Inter BEE 2026 幕張メッセ:11月18日(水)~20日(金) Inter BEE 2026 幕張メッセ:11月18日(水)~20日(金)

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Industry Curation 2026.04.13 UP

【Inter BEE CURATION】【奥律哉の奥が深いメディアの話】テレビの若者離れ?! 10代が学校から帰って最初に触れるメディアはネット動画!

奥 律哉 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

放送か配信か?

スマホやコネクテッドTV(CTV)の普及、モバイルネット環境の高速/低遅延化の加速、自宅内Wi-Fi環境が整うことによって、生活者はインターネット経由でも様々な映像コンテンツを楽しむことができるようになった。一方で、生活者はいま観ているコンテンツが、放送波経由なのかインターネット経由なのかは無意識・無関心である。
しかし、メディアビジネスの視点からはこの両者には様々な差異があり、関連法案やビジネスモデル、UIは異なる。
今回はこのような生活者認識とメディア事業者認識のギャップを可視化する一助として、生活者が1日の各時間帯に、どのくらい放送波やインターネット経由で映像情報を楽しんでいるかを分析する。

TEEN層のメディア利用行動の変化

- 分析詳細と時系列データの意味合い

使用したデータセットは、ビデオリサーチのMCR/exデータ(東京50㎞圏)である。このデータにおいて、TEEN層(男女13~19歳)の映像利用に限ったメディア利用状況の詳細を時系列で分析する。
これから示す5つのグラフは、それぞれ2019年、2020年、2021年、2023年、2025年のMCR/exのテレビ行為者率とインターネット動画行為者率(以下、動画行為者率)の15分単位の推移グラフである。テレビ・インターネット動画とも、自宅内で視聴行為を15分単位で1回でも行った場合、行為者としてカウントしている。

青線:テレビ行為者率
テレビ視聴を行った人の割合を表している。地上波・BS・CSなどのテレビメディアを見た場合に、行為者としてカウントされる(テレビ視聴率とは異なる)。

赤線:動画行為者率
インターネット経由で動画コンテンツを見た人の割合を表している。検索をする・メールを打つ・SNSで受発信をする・ECサイトで買い物をする・radikoやポッドキャストを聴くなど、ユーザーのインターネットの利用には様々な目的があるが、ここでは動画視聴に限定して取り上げる。

それぞれのグラフの横軸は放送タイムテーブルの時刻標記にあわせて5:00~29:00、縦軸はテレビ行為者率と動画行為者率を併載し、5つのグラフにおける時系列でのデータ比較が容易になるように、最大値スケールを25.0%に統一してグラフ化している。

各時系列データの位置づけは次の通りである。2019年は比較のための基準データとする。2020年データは新型コロナウイルスの感染が拡大したパンデミック時のデータとして、2021年、2023年、2025年(最新データ)は、その後の推移を確認するためのデータである。

- 2019年データ(基準データ)

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最初に、時系列データの比較基準として2019年データを確認する(図1)。
2019年では、朝の通学前の時間帯にテレビ行為者率が跳ね上がる。その後、彼らが学校へ出かけるタイミングに合わせて急減し、学校から帰ってくる16時以降、夜にかけて再び上昇する。その後23時台には、テレビ行為者率は動画行為者率を下回る。朝帯・夜帯と二つの山があり、特に朝帯はテレビ行為者率が動画行為者率に比べて圧倒的に高く、テレビが優位なメディアとなっていることがわかる。

一方の動画行為者率に注目すると、早朝にテレビ行為者率を上回る時間帯がある。彼らがスマホの目覚ましで起床し、その流れでインターネット動画を見ている生活スタイルをうかがわせる。動画行為者率はテレビ行為者率と同様に、彼らの帰宅時である夕方から増加し始めるが、そのレベルはほぼ同スコアである。その後、夜帯にかけて両スコアは上昇するが、動画行為者率は19時台で一時的に減少する。これは家族との食事のタイミングと重なる。夕食時には、食卓での会話や家族団らんの時間としてテレビ行為者率が急上昇する一方、結果としてスマホで動画を見ることは控えられ、動画行為者率が減少している。その後、両スコアは23時台で再度逆転し、深夜帯においては、ベッドサイドや個室などで動画をパーソナルに視聴している様子がうかがえる。

- 2020年データ

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続いて2020年のデータである(図2)。今回引用しているMCR/exデータは各年6月の調査であるため、2020年はコロナ禍での東京アラート発動時と調査タイミングが重なる。
*東京アラート:新型コロナウイルスに関する東京都独自の警戒情報。感染再拡大の兆候があるとして2020年6月2日~11日にかけて発出されていた。

TEEN層にとっては、毎日学校に登校するという今まで当たり前であった生活ルーティンがなくなり、休校やリモート授業が試行錯誤の中で進められた時期でもある。
コロナ禍で日中在宅していることに伴い、テレビ行為者率の時間別遷移は、従来の朝帯と夜帯の山に加えて、昼帯にも山が確認できる。テレビ行為者率の3つの山、これが2020年データのユニークな特徴である。
動画行為者率は朝帯から徐々に上昇する。しかし、昼食時は一旦下降しテレビ行為者率を下回るものの、その後、午後帯に再び上昇をはじめ、夕方帯にはテレビ行為者率を大きく上回る。テレビ行為者率は夕食時に合わせて急上昇し、2019年データより大きな山となっている。動画行為者率はそれに伴っていったん谷を形成し、その後23時台からは両スコアは再逆転する。

2020年はほかの年に比べて在宅率が顕著に高いため、両スコアは総じて過去に例を見ない高スコアとなっている。登校や外出による視聴環境の制限がないため、彼らのコンテンツ視聴ニーズが浮き彫りになったデータとして見ることができる。

- 2021年データ

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図3は、コロナ禍での1年を経た2021年のデータである。在宅・リモート授業などの学校のオペレーションも落ち着きを見せ、在宅率も徐々に下がりはじめた時期だ。
テレビ行為者率の山は朝帯と夜帯の二つに戻り、昼帯の山は僅かに確認できる程度になっている。動画行為者率は日中から夜帯にかけて継続的に上昇し、夕食時にテレビ行為者率がピークを迎えるタイミングで一時的にスコアを下げるものの、その後21時以降に再逆転し、深夜までその傾向を維持している。夜帯のテレビ行為者率のピークは約15%、動画行為者率のピークは約13%と、両スコアはかなり拮抗している。

- 2023年データ

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2023年データでは(図4)、在宅率がコロナ禍前の状態に戻りつつあることに伴い、テレビ行為者率の山は、昼帯の山が確認できなくなり、はっきりと朝帯と夜帯の二つの山の形に戻っている。一方、動画行為者率は朝から夜にかけて継続的に上昇し、テレビ行為者率が食事時にピークを迎えた後の21時過ぎにピークを迎える。夜帯のテレビ行為者率ピークは約11%で、動画行為者率約12%の方が大きい。

- 2025年データ

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最後に、最新の2025年データを見ると(図5)、全体傾向は2023年と同様であるが、夜帯において動画行為者率がテレビ行為者率を常に上回っていることが特徴である。2023年までは、夕食時はテレビ行為者率が動画行為者率を上回っていたが、2025年データにはその傾向は見られない。

TEEN層の一日のポータルゾーンとしての16時台を位置づける

ここまで、MCR/exデータから、テレビ行為者率と動画行為者率の時間帯別推移の変化を時系列で確認した。2020年からのコロナ禍を契機に、人々のメディア利用行動がダイナミックに変化したことがわかる。特にTEEN層にとっては、学校に通うルーティンがなくなった。外出の自粛が、彼らの自宅内でのメディア利用行動に大きな影響を与えたことがデータから読み取れる。

テレビビジネスを俯瞰的に捉えるために、映像利用行動にフォーカスを当てて、テレビ行為者率と動画行為者率の時間帯別推移を確認することを勧めたい。
MCR/exデータの利用のメリットは、生活行動とメディア利用行動がシングルソースパネルで時系列に捕捉可能である点だ。
視聴率とはその意味で利用目的が異なっている。MCR/exデータからは、テレビ行為者率が低い時間帯の意味をマクロに捉えることが可能だからだ。テレビ行為者率のスコアが低い時間帯でも、動画行為者率が高い時間帯は、彼らの視聴ニーズをテレビの編成タイムテーブルが満たしていないと捉えることも可能だ。

特に私が注目する時間帯は、TEEN層が学校から帰宅する夕方帯、具体的には16時から17時である。彼らにとって帰宅後に一息をつくフリータイムに、テレビを見ているのか?それともネット動画を見ているのか?の視点が大事だ。2025年データでは、帰宅後のこの時間帯は動画行為者率がテレビ行為者率を圧倒的に上回っている。この時間帯を私は、「一日のポータルゾーン」と呼んでいる。この時間帯に彼らのアイボールをグリップできれば、その後彼らが就寝するまで、彼らの生活に寄り添うことができるのではないかとの期待がある。

この視点で各局の同時間帯の編成タイムテーブルを確認すると、(平日においては)ライブでの情報ワイド系番組のベルト編成が大半である。TEEN層にとっては、あまり興味を持たない内容だ。
私と同年代の読者には心当たりがあると思うが、私たちがTEEN層であった当時、この時間帯はアニメやドラマの再放送、若年層向け番組が並んでいた。宿題に手を付ける前にテレビを見ながら、宿題に戻るそのきっかけを失っていたことが記憶に新しい。
「若者のテレビ離れ」と言うよりは、「放送局の若者離れ」「テレビの若者離れ」と呼ぶ方がふさわしいのではと感じることがある。

一方、放送局(特にローカル局)にとっては、この時間帯のベルト編成は貴重な自社制作番組放送ゾーンであり、地域密着を具現化するローカルニュースの時間枠でもある。この二律背反の状態をどのように解決していくのかの妙案はない。しかし、私のこの課題意識はぜひ共有してほしい。
今回紹介したデータは、生活者の映像利用をマクロに捉え、その中での放送サービスの位置づけを改めてどう考えるかということを示唆している。

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