Inter BEE 2020

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Special 2020.01.07 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019 セッションレポート】「消費行動の変化」〜ネットで求めるのはCMではない?〜

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「消費行動の変化に広告主はどう対応し、テレビ業界は何をすべきか?」という、いささか長いタイトルには何が込められているのか?INTER BEE CONNECTED2日目最初のセッションでは、花王の生井秀一氏、楽天の盧誠錫氏、フジテレビの下川猛氏がパネリストとして登壇。LivePark安藤聖泰氏がモデレーターを務め、この長いタイトルのもと、議論が展開された。広告主とEC事業者とテレビ局という組み合わせの議論から見えてきたのは、ネットが変えた人びとの行動の変化だった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

10年前と比べて明らかにEコマースで買物をしている消費者

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冒頭でモデレーターの安藤氏が、このセッションの意図を数枚のスライドで説明した。インターネットの登場で私たちの生活は大きく変化したが、特にこの10年はスマホの登場で変化が一気に加速。10年前より明らかにEコマースで買物をしていないか、と会場に問いかけた。そこに「消費行動の変化」が見てとれることが、このセッションの前提だ。そんな状況でテレビ局は「ただネットに行けばいい」ではなく、本当にどうすればいいのかをテーマに議論したいと述べた。
ます最初に、楽天の盧氏がEC市場を概観的に説明する。日本のEC市場では楽天とAmazonの2強に加えてYahoo!、メルカリ、ZOZOなど多くのプレイヤーがひしめき合っている。ホットな市場でまだまだ伸びそうだ。世界に目を向けると、中国ではECが急成長し消費の20%を占めるまでになったという。
20%にもなると、領域によっては半分以上がECという商品群も出てきている。そうなると、ネットでのコミュニケーションが市場を動かす割合が断然大きくなるのだ。日本のECの割合はまだ6%だが、これから伸び続けると中国の状況に近づくことが想像できる。
ということは、これまでのテレビCMで認知してもらってスーパーコンビニの量販店で買ってもらうわかりやすい図式が効かなくなってくるのだろう。

広告主にとって口コミ・SNSは欠かせない領域

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一方、花王の生井氏が見せてくれたスライドが興味深い。テレビ局にとっての大スポンサーである花王にとって今もテレビCMを展開しスーパー・コンビニで買ってもらう流通経路が大きいのは言うまでもない。だが今は、そういった「リアル」な流通とは別に「ネット」でのコミュニケーションと流通も重要になっている。スライドの図からわかるのは、リアルとネットは分かれているだけでなく、関係し合いながら購入に至っていること。
実際、私たちが消費者として物を買うときも、今もスーパーで買う商品もあれば、ネットで買うことが増えてきた商品もあるだろう。その時に、単純に2つに分類しているのではなく、ネットでの口コミでリアル店舗で買ったり、CMを見てECで買うこともある。コミュニケーションと流通を複合的に捉える必要があるのだ。

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後半のパネルディスカッションではさらに議論を掘り下げていった。
モデレーターの安藤氏が「広告主から見てTVerはどう捉えているのか」と投げかけると、生井氏は「WEBではテレビで伝えられないことを伝えたい。TVerがテレビCMと同じことを伝える場なら、テレビを使う方がわかりやすい」と率直に述べた。「購買がネットにシフトする中、TVerでどんなコンテンツを見せてそこに繋ぐかを考えたい」と、広告主が単純にTVerでテレビと同じCMを見せるのでは満足しないことを感じさせた。
これを受けて下川氏は「テレビ局の人間はテレビの延長線上にTVerなどネット上のサービスを設計してしまう。デジタル発想の設計図が必要で、長尺で説明的な素材を流すとか、動画をクリックしたらカートに商品を載せられるなど、新しい仕組みを提案する必要がありそうだ」と応えた。テレビ局はようやくTVerをセールスする積極姿勢を見せはじめているが、その次のステップに進み新しい広告価値を生む努力が求められていることが議論から伝わってきた。
また生井氏が「楽天さんのサイト上で動画のクリエイティブテストをやったら、世界観を表現するテレビCMよりテイストの違うハウ・トゥー編の方が多く見られた」ことを話すと盧氏は「Amazonがすでに知っている商品を便利に買えるサイトであるのに対し、楽天は知らない商品を詳しく知ってもらって買う場として作っている。ハウ・トゥー動画の方が楽天ユーザーには合っていたのだと思う。」と解説した。ネットではそれぞれのサイトの特性に合った訴求をすべきなのだと理解できる話だった。
最後に下川氏が「今日のような場でスポンサーさんやネット事業の方とフリーに議論できるのはいい機会だと思う。我々もイノベーションする必要があるが、こういう議論の場を頻繁に作れば新しい仕組みが生みだせそうだ。」と前向きにコメントしたのが印象的だ。
いまテレビ局は、スポットの大きな減少に見舞われているが、既存のやり方の延長線で考えていても脱却できないだろう。広告主をはじめ多様なプレイヤーとの議論は次への糸口を見出す良い機会になりそうだ。このような議論の場をこれからあちこちで作っていくべきだと受け止めた。

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