Inter BEE 2019

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映像制作/放送関連機材 2019.11.25 UP

【InterBEE 2019】会場各所でブース間をつないだIPリモートプロダクションネットワークのデモ 放送コンテンツのIP伝送規格のインターオペラビリティを提示 複数箇所の楽器演奏による音楽セッションも実現

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ヒビノブースでデモした、IPリモートプロダクションのデモ。六本木、 と幕張間をIPで接続し、同時進行による音楽ライブセッションが実施された

 11月13日から15日までの3日間開催したInter BEE 2019における主要テーマの一つが、放送設備における大きなテーマの一つがIP化、IPリモートプロダクションだった。映像の高解像度化、高品質化によるデータ量の拡大に伴い、配線等の設備の簡素化が求められると同時に、配信など放送以外でのコンテンツ活用の連携や、さらに今後活発化するであろう国際スポーツ番組などにおける国際間での素材共有の連携などへ向け、世界的にも放送設備のIP化の動きが活発化している。今回のInter BEEではそうした背景を反映し、複数ブース間でGbE接続によるデモも実施されるなど、IPリモートプロダクションの稼働デモが目立った。

 池上通信機とヒビノ、フォトロンの3社を含む14社が実施したのは、100Gbpsの光ネットワークをバックボーンでつなぎ、幕張メッセのホール1からホール7の14社のブースを100Gbpsと10Gbpsの光ネットワークで接続するデモ。14社共同で映像、音声、インカム、監視を網羅した大規模な広域ネットワークによるIPリモートプロダクションネットワークのデモを実施した。
 また、ホール3で実施した今年で2回目となる「InterBEE IP PAVILION」では、奈良テレビ放送の協力による4H/HD対応フルIP中継車や放送コンテンツのIP伝送規格「SMPTE ST 2110」と「SMPTE ST 2022-6」のインターオペラビリティのデモを実施した。

VoIPによる新しい新たな番組制作スタイルを提案

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ロボットアームに搭載した4K/HDマルチパーパスカメラ「UHL-43」を用いたステージ

 池上通信機のブースでは、新たに開発した2/3型4K 3COMSセンサー採用の4K/HDマルチパーパスカメラ「UHL-43」、4K HDR/HDのサイマル運用に対応し新たにオプションとしてMoIP GWモジュールを追加したカメラコントロールユニット「CCU-430」、スイッチャーを用いて料理番組を番組形式でデモを実施した。この料理番組は、IP接続したフォトロンやヒビノなどの各社ブースにリアルタイムで共有。また、IP収録デモンストレーションも実施した。

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IP収録デモンストレーションの様子

 IP収録には、同社の4K/HDスタジオカメラ「UHK-430/435」とMoIP GWモジュールを搭載したカメラコントロールユニット「CCU-430」、SMPTE ST2110に対応したハーモニック社の収録・素材サーバ「Harmonic SpectrumX(HD IP収録サーバ)」と「Harmonic Virtualizerd SpectrumX(UHD IP収録サーバ)」、素材共有サーバ「Harmonic MediaGrid 4000」をMellanoxネットワークスイッチを介してIP光ネットワークでで接続したシステム。仮想サーバ上に収録制御・ファイル転送・リソース制御などの機能を集約した収録制御サーバにて制御することができるという。

 ヒビノのブースに同社の4K/HDスタジオカメラを設置。池上通信機のシステムセンター 参与 鈴木昇氏によると、池上通信機のブースから「リモートで制御することができるという。同社ステージでは、このカメラにロボットアームに搭載し「独自の操作アプリケーションと組み合わせたリアルリモートシステムとして新たな番組制作スタイルの可能性を提案している」(鈴木氏)という。

ヒビノ 一般回線を活用した新しいライブストリーミング「Smart Hallライブ」を提案

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各拠点のモニター

 ヒビノのブースでは、光フレッツの一般回線を利用した六本木のライブハウス「リアルディーバズ」と新木場のアコースティックLab「シンフォ・キャンパス」、幕張メッセの同社のブースをつなぎ、3拠点間のセッションライブを実施した(トップ写真)。各拠点では、LAWO社の映像・音声の伝送および制御を行うIPベースのリモートプロダクション「V_Remote4」を利用した。「V_Remote4」はIPビデオストリーム変換、モニタリングに対応している。

 また、ブースで実施したセッションライブを池上通信機とフォトロンのブースにも光ネットワークを介してSMTPE 2110に対応したLAWO社の「V_mattrix」を利用し配信した。

 ヒビノプロオーディオセールス Div.東京第一営業部映像システムチーム課長の小野田健氏は今回の設備について、次のように説明している。
 「六本木や新木場のスタジオの照明やMIDIも幕張メッセのブースから制御している。また、距離が離れた場所からのセッションを実施しているが、タイムラグを全く感じずに演奏する事ができている。2020年の東京オリンピック開幕に向けて、スポーツのパブリックビューイングやライブパフォーマンスでの利用に活用していただけるように提案していきたい」(小野田氏)

各社ブースとIPリモートプロダクションネットワークで接続し、IPによるスタジオ収録システムのデモを実施

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EVSプロダクトによるVoIPワークフロー

 フォトロンのブースでは、Video Over IP EVSのコーナーにおいて、スタジオ収録システムのVoIPワークフローを展示した。フォトロンもIPリモートプロダクションネットワークのデモに参加しており、池上通信機ブースで実施した料理番組やヒビノのブースで実施したステージパフォーマンスなどSMPTE2110に対応したハイエンドライブプロダクションサーバ「EVS XT-VIA」に収録するデモを行った。

 フォトロンブースでは、スタジオ収録システムをVideo over IP対応するためのデバイスコントロール、IPルーティング総合管理システム、IP対応プロダクションサーバをEVSとしてトータルソリューションを提案。ハイエンドライブプロダクションサーバ「XTーVIA」は8K/4K HDR、IPに対応し、IPルーティング 総合管理システム「EVS S-CORE MASTERIP」は、ストリーミング(SMPTE2110, 2022-6,7) のルーティングシステムとして組み合わせることで、スタジオ収録システムを用意にVoIP化することができるという。

IP PAVILION 3つのテーマで実機デモ

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SMPTE ST 2022-6インターオペラビリティの様子

 今年のIP PAVILIONでは、「SMPTE ST 2110(Video・Audio)インターオペラビリティ」、「SMPTE ST 2110-30+DANTE(Audio)インターオペラビリティ」、「SMPTE ST 2022-6インターオペラビリティ」の3つのテーマで実機デモを実施した。
 「SMPTE ST 2110(Video・Audio)インターオペラビリティ」では、4Kカメラ「HDC-5500とHDCU-5500(ソニー)」、PTZカメラ(ソニー)、ビデオサーバ「PWS-4500」(ソニー)、マルチフォーマットスイッチャー「XVS-9000」(ソニー)などをネットワークスイッチ「Mellanox SN2410」へ接続したVoIPシステムを構築し、各社機器とのインターオペラビリティデモを行った。

 また、「SMPTE ST 2022-6インターオペラビリティ」では、朋栄やNEC、メディアリンクス、芙蓉ビデオエイジェンシー各社のSDI/SMPTE ST 2022-6 IPゲートウェイを介したIP伝送のデモを実施した。ST 2202-6に変換されたIPデータは、朋栄のIPコンバータでST 2022-6をST 2110へ変換し、「SMPTE ST 2110(Video・Audio)インターオペラビリティ」側へ伝送、ST 2022-6/2110の相互接続性についても確認できるようになっていた。

奈良テレビ放送 4H/HD対応フルIP中継車を出展

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奈良テレビ放送のIP中継車
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IP中継車の車内の様子

 奈良テレビ放送は、4H/HD対応フルIP中継車をIP PAVILIONに展示、中継車内部を公開した。ソニーが受注し、今年4月から選挙や野球中継などで運用しているという。

 ライブシステムを構成する主要機器であるカメラ、スイッチャー、ルーティングスイッチャー、収録再生機にIPライブ伝送技術を採用している。ブースの説明担当者によると「4K/HDともにNMIを採用することでSDIルーティングスイッチャーが無い映像システムになっている。また、オーディオ機器についても全てIP化している」という。

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