Special 2026.03.31 UP 【Hollywood Report】米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントがVFX大手ピクソモンドを「段階的閉鎖」へ 鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター 画像:ピクソモンドのホームページより転載 ◯はじめに 2022年10月27日の本欄で、「米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントがピクソモンドを買収」という記事を寄稿させて頂いた。 あれから3年ほどが経過したが、先ごろハリウッドの各メディアが相次いで報じたところによれば、米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは、傘下のVFXスタジオであるピクソモンド(Pixomondo)の、“wound down” (段階的な閉鎖)を発表したという。 3月末現在、ピクソモンドのホームページは未だ稼働しており、今後段階を経て、繋がらなくなると推察される。 ◯ピクソモンドの歴史 ピクソモンドは2001年にドイツで設立されたVFXスタジオで、後にハリウッドに進出。2012年には『ヒューゴの不思議な発明』でアカデミー視覚効果賞を受賞した事でも知られている。 近年は、バーチャル・プロダクションを駆使したVFX に力を注いでおり、2022年に米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに買収され、ソニーグループ傘下のVFXスタジオとなった。 現時点で、カナダのトロントとバンクーバー、サウジアラビアのリアド、そしてロサンゼルスの4箇所にLEDボリューム/バーチャルスタジオを持ち、世界各地にアメリカ、イギリス、ドイツ、カナダを含む 7 つのVFX関連オフィスを構えている。 バーチャル・プロダクション部門のみならずVFX部門も健闘しており、2025年の第23回 VES アワード授賞式では「ザ・ボーイズ/The Boysシーズン4 第2話「堕ちた者たちの生き様」で、最優秀コンポジット&ライティング賞[ドラマ部門]にノミネートされる等の実績を残している。 画像:2025年10月、本欄「Sound For Film & TVレポート」の取材でソニー・ピクチャーズ・スタジオを訪れた際に、スタジオ・ロット内で偶然見つけたピクソモンドのバーチャル・プロダクションのステージ。PXOのロゴマークとサウンド・ステージ7番の文字が見える。(筆者撮影) ◯ストライキの影響ではなく、ビジネス的な判断による閉鎖 これらの報道によれば、今回の閉鎖は、ここ数年ハリウッドのVFX業界で相次いで起こっている「SAG/WGAストライキの影響によるVFX受注本数の減少」によるものではなく、ビジネス的な判断によるものだという。 これには、「バーチャル・プロダクションの市場規模が、当初期待されていた程には伸びなかった」という背景があるようだ。 筆者自身も、「世界中で流行しているバーチャル・プロダクションが?」と何だか意外な気もするが、ビジネス的観点では実際に蓋を開けてみないと分からない側面があったようだ。 ◯プロジェクトの終了と共に、段階的に閉鎖 ピクソモンドのVFX部門は、現在進行中のプロジェクトが終了した時点で段階的に閉鎖され、以降ソニーグループにおけるVFXビジネスは、カナダのバンクーバーにあるSony Pictures Imageworksに注力していく予定だそう。 またピクソモンドのバーチャル・プロダクション部門である「Clara」も、VFX部門と同様に既存のプロジェクトが完了し次第、段階的に閉鎖されるという。ただ、ソニーグループに関連する一部の事業については、ソニーグループに移管される可能性があるという。 R&D(研究開発)およびイノベーションを担っている部門「PXO Innovation」については、ソニーグループの研究開発部門に統合されるそうである。 一連の報道によれば、今回の段階的閉鎖によって影響を受ける事になる全世界のピクソモンドの従業員数は、500人規模になると見られるという。 ◯おわりに オンラインのSNS、特にソーシャルニュースサイトReddit(レディット)のスレッドでは、ピクソモンドの閉鎖を惜しむVFX関係者の声で溢れ、先のテクニカラーの破綻にも見られるように、自社のビジネス自体は健闘していたものの、買収された後に親会社の影響によって閉鎖に追い込まれるという構図に遺憾の意を表す書き込み等も見られる。 今回、こうして著名VFXスタジオがまた1つ消滅してしまうという事実に、大変複雑な心境の筆者である。 記事一覧へ 前の記事へ