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【MIPCOMカンヌ2023レポート】世界最大級TVコンテンツ見本市「2.0」に進化~MIPCOMカンヌ2023現地取材レポート

テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子

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フランス・カンヌ秋恒例のTVコンテンツ国際流通マーケット「MIPCOM2023」がプレイベントの期間を合わせて10月13日から19日まで約1週間にわたって開催された。今年は、中国をはじめアジアからの参加が完全復活し、世界100か国から1万1000人を超える来場者を集め、活発化する国際共同製作や急成長する国際FASTビジネス、そしてダイバーシティ&インクルージョンの推進など変革期に相応しい話題が盛り上がりをみせた。現地取材した模様をレポートする。

3年連続の伸び、世界100か国から1万1000人が参加

地中海に面した南仏カンヌで毎年秋の時期に世界最大級のTVコンテンツ国際流通マーケット「MIPCOMカンヌ」がパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレを会場に開催されている。2021年以降、世界のメディア市場の変革期に合わせた見本市の在り方を模索し、リニューアル3年目の今年は出展ブースから企画セッション、ネットワーキングプログラムまで“MIPCOMカンヌ2.0”のかたちは定着しつつある。

主催のRXフランスの発表によると、今年で39回目を迎えたMIPCOMの参加人数は昨年の規模を若干上回り、100か国から1万1000人強を記録した。2021年にフィジカル開催が復活して以降、3年連続で伸びている。全来場者数の内、バイヤー数は前年比10%増の3,500人を超え、なかでも、注目度が高まる中東地域から参加したバイヤー数は前年比50%増と大幅に伸び、160人以上が参加したことが報告された。

国別全体の来場者数はヨーロッパ開催とあってイギリスが最も多い。これにエンターテインメントの大国のアメリカ、開催地本国のフランス、そしてドイツ、カナダ、トルコ、スペイン、韓国、イタリアが続く。

日本は昨年に引き続き、10番目に多い来場者数となり、その数は昨年より増え、約300人が参加した。NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ、読売テレビ、朝日放送、関西テレビ、東映アニメーションらが個別にブースを設置し、連日にわたり商談を重ねていた。

恒例のプロモーション企画も積極的に行われ、国際ドラマフェスティバル in TOKYO 実行委員会が主催する恒例の「MIPCOM BUYERS’AWARD for Japanese Dram」受賞式や一般社団法人放送コンテンツ海外展開促進機構(BEAJ)主催、総務省の後援で開催された日本の番組フォーマットのプロモーションイベント「TREASURE BOX JAPAN」(トレジャー・ボックス・ジャパン)が実施された。また個別展開のプロモーションとしては日本テレビが70周年を記念し、ドラマやバラエティなど7つの新作をPRする会を期間中に開き、各国のバイヤーやプロデューサーなどを集めて国際展開の好調ぶりを示していた。

会場全体の出展社数は320以上を記録した。その内、初出展者数は50に上り、好循環の動きを見せていた。また国策によりコンテンツ事業を支援する流れも引き続き目立った。広い敷地を確保した韓国や中国、東南アジア、欧州、アフリカなど幅広い地域から各国パビリオンが展開され、その数は31カ国を数えた。

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「FAST」「AI」「コープロ」ベニューごとに展開

来場者の概況からはこれまでのMIPCOMカンヌと変わりなくも感じるが、見本市の活用の仕方にこそ変化が見られる。今や個別ブースの商談スペースだけが見本市の主役ではない。業界注目の話題を共有する場がテーマ別のベニューごとに連日にわたり展開され、80近いプログラムやネットワーキング、情報共有の場も活気に満ちた。

象徴されるのが、今年で2年目の設置となった「シービュー・プロデューサーズ・ハブ」だ。今、世界のコンテンツ市場で最も重要視されているコープロ(国際共同製作)ビジネスをテーマにしたセッションが集中的に組まれ、オープン商談スペースも活用されていた。中にはフジテレビが登壇した日本のIPにフォーカスしたセッションや日本テレビ傘下のHuluが出資したドイツの国際共同製作ドラマ「THE SWARM」の成功例を語るものなどもあった。またソニーが提供する最新TVコンテンツ制作をテーマにした特別セッション「CONTENT CREATION SUMMIT」のキックオフトークも展開された。

横断的なトピックを扱うワークショップの場として機能していた「MIPラボ」も賑わった。春のMIPTVカンヌ2023で好評を得て、継続企画された国際FAST市場の集中講義「第2回目FAST&グローバル・サミット」は人気プログラムの1つにあった。「メディア・ユニバース・マップ」の作成者で知られるNY在住プロデューサーEvan Shapiro氏がFASTエコシステムを体系化した「FASTワールド2023マップ」を披露するなど、急成長するFASTの現状と将来性を共有する場が作られた。

MIPラボでは初企画の「UNLOCKING AIサミット」も行われた。AI時代に合わせて、国際コンテンツ・ビジネスにおけるAIの活用とその有望性を明らかにする内容で、持続可能で安全な枠組みを構築するために倫理的、法的観点から探る講義が展開された。

日本テレビ「ブラッシュアップライフ」日本で唯一の受賞

MIPCOMカンヌらしい華やかな場面ももちろんあった。日本のHuluが出資し、日本人で唯一のキャスト起用となった中島健人(Sexy Zone)が出演するドイツBetaフィルムとZDFスタジオが提供した「コンコルディア」や、ヒーローキャラクター「マスク・オブ・ゾロ」の新たなストーリーを開発したAmazonプライム・ビデオのスペインドラマ新作シリーズ「Zorro」のワールドプレミア上映などが行われた。

第7回目の開催となる業界唯一の賞「ダイバーシティTVアワード」の授賞式もMIPCOMカンヌにおける注目のプログラムの1つにあった。創設プレゼンティング・パートナーのA+EネットワークスらがMIPCOMカンヌと共同主催するもので、多様性のあるコンテンツやこれを推進する人物にスポットライトを当て、人種・民族部門、障がい者部門、LGBTQIA+部門、キッズ部門別に受賞コンテンツが発表された。日本から唯一ノミネートしていたNHKドラマ『作りたい女と食べたい女』(LGBTQIA+部門)は惜しくも受賞を逃したが、多様性をキーワードにしたコンテンツは日本で既に多く放送・配信されており、今後に期待したいところである。

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また最大手イギリス業界誌TBIが主催する「第9回Content Innovation Awards」では日本テレビが快挙を果たした。ドラマ『ブラッシュアップライフ』がBest New Scripted Series Non-English Language部門で受賞し、日本の作品では唯一の同賞受賞となった。

RXフランスのエンターテインメント部門ディレクターで、MIPTV/MIPCOM カンヌのディレクターであるルーシー・スミス氏は期間中の10月18日に開催したプレスカンファレンスで全体を総括し、「世界のエンターテイメント業界から最も重要な企業がカンヌに集まりました。業界の活気を反映する話題が集中し、今は課題からチャンスが生まれている時にあります。各々の数字がそれを裏付けています」と語っていたのが印象に残る。

来年、第40回の節目を迎えるMIPCOMカンヌの開催日程は2024年10月21日から24日まで開催される。また来春開催の第61回MIPTVカンヌは20244月8日~10日に開催され、ドキュメンタリー専門イベントMIPDOCとフォーマット専門イベントMIPフォーマッツは4月6日~7日のMIPTV前の週末に開催される予定だ。

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