本のコンテンツの存在感の低さは否めない」と厳しい意見を交えながらまとめた。またこれら中国の状況報告を受けて、TBS薄井氏は「中国は政治、社会的背景が含むため、なかなか難しい面がある。問題のある違法動画も手の込んだものが多い。SNS上でリンクのみが送られ、その中に日本の番組がリストアップされているケースがあると聞いている」と補足した。

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中国に続き、東南アジアの動画配信事情についても大場氏から報告された。2018年の東南アジア動画配信市場のシェア率をみながら、「Netflixと人気を二分しているのがマレーシアのIflixである。NetflixとIflixの2つのサービスが東南アジアの動画市場の半分を占めている。残り半分には香港のViuやシンガポールのHooqといったIflixのようなアジア発サービスもある。Netflixばかり考えがちだが、ローカル系サービスも力をつけている」と説明した。また世界全体の動画配信市場の今後のシェア率予測もみせ、「3分の1がNetflixとAmazonの北米系、同じく3分の1は中国系で占める予測がたてられている。つまり、動画配信市場は米中の2大パワーで覆われていくと考えられている」と語った。

配信はブルーオーシャン、バランスの良い戦略が今後のカギに

このように海外動向をマクロな視点でみていくと、海外展開を取り巻く環境の変化も理解しやすい。TBS薄井氏は「外的変化」と「内的変化」の2つに分けて整理し、「外的変化を象徴するのは世界的な動画配信プラットフォームの台頭にある。ディズニーの『Disney plus』をはじめ、NBCユニーバサルの『peacock』など新たなサービスも始まる。内的変化は国内のテレビ広告費の頭打ちの状況や『テラスハウス』『全裸監督』といった大手プラットフォームプレイヤーによるコンテンツ制作の直接発注が主に挙げられる」と説明した。

ではこうした変化が起こっているなかで、海外展開の次の一手は「配信」一択なのだろうか。薄井氏は「実績を重ねてきた従来の海外番組販売ビジネスは言わば『レッドオーシャン』。販売チェーンが確立されている。一方、配信はまだまだ『ブルーオーシャン』とも言える。リスクを伴うが、ビジネスチャンスはある。投資先行型の配信プレイヤーと付き合う上では短期的に目標を達成していくやり方では難しい。バランスよく戦略を立てることが今後のテーマになるだろう」と解説した。

また今後の課題について「放送コンテンツは時間編成に紐づいて予算化され、番組が制作される。配信はあくまでも2次利用として考えられているが、1次利用となった時、権利者への配分のルールなど問題もいろいろ発生してくる」と指摘した。

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最後に「次の一手」に向けた提案として、司会の岩田氏が次のようにまとめた。1つ目は「世界に出て体感しよう」、2つ目は「ビジネスの具体的選択肢を出そう」、3つ目は「国内も国外もいろいろな方法でプロモーション」、4つ目は「日本らしくはトライアルから」、5つ目は「攻めは国ブランド」とし、5つの項目にまとめた。

パネリストの二人からも意見が述べられた。大場氏は「日本はスケール感においてはどうしようもないかもしれないが、スピード感は努力次第でどうにでもなり得る。以前から言われてきたことだが、そろそろ真剣に考えていけないと思う」と指摘。薄井氏は「トライアンドエラーが大事だが、日本人はなかなか赤信号だと渡らない。大概はルールが決まらないと進まない。だが、やってみないとルールも作りようがないのではないか。落としどころを持って行きながら、アジャイルな考え方に変えていくことが大事である」と提案し、締めくくった。

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