Inter BEE 2022

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Special 2022.02.28 UP

【Inter BEE CURATION】USAメディアレポート:コネクテッドTVはテレビ業界をどう変えるのか 行き着く先は、「見たいコンテンツ」と 「使いやすさ」

谷口 悦一 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。米国のコネクテッドTV(CTV)の事情の最新動向を伝える記事です。

【USAメディアレポート】コネクテッドTVはテレビ業界をどう変えるのか 行き着く先は、「見たいコンテンツ」と 「使いやすさ」

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近年、日本におけるコネクテッドTV(以下、CTV)普及率は上昇傾向にあり、それに伴って、テレビ画面でTVer やNetflix、YouTubeなどのネット動画の視聴も増えつつあります。
今回はCTVの浸透が進んでいるアメリカにおいて、放送局や広告費にどのような影響や変化が生じているのか、ビデオリサーチ USA社長 谷口がレポートします。

ストリーミング配信の視聴形態

 日本の概況をみると、2021年にCTVでの見逃し配信サービス「TVer」の視聴割合(UB 数)及び再生数が、パソコンを抜いたというデータがあります。つまり、スマホに次いでCTVで視聴されるようになっており、ネット動画サービスをテレビ画面で見る新しい視聴スタイルが定着の兆しをみせています。

 今回、アメリカの状況をレポートする前に、CTVの定義を確認します。
CTVとは、インターネットを介して視聴可能なデバイスで、大きく分けて3タイプあります。

①スマートテレビ
② テレビにストリーミング・デバイス (Amazon Fire TV Stick, Apple TV, Roku など)を接続する
③ テレビ端末にゲームコンソールやブルーレイ・ プレーヤーなど外部機器を介して ネット接続する

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CTV を考える場合、OTT(Over The Top) などのコンテンツのストリーミング・サービスについて考えなくてはなりません※。インター ネット接続したテレビの画面において、従来の放送局が放送するコンテンツ以外に、ストリーミング配信やネット動画を視聴できるため、テ レビ業界では、テレビ画面の奪い合いが起こり、どのようにしたら自社のコンテンツを見てくれるのかが大きな課題となっています。

※ストリーミング配信系のNetflix、Amazon Prime Videoやそれらに加えてアメリカではネットワーク系の NBCUniversal のPeacockなどがある

アメリカではCTVが急速に普及し、2021年の世帯保有率は80%超

 アメリカにおける世帯内のCTV 保有率は、2011年の約30%から、2016年65%、2021年には82%に達しており、ここ10年で急速に増加。

 また、CTVの中で、スマートテレビは2024年には90%を越える保有率になると見込まれています。ちなみに、スマートテレビの全世界での保有率は、2020年は34%ですが、2026年には50%を越えるとの予測データもあります。現在、どのメーカーのフラットスクリーンテレビもスマート機能が当たり前で、わざわざApple TVなどを付加する必要がなくなってきています。ガラケーがスマホに切り替わったのと同じように、スマートテレビはこの後も確実に伸びていくとアメリカのStrategy Analytics社は予想し、コンテンツの視聴はスマートテレビが主流になるとの見解です。事実、アメリカでは未だテレビ放送の視聴時間が上回るものの、ネット動画サービスとのギャップは縮小傾向にあります。

 また、2020年のコロナ禍のピーク時に比べて多少下がったものの、昨年は大人(18歳以上) の39%が毎日なんらかのコンテンツをCTVで視聴。その推移をみると、2011年で3%だったものが、2016年19%、2019年31%、2020年40%と増加しています。特に若年層ほどCTV をよく視聴しており、35~54歳の中高年層が 22%、55歳以上が20%に対して、18~34歳の54%が日々CTVを視聴しています。この傾向をみると、コロナ後も、ネット動画の視聴は若年層を中心に伸びていくでしょう。

レコメンド機能や直感的UIなど、ユーザーフレンドリーが期待されるCTV

 視聴者の目をテレビ画面に留まらせるためには、ユーザーの嗜好性にマッチしたコンテンツのレコメンド(奨励)機能、直感的なUI (ユーザーインターフェース)が重要な要素と考えられます。つまり、ユーザーフレンドリーな機器 (デバイス)が今後益々受け入れられるといえます。
例えば、所有率が右肩上がりのスマートテレビは、ボタンひとつでコンテンツ全体が見渡せる視認性や一覧性があります。また、アメリカでは、特定の世帯が最後に見た番組、一週間前に見た番組からオススメの番組をレコメンドするスマートテレビも既に出てきており、このようなデバイスが普及し続けると考えられます。

各社ともM&Aでコンテンツ制作力を強化

 CTVでネット動画サービスの視聴が増加する現在、放送局もストリーミング領域で負けぬようM&A、買収、そして技術提携等を実施し対策を立てています。また、コードカッティング(OTT への乗り換え)が進む中、すべてのストリーミング配信提供者は巨大なスケールで、視聴者のサブスクリプション獲得、広告収入を得るために努力しています。
 業界再編としては、
 ● AT&Tとディスカバリーの合併(Warner Bros. Discovery)やViacomCBSがViacomと Pluto TVと合併
 ● さらにCBSが持っているCBS All Accessを入れたParamount Plus結成
 ● その他、NBCUniversalはPeacockを発表、 またWWE Networkの買収
といったように、各社は他のストリーミングサービスを傘下に入れ、より魅力的なコンテンツの提供を目指し、視聴者数を増やしています。合併の出費は巨額ですが、収益面で勝負できると踏んでいるようです。

 ちなみに、CTVで配信しているAmazonは、2020年にコンテンツ制作費用として約110億ドルを投じており、翌年2021年5月にはMGMスタジオを買収するなど体制を強化しています。Netflixも昨年は約170億ドルのコンテンツ制作費を計上。この努力が視聴者に認められ、ある大手金融機関のデータによると、60%の視聴者がNetflixは最も良いオリジナルコンテンツを配信していると回答したそうです。

視聴が増えるCTVへの広告出稿が増加

 2021年のアップフロント※の売り上げは約200億ドルで、そのうちCTVの広告出稿は、前年比で5割増の約45億ドルと予想され、リニアのアドレッサブル広告出稿(前年比3割増の約28億ドル)を上回る金額となりました。業界調査によると、エージェンシーの約2割がアップフロントで、約3割がニューフロント(デジタル系の取引き)で、CTVへの広告出稿を増やすと回答。現状ではデジタル動画広告費の3分の2をモバイル系やPCが占めるものの、CTVの割合は確実に増加し、広告出稿への影響度は大きくなるといえそうです。

※アップフロントとは、その年のテレビの新編成(9月から向こう1年)のテレビCM 枠売買を前倒しで行う取引のこと。 プライムタイムを中心に大体7~8割の在庫がここでさばかれると言われている。

CTV をめぐる今後について

 CTVが当たり前になってきたアメリカでは、数年後にネット動画サービスの視聴時間がテレビ放送を上回るとの予測もあります。CTVは最終的にスマートテレビに集約され、スマートテレビのOSを作っている会社、例えばサムスンのように自社のOSを販売しているハードメーカーに大きな権力が集まるかもしれません。これによって、放送局は自社のプラットフォームやスタンドアローンのOSを諦め、テレビメーカーが提供するOSに乗せて配信する方向に進んでいくと考えられます。また、コンテンツ(映像作品・ゲーム・音楽)配信業者が増えていく中で、高品質で豊富なラインナップを有するサービスが生き残るといえるでしょう。

 今後、コードカッティングがさらに進み、視聴者の分散化がデジタル領域でも起きたら、視聴者の目をどう奪い、いかに広告費を確保するのか、競争の激化が予想されます。

 良いコンテンツや広告予算の確保の話になると、これを支え、かつメディア業界全体が円滑に回って行くために、誰が、何を、いつ、どこで、どうやってコンテンツあるいはプラットフォームに接しているのかを測定し、そのデータを更なる飛躍のために活用することを考えなくてはいけません。これはアメリカでも大きな課題です。

 従来のリニアのテレビコンテンツや、一部のデジタルの広告指標は過去50年もの間Nielsenがカレンシーとしてリードしてきました。現在視聴者の分散化が著しく進む中で、リニアのテレビに加えてデジタル、また多岐にわたるデバイスやプラットフォームを全て網羅したクロスプラットフォー ム測定の必要性が業界内から問われています。

 先日世界大手エージェンシーのOmnicomは、今年のアップフロントはリニアではなくCTV中心で行うとクライアントと足並みを合わせています。OpenAPも電通イージス、グループMの支持も受けてID活用でクロスプラットフォームの測定提供も行うと発表。もちろんNielsenは、それらの案件に全て参加しており、引き続きその分野でリーダーとして業界の取引を引率していくための大きなチャレンジをしています。加えて、各局デジタル配信におけるコンテンツ(番組・広告)の測定が統一されていない状況に対しても、NielsenはNielsen Oneを急ピッチで開発し業界対応を進めています。日本のカレンシー提供者としてビデオリサーチもOTT、そしてCTV周辺の測定やデー タ収集に関して注目していかなくてはいけないでしょう。

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