Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2021.07.26 UP

【Inter BEE CURATION】デジタル広告にできることをテレビ広告でも可能に〜ABCテレビ「知ってるようで知らないテレビCMの今」セミナーレポート(後編)

編集部 Screens

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、InterBEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、Screensに2021年7月12日に掲載されたABCテレビ主催のオンラインセミナーの記事です。お読みください。

ABCテレビ主催によるオンラインセミナー「知ってるようで知らないテレビCMの今」が6月17日に開催。

今回はインテージのアナリストを迎え、コロナ禍におけるテレビCMの役割や活用のヒントをプレゼンしたほか、ABCテレビの担当者が同局におけるテレビCMのトレンドを紹介。さらにパネルディスカッションとして、同局の実際の営業事例から見たテレビ広告の活用事例が紹介された。

本稿では後編として、ABCテレビが取り組む、テレビCMのプランニング(枠購入)や効果測定、CM制作パッケージなどの新サービスに関するプレゼン、さらにテレビ広告の活用事例をテーマとしたパネルディスカッションの模様をレポートする。

「デジタル広告にできることをテレビ広告でも可能に」ABCテレビの新CMサービス

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ABCテレビ 竹野氏

まず、ABCテレビ 営業局 東京営業部・竹野康治郎氏が、同社の新たなテレビCMサービスを紹介。

ABCテレビでは、「デジタル広告で出来ていることを、テレビ広告でもできる限り実現させたい」との考えから、希望のターゲットに応じたプランニング(CM枠提案)サービス、CM効果報告パッケージサービス、WEB上で手軽に1本からCM枠を購入できるサービスの3つを展開しているという。

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「プランニングサービス」においては、インテージをはじめ、さまざまな調査会社のテレビデータを活用した番組視聴の分析を実施。「性別、年代、職業だけでなく、趣味趣向や購買傾向などの属性も活用し、希望のターゲット層の視聴傾向に合わせたCM枠を提案している」という。

「たとえば、『ふるさと納税未経験だが、関心あり』というような層を抽出し、その方々がどういった番組をよく見る傾向にあるかを可視化。実際にこれらの層がよく見る枠へCMを割り付けることが可能」(竹野氏)

このほか、前述のさまざまな調査会社からのデータを活用し、番組ごとに視聴者のプロフィールデータを作成。性別、年代に限らず、趣味嗜好にいたるまでを可視化し、情報シートとして提供することが可能だという。

「CM効果報告パッケージサービス」においては、広告主から提供を受けたサイト流入などのデータをもとに、簡易的な形ではあるが、CMを放映後、具体的なコンバージョン(効果)を報告。オンエアから効果報告まで、一連の流れをワンストップで提供する。

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CM枠をWEB上で15秒1本から購入可能なサービスは、多くのテレビ局が参加するサービス「Smart Ad Sales」を利用したもので、ABCテレビは2020年7月から参加。

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希望の企業にはアカウントを発行し、専用サイトからCM枠を1本15万円から購入することができるという。(2021年6月17日現在)

「スポット出稿料のみで、CM制作から放送まで一気通貫する」初出稿社向けサービス

続いて、竹野氏は、テレビCM出稿実績のない新規クライアントを対象に、15秒CM1本の制作から放送までを一気通貫で行う特別パッケージ企画「エクセルCM企画」を紹介。同局が制作費を負担する形で、CMのコンテ(構成)から制作、放送までを担当。肖像権・著作権等の問題に抵触しない場合は、二次利用も可能だという。

「放送期間や本数などはご相談となるが、スポット出稿として500万円から導入が可能」と竹野氏。ABCテレビで500万円分のスポット出稿を行った場合、CM本数は30秒CM換算で15〜20本程度、15秒CM換算で30~40本程度放送が可能だという。

同社のCM制作サービスを用いてCMを制作し、仮にABCテレビで500万円分のスポット出稿を行った場合、インテージ社のMedia Gauge Dynamic Panelでの調査によると、推計で重複無しの約500万人にリーチ、ユニークリーチ単価換算で約1円になると竹野氏。

「ABCテレビのスポットCMにおけるCPMは、他媒体と比べても決して高くないと考えている」(竹野氏)

「テレビ×デジタル」施策で、媒体ごとの強みを生かした認知・エンゲージを実現

最後に竹野氏は、「テレビ×デジタル」の取り組みとして、同局が展開するサービスを紹介。

「ラジオからTVer、夏の高校野球を配信する『バーチャル高校野球』や、高校生の部活を応援するYouTube施策、Instagramで60万フォロワーを超える『Onnela(オンネラ)』など、様々な媒体をABCテレビは持っている」と竹野氏。地上波と組み合わせた提案も可能という。

フィンランド語で「豊かな生活を」という意味を持つ同局の女性向け動画メディア『Onnela(オンネラ)』は、各種SNSにて総フォロワー数100万を獲得。スマホ視聴を前提に動画コンテンツを最適化し、高いエンゲージメントでのSNS拡散を実現しているという。

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「高いエンゲージメントでユーザーの課題に寄り添い、課題解決をきっちりと訴求することで、暮らしを豊かにするヒントを提供し続けている」と竹野氏。「視聴しやすさ、役に立つ気づきや発見といったユーザーハックがコンテンツを生み出す媒体となっている」と語る。

「実際に使っていただいているフォロワーのみなさんからは、『課題解決があり、かつそれに伴う課題の提示が寄り添っている』という声をいただいており、高いエンゲージメントを生み出していることを実感している」(竹野氏)

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同局では、『Onnela』とテレビを掛け合わせた企画として、劇中に商品やサービスを露出するミニ番組を地上波で放映した。

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「それぞれのデバイスに合ったクリエイティブで認知や拡散を狙っていくこともできる」と竹野氏。テレビの視聴世帯が1000万世帯、『Onnela』のSNSフォロワーが100万であることに触れ、「認知の場としてテレビ、比較検討の場としてSNSといった使い分けも可能」という。

「このほか、YouTubeでの連動企画や、TVerを活用した企画なども対応可能」と竹野氏。「テレビとデジタルを掛け合わせ、スポンサー様が持つ課題に対してABCテレビなりのソリューションをご提供する」と結んだ。

パネルディスカッション「営業現場から見るテレビCM“今”のトレンド」

セミナーの最後は「営業現場から見るテレビCM“今”のトレンド」と題し、ABCテレビとインテージの共同によるパネルディスカッションを実施。ABCテレビからは営業局 東京営業部 担当部長・本田民樹氏、インテージからは田中氏がパネリストとして登壇し、坂爪拓也氏がモデレーターを務めた。

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インテージ田中氏、ABCテレビ本田氏、坂爪氏

最初の議題は、「コロナ禍の1年間における、テレビ営業現場での変化」について、本田氏は次のように語った。

本田氏:2020年度上期は、コロナの影響でスポットCMがかなり苦戦したが、下期にはクライアントの入れ替えが結構あった。フードデリバリーサービスがシェアを伸ばしたほか、ネットへの接触増加にともない、外資系IT企業をはじめとしたデジタル系の企業からの出稿量が増加した。ベンチャー企業からの出稿も増えたほか、新しい広告を打ちたいというクライアントも増えてきている。

「もともとデジタル広告を大量に出稿していた企業が、新サービスの認知に関してはテレビ広告を使っているケースはある」と田中氏。「ドン、と視覚的にも聴覚的にも届けたいというニーズがあるのではないか」と指摘した。

田中氏:このコロナ禍において、例えばAmazonやNetflixもそうだが、その視聴体験を伝えるときに、デジタル企業もあえてテレビも使い、コンテンツの魅力や視聴体験そのものを訴求するという効果を改めて認識したのではないか。

本田氏:例えばあるメーカーA社は一時期デジタルシフトの傾向があったが、そのとき別のメーカーB社はテレビCMを積極的に行っていた。そんななかでブランド認知度を調査したところ、テレビCMを積極的に行っていたB社がA社を認知度で上回ったため、A社がふたたびテレビに回帰したという事例もあった。

「テレビCMには“ターゲティングしすぎない良さ”がある」

「ブランディングや長期記憶という面でやはりテレビは強いと、このコロナ禍で感じた」と田中氏。これに対し、本田氏は「テレビCMには、“ターゲティングしすぎない良さ”がある」と語る。

本田氏:「お父さんが車を買うのだから」という理由でお父さんに向けて広告を当てていっても、車があまり売れない。なぜだろう、となったとき、実はその家庭における購買の決定は奥さんや子どもたちがしていた、というケースがあることがわかった。テレビは“広く届ける”、いわゆるブロードマーケティングができる。テレビ広告においては、この“ターゲティングしすぎない良さ”をうまく活用していただけたら良いのではないか。

田中氏:デジタル広告であの手この手を試したところが、「(広告方法はターゲット層の)刈り取りだけではない」という結論に最近行きついたように思う。メインターゲットではないが、実は「陰の決定者」である人にも届くという広がりや、潜在ターゲットへのリーチ効果がテレビCMには期待されている。

本田氏:あるフードデリバリーの会社のCMの特徴的な歌を、子どもたちが口ずさんでいるらしい。テレビCMが流れると歌い出すという。

田中氏:企業名や商品名の繰り返し、リズム、なじみやすい音楽など、やっぱりそういう記憶や連想イメージを作れるところもテレビの良さだと思う。

“CM中に視聴率が上昇した”『M-1グランプリ』のインフォマーシャル事例

「テレビ広告における最近の流行として、番組連動インフォマーシャルのニーズが高まっている」と本田氏。

本田氏:2010年に一度終了した『M-1グランプリ』を2015年に復活させた際、『M-1』チャンピオンを起用した「漫才インフォマーシャル」を実施した。

「クライアントの商品をテーマにした漫才を披露する」というインフォマーシャルを放送したところ、その直後から一気にTwitter上にポジティブなコメントがあふれた。

田中氏:記憶が点ではなく、連鎖的に残る、ストーリーで残せるという点がインフォマーシャルの強みかもしれない。

本田氏:興味深かったのは、インフォマーシャルを賞賛するコメントまで飛び出したこと。広告に対しても、『面白かった』という反応があって、番組そのものにも新たなストーリーが埋め込まれていったように感じた。

ストーリーで物事を考えていくということが、購買行動やファンを作っていくうえで非常に重要。テレビ広告はそれが非常に作りやすい。

ABCテレビが取り組む「コミュニケーション作りのコンサルティング」

「生活者に届きやすいコミュニケーション作りのコンサルティングが、いま一番求められている部分であるように思う」と田中氏。これに本田氏は次のように答えた。

本田氏:クライアントごとに合ったクロス・マーケティングを出していけたらと考えている。お問い合わせをいただければ、いつでも我々としては回答できるという状況を作ることが大切。データ活用のできるメンバーが、いまのABCテレビの営業セクションには揃っている。

「コンサルタント的なアプローチで、クライアントの方に適したテレビCMの形をご提案できる体制が整ってきている」と坂爪氏。本田氏も「地上波、デジタル含め、いろんな方面で皆様とお付き合いをさせていただきたい」と述べ、セミナーを締めくくった。

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