Inter BEE 2019

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Special 2019.12.06 UP

【Inter BEE 2019】見えてきた「放送×AI」「映像×AI」の具体像 画像検出、文字起こしなどによる編集の効率化からカメラワークの自動化、AIキャラクターまで多様な活用方法を提示

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Inter BEE 5Gのソフトバンクの展示では、カメラで撮影した動画を5Gで伝送し、エッジコンピューティングにより超低遅延でモザイク処理が可能なことを示すデモを行っていた

 目を凝らすとあちこちに「AI」の文字が見える。2019年11月13日~15日に幕張メッセで開催されたInter BEE 2019では、放送や映像の世界にも人工知能(AI)が具体的なソリューションを提供するようになってきたことが感じ取れた。AIが有効に活用できる分野である映像解析はもちろん、音声認識や合成、CM送出の順位付けなどにもAIの活用が進んでいる。
(岩元直久)

出演者チェックやシーン解析など映像分析を効率化

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NECの「登場人物検索ソリューション」(左)と「姿勢推定技術」(右)

 近年のAIの技術進化のうち、多様な分野で成果が認められているのが画像、映像の解析への適用である。具体的な応用範囲が着実に広がっている。

 NECのブースには、「登場人物検索ソリューション」のデモ展示があった。動画コンテンツに登場する人物を、顔照合技術を用いて検索するソリューションである。
 過去に制作、放送したコンテンツを再利用するようなケースでは、出演者への許諾を得るなどのために登場人物の確認が不可欠だ。これまでは人海戦術でチェックしていたものの、時間がかかる上にミスも生じやすい。

 NECのソリューションでは、自動的に登場人物を顔認証で検索でき、検索した人物を登録するとその人物の登場シーンを作品中からピックアップすることもできる。顔照合には国際機関のベンチマークテストで1位を獲得したNECの顔認証技術「NeoFace」を採用し、角度がある顔やメガネ、マスクなどの装着でも高い精度で照合が可能という。

 またNECでは姿勢検出技術と組み合わせたデモも行っていた。登場人物の姿勢を検出することで、「ピストルを振りかざす」といった特定のシーンを長時間の映像の中から抽出できるようになるという。こちらは研究開発段階の技術ということで、今後のソリューションへの組み込みが期待される。

 富士通のブースにもAIを用いた映像からの顔認識ソリューションが展示されていた。既存のコンテンツ活用の側面のソリューションで、登場人物のチェックを人手からAIにシフトすることにより効率的なコンテンツ活用につなげられそうだ。

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ナレッジコミュニケーションはAWSのツールを使い、動画の登場人物解析のデモを行った

 Amazon Web Services(AWS)のブースに出展していたナレッジコミュニケーションでは、AWSが提供するAIサービスを使って手軽に動画から画像検出や文字列検出などが行えることをデモで示していた。AWSの画像認識エンジンの「Amazon Rekognition」などの既製品のAIサービスを活用して、短期間に課題解決を実現できることをアピールした。

 システム計画研究所/ISPのブースでも、骨格推定による人物へのタグ付けのデモが行われていた。同社ではAIなどの技術を使って企業が抱える課題解決をオーダーメイドで対応するビジネスを手掛ける。Inter BEEでは、動画からディープラーニング技術を用いて骨格構造を推定し、人物ごとに手を上げている「Up」、下げている「Down」のタグ付をするデモを実施。教師データが少なくても効果的に学習が可能な技術により、比較的容易にAIをソリューションとして取り込めることを訴求していた。

トラッキングやマスク処理などの編集作業もAIに

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画像認識AIをカメラワークなどの業務を省力化する分野に適用する日立国際電気のソリューション展示

 日立国際電気のブースでも、画像認識AIのソリューション展示があった。こちらは画像認識によって放送素材の制作時の省力化を狙ったもの。人物や物体をAIによって検知することで、繰り返しのカメラワークの自動化を実現する。例として、野球中継のカメラの切り替えや、航空機離発着カメラの航空機自動追尾などを掲げ、放送から設備管理などの幅広い用途を想定する。

 InterBEE SPORTコーナーに出展したスペインのCinfoは、ライブコンテンツ自動制作クラウド・AIサービスの「TiiVii」のデモを行った。TiiViiはクラウドサービスとして提供し、複数のカメラ映像を通信回線でクラウドに送ることで、カメラポジションやカメラアングルをAIが自動選択して配信まで行える。4Kなどの高精細カメラを複数設置することで、AIが必要と認識したシーンを切り出す仕組みだ。デモではアメリカンフットボールや水球の試合の自動制作の様子を見せていた。

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3MIMの「FACE Target」の紹介画面。人物の顔に自動的にモザイクなどのマスク処理ができる

 「AIによる自動編集」のテーマを大きく掲げていたのが、3MIM(サードミーム)のブース。ここでは、同社とmorphoが共同で、AIを活用した自動編集ソリューションとして「FACE Target」「REACTION Tracker」のデモを行っていた。
 FACE Targetは人物の顔検出とトラッキングをAIによって行う。検出した人物にモザイクなどの適切なマスク処理をかける作業を、人手をかけずに行えるようにする。

 REACTION Trackerは、バラエティー番組などで使われる「リアクションワイプ」をAIが自動的に調整するもの。現状では、リアクションがあった出演者をワイプ内におさめるためにエディターが手動で編集する必要があるが、REACTION Trackerによって自動的にターゲットを検出して追従することで、編集者は人物を編集するだけで済むようになる。

 映ってはいけない不特定多数の人物の顔にモザイクなどのマスク処理をするソリューションは、ソフトバンクのブースにも展示があった。これは最新の移動体通信システムの「5G」のデモとして展示されたもの。5Gの超低遅延性能を生かして、無線を介してもAIを使ったマスク処理がリアルタイムで実現できることを示した。

テロップ作成や取材文字起こしからCMの割付まで

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AIアナウンサー「荒木ゆい」をはじめとしたAIソリューションを紹介するSpecteeのブース

 Inter BEE 2019で見られたAI活用ソリューションの展示は、幅広い分野に着実にAIが浸透していることを示していた。

 AIアナウンサー「荒木ゆい」を提供するSpecteeのブースでは、AI技術を報道機関向けに適用する同社のソリューションを紹介した。社名と同じ名称で提供する代表的なサービスが、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に投稿された映像やテキストから事件などをモニタリングするSpectee。AI解析技術を使って、自動的に家事や交通事故、自然災害などの発生を通知する。独自のAI技術で自然なニュース原稿の読み上げを実現した「荒木ゆい」は、報道機関の働き方改革への取り組みにつながるもの。突発的なニュースに対して、原稿を投稿するだけでアナウンサーがいなくてもニュース報道ができる。ブースでは、フジテレビジョンの「めざましテレビ」で放送されている、お天気カメラの映像からAIが服装を解析、天気関連指数を計測する「AI天気」も紹介し、AIの活用の幅広さを感じさせた。

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富士通ブースの「AI自動キャプション」のデモ

 音声認識ソリューションを提供するアドバンスト・メディアのブースでは、AI音声認識技術を使った文字起こしのソリューションをデモしていた。いわゆるぶら下がり取材などで音声データとして録音したインタビュー内容を、音声認識してテキストデータに短時間で変換してくれるもの。テープ起こしのような手間をかけずに、音声をテキストデータとして活用しやすくする。

 AIによる音声認識技術を活用して、番組字幕の文字起こしなどに使うソリューションも展示があった。富士通や日立国際電気が展示していたもので、AIによる音声認識で番組のテロップや字幕の作成の効率化を図る。

 AIの活用方法としては、CMの送出にかかわる分野への適用の展示もあった。
 フジミックのブースでは、「AIを利用したCM放送順位付けサービス」のデモを行った。CMの送出には番組との関連や連続して流す際の適切さの判断など、複数の判定基準に従った順位付けが必要である。

 これまで人手で目視によって行ってきたCM放送順位付けの作業を、AIにより自動化することで省力化を目指す。フジテレビジョンで導入された事例とのことで、人手で1日に数時間かかっていた作業が、AIならば数秒で行えて確認するだけで済む。フジミックでは、ソフトウエアロボットによる作業自動化を実現するRPAと組み合わせることで、省力化に向けたソリューションとして横展開を図る考えだ。

 富士通のブースにも「テレビスポットCM作案の自動化」のでも展示があった。こちらも様々な条件をインプットすることで、AIが自動的にCMスポット作案業務を自動化し、短時間で最適なCMスポット作案を実現する。

 多様なAI活用ソリューションが見られたInter BEE 2019。2020年代に向かって、放送、映像分野でもAI活用が進むことを予見させた。

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