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Special 2022.03.02 UP

【Inter BEE CURATION】テレビ視聴の“増加”と“減少”の背景にあるものは? 〜ビデオリサーチ ひと研究所ウェブセミナーレポート(前編)

編集部 Screens

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ビデオリサーチ ひと研究所 渡辺 庸人氏

※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、InterBEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、Screensに2022年2月21日に掲載された株式会社ビデオリサーチ ひと研究所主催のウェブセミナー「withコロナで生活者の映像視聴は、なぜ変化し、これからどうなるのか? 〜生活者視点でのテレビとネット動画視聴の実態と背景〜」のレポート記事の前編記事です。お読みください。

テレビ視聴の“増加”と“減少”の背景にあるものは? 〜ビデオリサーチ ひと研究所ウェブセミナーレポート(前編)

株式会社ビデオリサーチ ひと研究所主催のウェブセミナー『withコロナで生活者の映像視聴は、なぜ変化し、これからどうなるのか? 〜生活者視点でのテレビとネット動画視聴の実態と背景〜』が、2022年1月31日・2月9日に開催。同研究所の主任研究員・渡辺庸人氏がスピーカーを務め、コロナ禍のなかで生活者や視聴者の生活、心理に起こった変化と、これらによって生まれた映像視聴行動の変化の実態を解説した。

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本記事では前後編にわたり、2部制で行われたセミナーの模様をレポート。前編となる今回は、第1部のセッション「テレビ視聴の“増加”と“減少”の背景にあるものは?」を取り上げる。コロナ禍のなかでテレビのリアルタイム視聴が増加し、その後ふたたび平年並みに戻るという流れが起きたが、実際に“増加”と“減少”のファクターとなったものは、いったい何だったのか。その背景を解き明かす。

視聴増加の要因は「コロナ禍の退屈時間とストレス」

渡辺氏は、2020年1月から2021年3月にかけての関東地区におけるテレビ視聴率の推移を紹介。政府による緊急事態宣言がはじめて発出された2020年4月から5月にかけて視聴率は急激に上昇し、その後増減を繰り返しながら同年10月にいったん平年並みの水準に落ち着いた。

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「これだけの大きな変化が半年の間に起きたということは、歴史的な変動である」と渡辺氏。「現代の生活者とテレビの関係の本質はここに現れており、現在テレビに起きている変化も、このとき起きた変化の延長線上にあると考えられる」と強調する。

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増加の要因について渡辺氏は、「コロナ禍で発生した大量の退屈時間がポイントだった」とコメント。テレビ視聴が増えた理由を問うアンケートでは40%の回答者が「『退屈』がしのげる」と挙げたといい、さらに「家の中にいる時間が増えたことで生まれるネガティブな感情がテレビの視聴行動に大きな影響を与えたのではないか」とも指摘。「新型コロナウイルスへの不安や外出自粛のストレスや情報への欲求もテレビ視聴につながったと考えられる」とした。

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視聴減少の「外的要因」:ネット動画の視聴拡大、視聴環境の変化

コロナ禍のはじまりととともに急激に上昇したテレビ視聴率だが、現在もなおコロナ禍が続く一方、テレビの視聴率は2020年10月を機に平年並みの水準へとなった。渡辺氏は「この時期、外出自粛ムードがコロナ禍初期ほどではなくなったことももちろん影響している」としながらも、「外出率の低さはこの頃でもある程度続いていた」と指摘。外的要因、内的要因に分けながら、その要因を紐解く。

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テレビ視聴が減った理由を問うアンケートでは、30%弱の回答者が「インターネット動画を見始めたら、そちらのほうがより面白かった」と回答。「SNSをする時間が増えた」「ゲームをする時間が増えた」という他回答に比べて、その割合が突出していることがわかった。

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さらに、「忙しくなってテレビを見る時間が無くなった」という回答も20%と高い水準を記録。「家族がテレビをよく見るようになって自分の見る時間が減った」「家族の在宅が増えて、自分一人で見たいものが見にくくなった」など、コロナ禍で生活スタイルが変わった家族の影響を受けているケースも見受けられたという。

視聴減少の「内的要因」:番組制作の制限、コロナ禍の気分と番組内容とのミスマッチ

番組制作の現場でも、ロケや収録の自粛によって総集編や再放送に切り替えるなど、コロナ禍の影響で内容の変更を余儀なくされるケースが相次いだ。こうした事情も、生活者の視聴習慣には大きな影響を与えたようだ。

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アンケート回答では、「バラエティが過去の映像ばかりになったり、新しい・面白い内容や企画がなくなったり」という回答が10%強ほど見受けられたのに対し、「ドラマが再放送ばかりになった」という回答は数%に留まり、番組ジャンルごとの影響の違いが浮かび上がった。

「ドラマの再放送が視聴減につながったという人は限定的であり、バラエティなど、ある意味毎日見るような番組の影響が大きかった」と渡辺氏。「セットの変更やリモート出演の実施といった創意工夫は視聴者に伝わっており、ポジティブな評価もたくさん上がってきている」としつつも、「ファンにとっては『番組内容が変わってしまった』ということが、視聴減の要因になりうる」と語る。

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さらに渡辺氏は要因として、「コロナ禍の気分と番組内容のミスマッチ」を指摘。アンケートでは20%強の回答者が「番組がどの放送局も『コロナ』の話ばかり」と回答しており、「憂鬱な気持ちのなか、日々の感染者数などの情報を見たくないという人が少なからず存在しており、こうした人々がテレビから離れたことも事実」という。

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「コロナ禍に憂鬱を感じる度合いが高い人ほど、テレビの視聴が減少しやすい」と渡辺氏。「ただでさえ生活の変化に憂鬱を感じているなか、ニュースや報道系の番組を通じてネガティブな話題を目にしたくないという気持ちが働いている」とし、「そうしたものを見てしまいそうなタイミングではテレビから離れる、という行動が起こりえるのではないか」と見解を述べた。

「平年並みに戻った」テレビと「右肩上がりが続く」ネット動画の違いとは?

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「コロナ禍の外出自粛が2020年の4月、5月だけで終わっていたらテレビのリアルタイム視聴の増加はもっと続いていたのではないか、と見る向きもあるが、多くの人にとって、実際にはテレビだけでは簡単に埋められないほど“時間”ができてしまった」と渡辺氏。「人によって影響の度合いが異なるのはもちろんだが、このタイミングで生じた“テレビ以外の時間の使い方”が膨らんでいったことが、リアルタイム視聴を減少させた大きな要因」と語る。

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コロナ禍のなか、テレビのリアルタイム視聴が増加から減少、そして平年並みの水準に戻る一方で、「ネット動画の視聴は右肩上がりで増加し続けている」と渡辺氏。「テレビとネット動画のあいだには“楽しさ”への態度や視聴環境の違いがある」とし、「生活者はどちらも同じ映像コンテンツとして並列で選んでいるという点が、今後の課題の糸口につながってくるのではないか」と示唆した。

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続く後編では、第2部のセッション『ネット動画視聴の拡大の背景にあるものは?』をレポート。コロナ禍以降、ネット動画の視聴が伸び続けている要因を紐解きながら、テレビから移行した生活者の心理に踏み込み、これからの映像コンテンツを考える上での課題について論じる。

ネット動画視聴の拡大の背景にあるものは? 〜ビデオリサーチ ひと研究所ウェブセミナーレポート(後編)

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