Inter BEE 2020 Online 11.18(Wed.)-20(Fri.)

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Special 2019.12.16 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019セッションレポート】「キー局攻めのメディア戦略」~キーマンが解説する新組織体制の狙い~

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昨今テレビ広告収入が低調の一途を辿る一方で、インターネット広告の伸長が目立つ。時代に合わせたビジネスモデルの構築が求められるなか、民放キ―局が次々と組織改正を仕掛けている。今年のINTER BEE CONNECTEDではこの動きに注目し、「キー局攻めのメディア戦略」をテーマにしたセッションを企画。各社を代表してフジテレビと日本テレビ、そして電通の3社からキーマンが登壇し、それぞれの取り組みの内容から狙いを紐解いていった。
(テレビ業界ジャーナリスト/長谷川朋子)

新しい領域にチャレンジするための組織体制

昨年2018年にテレビ朝日がインターネットに関わる重要な課題に統合的に対応する経営直轄の新組織として「IoTvセンター」を立ち上げたのを皮切りに、今年に入ってTBSが「総合マーケティングラボ」、フジテレビが「総合メディア推進本部」、日本テレビが営業局内に「総合営業センター」を設立した。パネリストにはこれら新組織を率いるフジテレビ総合メディア推進本部局長の樋口薫子氏と日本テレビ執行役員営業局長の黒崎太郎氏、そしてキー局の動きに対応する電通動画ビジネス推進部長の植木崇文氏が並んだ。

進行はワイズメディア取締役メディアストラテジスト/フラー株式会社常勤監査役塚本幹夫氏が務めた。冒頭、このテーマを取り上げた背景にあるテレビを取り巻くここ数年の環境の変化として、地上波テレビの広告費の落ち込みやテレビデバイスの接触時間の下降傾向があり、対策のひとつとして地上波見逃し配信サービス「TVer」やタイムシフト視聴計測が開始され、来年はNHKの常時同時配信やビデオリサーチ社の個人視聴計測の実施が計画されていることなどを説明した。

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こうした現状から「テレビ局のビジネスがGRPをベースにした放送広告収入だけでは成長性が見込めなくなってきた。新しい領域にチャレンジするために新しい組織を作ることになった」と解説し、登壇者それぞれの取り組みが紹介されていった。

フジテレビ樋口氏は「放送と通信の効率的な連携を通じ、経営資源であるテレビコンテンツの価値を最大化していくことが新組織のミッションにある」と説明した。具体的には総合メディ推進本部傘下にある「メディアマーケティングセンター」と「デジタルプラットフォームセンター」が戦略に基づき実践しているという。「メディアマーケティングセンター」は主に放送事業利益の拡大戦略と配信事業戦略の企画立案、調整、推進を行い、「デジタルプラットフォームセンター」はデータ事業戦略の企画立案、調整、推進や、次世代放送の技術戦略の企画立案と研究開発などを担っている。また同本部が事務局となって、局長級会議の「総合メディア推進会議」も進められていることも紹介した。

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日本テレビ黒崎氏は今年2019年6月に改正された営業局の新体制について「クライアントが今、広告の選択肢として考えているのはテレビかデジタルか。渉外担当がデジタルを含めてスポンサーの意向を吸い上げやすい体制にすべきだろうと、タイム、デジタル、スポットに分かれていた部を総合営業センターに一本化し、改正した。テレビの媒体価値を総合的にセールスし、デジタル広告の強みと利便性も意識できる体制だ」と説明した。稼働していくなかで見直しも図り、今年10月からは「デスク班」が「総合デスク班」に拡充された。今後の課題についても触れ、「個々の渉外担当の意識を変えていくことなど社内教育も含めて、日本テレビが持つ媒体の価値を最大限に活かし、セールス機能を高めていく」と述べた。

電通植木氏は今年2019年1月に統合プラニング/マーケティングを実現するために、ラジオテレビ局をタイム、スポット、デジタルの3業推の統合体制を築いた「ラジオテレビビジネスプロギュース局」が新設されたことを紹介した。さらに「アンケート調査から電通のラジオテレビ局の“誰に相談すればいいのか、分かりづらい”という声があり、総合代理店として統合プランニングできる組織体に改正した。ワンチームが3業推(タイム、スポット、デジタル)に向き合い、まとまった予算を最適配分することが最大の目的にある」と、新組織立ち上げの経緯と狙いを説明した。

本気を出したらTVer動画広告500億円は手堅い?

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それぞれの取り組みが説明されたところで、司会の塚本氏は「フジテレビはテレビコンテンツ価値の最大化、日本テレビはテレビメディア価値の最大化、電通はテレビ広告価値の最大化が新組織体制の狙いにある。共通して言えることは、現在のテレビ局の価値最大化と来るべき時代に向けた武装が求められているということだ」と話を整理した。

さらに続いたディスカッションパートでは「デジタル対応」や「人材育成」、「TVerで実施される夕方ニュースの同時配信技術実証」などをテーマに意見交換が行われた。なかでも盛り上がったのは外資系のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や国内のプラットフォームとの向き合い方についての話題だった。

電通植木氏が「2018年は動画広告市場が2000億円に達し、そのうち半分をYouTube広告が占めているわけだが、視聴されているコンテンツの中身がポイントにある。実は放送局由来のコンテンツ視聴が多く含まれていることがわかっている。だから、TVerとAbemaTVがまだ伸びていく余地は十分にあると思われる。現在、この2つを合わせた広告規模は100億円程度だが、3年以内に合わせて1千億円を目指したいところ。潜在能力のあるTVerが本気を出したら、TVerだけで500億円を稼ぎだすことができるのではないか」と述べると、フジテレビ樋口氏は「期待が持てる展望。がんばらないといけないと思った。ただし、実現には著作権上の課題や系列局と問題をクリアにしていく必要がある」と指摘。同じく黒崎氏も「動画広告市場の伸びは実感としてある。営業努力だけでなく、全体の整備も考えていく必要がある」と考えを述べ、議論は深まった。

最後に塚本氏が「テレビ局も新しいテクノロジーとサービス、柔軟性を持って積極的に攻めていくことが今後さらに問われていくのではないか」とまとめ、締めくくった。

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