ライブイベント:11月18日~20日 オープン期間:2021年2月26日まで

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Special 2019.12.24 UP

【INTER BEE CONNECTED 2019 セッションレポート】「視聴データが想像するテレビ広告の10年後」〜データが充実した未来はバラ色か?〜

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INTER BEE CONNECTED初日、最初を飾ったセッションは「視聴データが想像するテレビ広告の10年後」と題して、視聴データを扱う課題とそれがもたらす未来の可能性を議論した。昨年初めてテレビ局が自ら取得する視聴データを扱ったセッションが開催され、多くの来場者を集めたが、今年はその続きの形。午前10時30分からにも関わらず多くの来場者で客席が埋め尽くされ、立ち見も出て会場から溢れかえった。大盛況となったセッションの様子をレポートする。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

視聴データを扱うルールとは?活用する意義は何か?

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セッションの冒頭に企画者である電通のラジオテレビビジネスプロデュース局ビジネス戦略部長・布施川平氏が挨拶に立ち、企画の趣旨を説明。「視聴データの活用が各局で議論される中、その取扱の注意点も浮上している。安全安心に番組を提供するテレビ局の役割を確認した上で、視聴データを活用した未来がどうなるかを深掘りし皆さんと共有していただきたい」と述べた。
続いて三人の登壇者がそれぞれプレゼンテーション。まずテレビ朝日の松瀬俊一郎氏は、今日のセッションでは在京民放5社を代表してテレビ視聴データ利活用検討会事務局長として登壇していることをコメントしながら、在京キー局での取り組みを説明した。昨年のセッションにも登壇した松瀬氏から見てこの一年で進んだ点もあり足踏みした点もあると述べた上で、視聴データの分類・ポジションなどを解説。とくにオプトアウト型の非特定視聴履歴の取り扱いについてはルール遵守が必須であることを強調した。最後に示した「視聴環境とマーケティングの変化」のスライドでの説明が興味深い。これまでのテレビ受像機でのF1、M3などの性年齢別の視聴計測から、様々なデバイスの視聴の計測と、ライフスタイルや行動様式での視聴者の区分に変化することが描かれていた。視聴データによる分析の意味がよくわかる解説だった。

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二人目はYourCast代表取締役社長の三上進一郎氏がプレゼン。HAROiD分社化でLiveParkとともにYourCastが誕生した経緯から入り、その事業内容を説明した。同社は、民放テレビの協調領域に安心して使えるプラットフォームを提供するのがミッション。テレビに連動したWEBサービスでは、放送特有の秒単位での大量なトラフィックがやってくる。そういうトラフィックにも対応できるYourCastが提供するのは、データプラットフォーム事業、番組連動プラットフォーム事業、そしてiDプラットフォーム事業。とくにデータプラットフォーム事業では、各局が統一の基準で使うことで、信頼できるデータとして提示できることは重要だ。またHAROiDから継承したYouTV iDを使ったサービスも大きな特徴で、認証連携によって様々な番組連動展開やポイントサービスも提供できるとのことだ

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三人目のパネリストはヤフーの社長室長・半田英智氏。まず最初に半田氏が見せてくれた動画が非常に印象的だ。近い将来、人びとの生活がデータを駆使したサービスで、かゆい所に手が届く便利で豊かなものになることがイメージできる内容。この動画を受けてスライドで「未来を創造していく上でデータ利活用は欠かせない。」とメッセージし、そのためのヤフーのプライバシー保護体制について説明した。もともとあったプライバシーポリシーを10月に改定し、社内外の体制も整備したという。データの扱いで先んじているヤフーの姿勢は、テレビ業界にとって大いに参考になる。そしてもっとも重要なのが「放送業界の皆様とともに実現したい国内の統合マーケティング」として示した図だ。広告の役割の中で認知を担うテレビCMと、そのあとの段階を担うネットでの行動がデータでつながればメディア接触の全体像が把握できる。ヤフーがPayPayを推進し放送局と連携することで、認知から消費行動に至る流れがつながるのだ。このセッションに半田氏が登壇した意義が強く伝わってきた。

データ活用が進むほど、人間性や多様性が大事になる

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三者のプレゼンを受け、モデレーターの青山学院大学教授・内山隆氏がデータを取り巻く状況について整理。視聴データの取り扱いには社会の理解を深める必要があり、個人情報保護法の2020年の改正の中でも「利用停止権」や「開示請求」などがキーワードとして出ているなど、短期的には保護の動きが強いことが説明された。そんな中で、今は新しいメディアが「信頼されるメディア」へと進化する通り道にあり、このセッションでは長期的な展望に立つ利活用の側面にフォーカスしたいと、ディスカッションへ導いた。
後半で議論のテーマとして内山氏が提示したのはこの3つだ。「データが充実している世界とは?」、それに続く形で「それはバラ色の世界ですか?」、最後に「テレビ視聴データの持つ意味とは?」。
内山氏の問いかけに対し、三人のパネリストから活発な意見が飛び交って刺激的な議論となった。
議論の中で面白かったのが、半田氏の「今後データ活用が進めば、判断はそれをもとにAIが出すようになる。だからこそ人の意思決定能力がより問われると思う。AIがAだと判断しても、あえてBを選ぶ決定を人間が下すこともあっていい」という意見だった。三上氏の「マスメディアはみんな同じ方向を向きがちだが、データでわかった多数ではなく残りの少数を1局でも攻めればそのすべてが取れる。残りのデータをどう扱うかが大事で、データが充実すればそんな多様性も広がると思う。」という意見も合わせて、データ活用が進むほど人間性や多様性が問われるのだと理解できた。
一方、松瀬氏は「テレビのデータを扱うのはテレビ局ではなく広告会社の役割だと思われている。一年後には放送局側にデータがわかる営業マン、編成マンが増えてほしい。そのためには、他社に委ねるのではなく自分たちで分析できるようになるべきで、それがメディアとしての安心安全にもつながると思う。」と発言し、新たな領域に最前線で向き合う立場の意気込みが感じられた。
内山氏は最後に「音楽や映画の世界ではグローバルメジャーが世界を席巻しているが日本市場では東宝など国内のプレイヤーが互角に競争している。データの世界を鍵に放送でも同じ状況になるかもしれない。自国市場においては“ドメスティックメジャー”が存在しえるし、互いに協調できると考えている。」と述べ、放送局同士あるいはヤフーのようなネット企業も含めた協力関係が重要であることを示唆した。
セッションを通じて感じたのは、データが充実しさえすればいいのではなく、それをどう使うかが問われることだ。そのためにも、放送業界全体がデータをもっと知り、協力関係を進めるべきだと感じられた。朝から集まった多くの来場者も大いに啓発されたに違いない。

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