Inter BEE 2022

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Special 2022.01.11 UP

【Inter BEE CURATION】ダイバーシティが広げる、テレビの可能性~INTER BEE CONNECTED 企画セッションレポート

編集部 Screens

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、InterBEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、Screensに2021年12月28日に掲載された「ダイバーシティが広げる、テレビの可能性~INTER BEE CONNECTED 企画セッションレポート」記事です。お読みください。

ダイバーシティが広げる、テレビの可能性~INTER BEE CONNECTED 企画セッションレポート

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、「InterBEE」を、2021年11月17~19日にかけて開催。今回は幕張メッセでのリアルイベントとオンラインイベントを並行しての開催となり、495社・団体から749ブースが出展。幕張メッセ会場には18,308名、オンライン会場にも累計1万名以上(2021年11月22日時点)が来訪した。

本稿ではオンライン開催された「INTER BEE CONNECTED」のセッション「ダイバーシティが広げる、テレビの可能性」の模様をレポートする。

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東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されるなど、視聴者のダイバーシティへの意識が高まり、テレビ局の向き合い方も問われる時代となった。テレビコンテンツの作り手はこの課題にどう向き合えば良いのか、テレビ局の女性雇用と障害者が取り組む番組制作という2つの切り口から、多様性を持つとはどういうことなのかを探るセッションとなった。

パネリストは、日本民間放送労働組合連合会 女性協議会副議長(フジテレビ所属)の岸田花子氏、日本放送協会 大阪拠点放送局コンテンツセンター 第3部ディレクターの空門勇魚氏、株式会社テレビ東京 プロデューサーの伊藤隆行氏。モデレーターはメディアコンサルタントの境治氏が務めた。

女性役員比率はわずか2.2%。「テレビ局の意思決定層にダイバーシティはない」

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セッションの冒頭、モデレーターの境氏は「2021年はダイバーシティという言葉が浮上した年でした。一番大きな要素は東京2020オリンピック・パラリンピック。障害を持つ方への視点が変わりリスペクトを持つようになった一方で、前組織委員会会長の発言により女性の立場に改めて注目が集まりました」と語り、「社会の価値観が大きく変わろうとしている時に、テレビの役割も変わる時ではないか?」と問題提起した。

まずはテレビ局における男女の面でのダイバーシティについて理解を深めるため、日本民間放送労働組合連合会(民放労連)の岸田氏が、「テレビ局に男女の面でダイバーシティはあるのか?」という視点からプレゼンを行った。

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テレビ制作の現場には、相当数の女性が働いている。しかし民放労連の調査によると、全国の民放テレビ局の女性役員割合はわずか2.2%で、女性役員ゼロの局は127社中91社(71.7%)もあることが明らかにされた。そして在京キー局5社中でも役員はゼロ、在京民放テレビ局のコンテンツ制作部門の局長などの最高責任者にも女性は一人もいないのが現状で、「テレビ局の意思決定層に男女の面でのダイバーシティはない」と岸田氏は強調する。

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そして岸田氏は、なぜ企業にダイバーシティが必要なのかを示していく。その基本は、「ダイバーシティがあると困りごとができること」で、「そこからイノベーションが起きて業績の向上につながる」のだと言う。「ダイバーシティがないとモノカルチャーで、暗黙知で物事が進み、社会課題が拾われない企業になっていく」と指摘し、この点は「投資家や求職者も注目し始めている。ダイバーシティは経営戦略であって福利厚生ではない」と続けた。

このプレゼンを受けてテレビ東京の伊藤氏は、「現場では今、改善努力や対話をしよう、女性登用の仕方、それぞれのシチュエーションでの仕事の仕方や配置など、急ピッチで進めている感じがあります」と状況を説明。境氏は、「INTER BEE CONNECTEDという場で、このテーマが議論される。最初の一歩を今進めようとするところまでは来た」と所感を述べた。

「障害者はいないことが“普通”とされている」。その“普通”のアップデートに挑む

障害者という視点からダイバーシティを語るために招かれたのは、日本放送協会(NHK)の空門氏。大阪からのリモートでセッションに参加し、まず自身の経歴紹介を行った。2歳の時に脊髄性筋萎縮症を発症し、今は全身の筋力がほぼない重度身体障害者だ。

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ちなみに空門氏が示したデータによると、日本国民の約936万人が障害者で、NHKにおける障害者雇用率は2.28%(雇用者数は約300人)だが、「車いすディレクターはほぼいない」状況だと言う。

空門氏は生活のほとんどで介助が必要なため、取材・ロケに出る時にもヘルパーが必要となり、「健康なディレクターと比べてコスパが悪い?」と悩むようになる。そして「他のディレクターと同じように番組を作っていたらヤバいのでは?」と考えるようになり企画したのが、障害者によるバラエティー番組『バリバラ』だ。(※リニューアルを経て、現在はみんなのためのバリアフリー・バラエティー 『バリバラ』としてEテレで放送中)

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この番組の狙いについて空門氏はこう語る。「障害のある人とない人は、学校や生涯スポーツの現場で基本的に切り分けられています。学校の運動会にも参加できずに見学だけ。一回くらいは全力で運動会をやってみたいという当事者の声を聞いて企画を考えました」と語り、「当事者主体」の番組制作であることを強調した。

そして制作されたのが、テレビ史上初の『障害者だらけの大運動会』(2010年制作)。「真面目に考えるだけではなく、障害のある方たちと一緒に笑って、『バリアフリーな世の中って何だろうね』を考えよう、というコンセプトも企画の狙いです」と空門氏は振り返った。

放送開始10年目を迎えた『バリバラ』は、今年の春から『#ふつうアップデート』というチャレンジを始めている。「普通に番組を制作していると、障害者などは出てこないのが普通だと分かってしまいました。そしてマイノリティーが普通に登場するコンテンツが作れないかなと考えたのです」と言い、社会にいるはずなのにいないことになっているマイノリティーの方々が現場に行って、「普通」のアップデートができるのかを検証するものだ。

プレゼンのまとめとして空門氏は、「以前と比べて社会の空気が変わりつつありますが、まだ障害のある方やいろんなマイノリティーの方たちは、いないことにされています。この先、他のNHKや民放の番組に登場できる時代が来るのかどうかを見ていきたい」とし、「まだまだ数が少ないので、もっと増やしていけばイノベーションが生まれる」と考えを示した。

「生きづらさ」がイノベーションにつながるか。ダイバーシティを語ることの大切さ

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セッション後半は、テレビ東京の伊藤氏が関わった番組を取り上げ、ダイバーシティについてのトークが続けられた。まず『巨大企業の日本改革3.0「生きづらいです2021」~大きな会社と大きな会社とテレ東と~』(2021年9月30日放送終了)について境氏が、「なぜ経済番組で、生きづらいです、という表現が出てくるのか」と尋ねた。

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伊藤氏は、「企業においてイノベーションを起こそう、新商品を作ろうとする人たちは、何かしら社会にある不満や見過ごしていたもの、空門さんが言った『あるものをないものにしている』ところがあり、それを探すという意味で、『生きづらい』というタイトルを付けました。そこには何かしらイノベーションの種があるのです」と込められた意味を説明。

境氏は、「ダイバーシティと言って少数派を取り上げるだけだと、小さい話になってしまうので、テレビの次の価値観が生めるのではないか、というようにダイバーシティを捉えた方がいいですね」と返した。

次に境氏はテレビ番組出演者調査を示し、若い女性とある程度年齢を重ねた男性の出演が多いことを指摘。これに対して岸田氏は、「コメントする有識者が年配の男性で、『ではCMどうぞ』、と言う若い女子アナというような役割分担が定番になってしまっている」と指摘。

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伊藤氏が、「今の番組の作り方、司会者がいて演者がいて、ひな壇があって、というのが主流ですけれど、もううるさいから観ない、という声も聞こえてきています」と続けると、岸田氏は、「そのパターンはなくなる可能性がありますよね。あまりにも各局が同じことをしている、という感覚は出始めています」と、テレビ番組作りは変わらなくてはいけないという議論が深まった。

「一方で障害者の方も、パラリンピックが終わった時に普通にテレビに出ていて、普通にすごい、と思って観ました。そこに普通にいる、という価値はあるのかもしれない。男性も女性も、いろんな境遇にある人も普通に使っていくのがいいと思います」と伊藤氏がダイバーシティを意識した番組制作への思いを語るなど、セッションは盛り上がりを見せた。

最後には、「(生きづらさは)ブルーオーシャンですね」(岸田氏)、「生きづらさはビッグチャンスです」(伊藤氏)、「最後に意外な重要な言葉が出ました」(境氏)と、このダイバーシティを語ることの意義を改めて確認し、セッションは終了した。

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