Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2021.06.30 UP

【Inter BEE CURATION】コロナ禍の過ごし方は人々に定着したのか? ~クリエイティブカルテでみる「ニューノーマル」なCM~

石津 茉友子 / VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力によりデータ分析から得られた知見を発信する「VRダイジェストプラス」から転載しています。コロナ禍による「ニューノーマル」に人びとが馴染んできたこと、またそれをCM表現にうまく取り込むことで共感性を高めていることなどがデータをもとに紹介されています。

未曾有の事態で今までの生活ができなくなり始めてから約1年。
今の生活を振り返ると、はじめのうちは違和感があった「在宅勤務」「リモート授業」などのニューノーマル(新しい生活様式)も生活の中に定着してきたように感じます。

今回は、ニューノーマルを反映したCMのクリエイティブ評価から、「ニューノーマルが定着しているか」を検証してみました。まず初めに生活様式に関する変化をみてみます。

1. 人々はニューノーマルを受け入れているのか?

 実際、データを確認してみると、今の生活の実態として、「自宅で仕事をする人」や「自宅で勉強する人」が増えていることが分かります。(図1)(図2)

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また、人々は状況を受け入れ、適応しようと意識していることもデータから確認することができます。(図3)

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2. CMにも「在宅勤務」が...⁉

 ニューノーマルへの変化が確認できたところで、CMの変化を見ていきます。
 皆さんは、様々な場面でCMを目にする機会があるかと思いますが、「在宅勤務」「リモート授業」という場面で内容が展開されるCMを目にする機会も多くなってきたのではないでしょうか。

 ここからは、ニューノーマルを反映したCMのクリエイティブ評価から、人々にニューノーマルが定着しているかを見ていきます。クリエイティブ評価の指標には様々なものがありますが、今回は「共感する」「親しみやすい」の項目を、「人々が内容を受け入れ、定着している」と定義し、コロナ前のCMと比較しました。

3. 「ニューノーマル」が反映されるCMたち

【事例1】ニューノーマルを反映した企業CMの評価はどう変化したのか?

 ここでは、企業イメージCMとして「NTT西日本」のCM評価を見てみました。CMの場面は、with you編では今までの生活では当たり前であった、対面会議などの場面が登場しますが、with you 2020編では「リモート会議」「オンライン面接」等のニューノーマルへ変化しています。男女15-69才の評価の比較をしてみると、「親しみやすい(1.3倍UP)」「共感する(1.4倍UP)」のスコアが高くなり、更には「信頼感を感じる(1.1倍UP)」についても高くなっていることが分かりました。ニューノーマルを反映したところ、生活者からより親近感を得ることができていると考えられます。(図4)

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【事例2】ターゲット層により響くか?

 次に、CMの場面が「オフィス」から「リモート会議」となった「Sansan」のCMを見てみましょう。こちらはCMのターゲット層をビジネスマンの含有率が高い「男性35-49才」にフォーカスし、評価を確認してみました。こちらも同様に、「親しみやすい(1.1倍UP)」「共感する(1.3倍UP)」のスコアが高くなり、更には「興味・関心喚起度(1.2倍UP)」についても高くなっていることが分かりました。(図5)

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【事例3】関心層以外にも響くのか?

 さらに【事例2】と同様にCMの場面が「オフィス」から「リモート会議」となった、「森永製菓 in ゼリー」のCMを比較しました。こちらもCM内容から、SanSan同様ターゲット層をビジネスマンとして、「男性35-49才」の評価を確認しました。こちらも同様の傾向で「親しみやすい(1.9倍UP)」「共感する(1.8倍UP)」のスコアが高くなり、更には「購入・利用意向度(1.2倍UP)」についても高くなっていることが分かりました。 (図6)

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ちなみに、こちらのCMは、櫻井翔さんを起用しています。参考までに当社のテレビタレントイメージ調査データで櫻井さんの人気度を見てみると、特に男女ティーン層や「女性20-34才」に人気があることが分かります。しかしながら、ビジネスマンの含有率が高い「男性35-49才」においては、男性タレント平均値と同程度で、特別この層に人気が高いわけではないのですが、今回の「リモート会議」編では以前のシリーズよりも、共感を得ていることが分かりました。これもニューノーマルを反映したCMのクリエイティブが受け入れられた効果かもしれません。(図7)

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4. まとめ

 今回は、人々が未曾有の事態の中で適応させようとしている「ニューノーマル」について検証をしました。

 今回の検証の中で、生活者は「ニューノーマル」な生活を受け入れ、前向きに日々の生活を送っていることが分かりました。私自身、社会人になってから在宅勤務中心の生活しかしたことがありませんが、この生活が定着していることを実感しています。

 また、CM評価については、「親しみやすい」「共感する」といった人々への定着を示す項目のスコアが高くなっていることが分かりました。これを言い換えると、スコアが高くなったのは、「人々に寄り添った」クリエイティブとなっている結果だと言えます。

 ここから、生活者を理解することは、CM評価にもプラスの影響を与えることができると言えますが、生活者を理解するためには、以下の2つが大事であると考えます。

① ターゲットを知る
想定顧客以外のターゲットからの反応が良かったというケースもあろうかと思います。潜在顧客から顕在顧客に引き上げるためには、訴求相手を明確に把握することが必要です。

② 効果検証する
CMを出稿した結果、人々はどう評価したのか、過去と比較していかに推移したのかなど分析視点は様々です。CMの出稿は、生活者に自社のサービス・商材を知ってもらうきっかけの1つであり、途中経過であると考えます。大事なことは、自社のサービス・商材がどう人々に評価されているのかを確認するために、CMを見つめ直す、つまり効果検証することが必要だと考えます。

 ニューノーマルな生活が定着しつつある中、ニューノーマルの中で前向きに生きる生活者の姿を商品やサービスに昇華にしたメッセージが受け入れられる、ということが確認出来ましたが、生活者に寄り添ったCMを制作する際には、まずはしっかりとした生活者理解が大切である、ということを今回の分析を通じて改めて実感できる結果となりました。

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