【INITER BEE CONNECTED セッション報告】(1)「多様化が進む動画視聴スタイルの現状とテレビ」電通と博報堂のメディア研究チームが最新の知見を大胆に披露!

2017.2.1 UP

性年齢別で見ると若者層はテレビなどマスメディアよりスマートフォン中心に生活が変化している

性年齢別で見ると若者層はテレビなどマスメディアよりスマートフォン中心に生活が変化している

テレビを実際に見ている人は100%ではないが、ネットにつないで動画を視聴している人は1割程度

テレビを実際に見ている人は100%ではないが、ネットにつないで動画を視聴している人は1割程度

テレビで動画を見る理由を聞いたところ、子どもの視力を気にしたり、ライブ感・臨場感やリラックス性など“気持ち”の問題という

テレビで動画を見る理由を聞いたところ、子どもの視力を気にしたり、ライブ感・臨場感やリラックス性など“気持ち”の問題という

定額サービスの普及で「そこにあるから、すぐ見れるから」見る新しい姿勢が生まれている

定額サービスの普及で「そこにあるから、すぐ見れるから」見る新しい姿勢が生まれている

 昨年11月18日から20日までの3日間開催したInter BEEでは、業界の最新動向を伝えるさまざまなセッションが開催された。3回目の開催となるINTER BEE CONNECTEDは、前年(2015年)よりさらに会場を拡大し、200名規模のステージと座席スペースが用意され、三日間充実したセッションが開催された。初日、最初のセッションは、電通総研と博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所による調査結果が披露された。広告業界の両雄によるメディア研究の最前線の情報は非常に新鮮なものが多く、学びに満ちた内容になった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)

■「マス対ネット」から「モバイル対その他メディア」へ
 セッションは、モデレーター役の電通総研・奥律哉氏の進行でスムーズに展開された。まず最初に、博報堂DYメディアパートナーズ・メディア環境研究所 所長の吉川昌孝氏から、同研究所の2016年の調査結果を元にここ数年でモバイルシフトが急激に進んだ様子が紹介された。
 性年齢別で見ると、若者層はテレビなどマスメディアよりスマートフォン中心に生活が変化しており、とくに若い女性はもはやスマートフォンとタブレットの利用時間が、PCも含めた他のすべてのメディアの利用時間より長くなっている。マスとネットの対比ではなく、モバイルとそれ以外の対比でとらえるべきだと実感させられた。

■メディアの多様化によるテレビの視聴目的の変化
 続いて、電通総研のメディアイノベーション研究部長・美和晃氏が、テレビコンテンツが他のメディアに置き換えられていった道筋が図で示された。
 ひと昔前まで、テレビ放送はあらゆる動画コンテンツの要素を単体で担っていたのが、徐々に他のメディアやデバイスに役割を明け渡していった。そしていつのまにかテレビ放送は「社会トレンド感」の領域だけになっている。これは日ごろテレビ番組に接して感じる実感ともリンクしている。テレビではゆったり見る番組やじっくり味わって見る番組から、現在の状況を伝える情報系の番組が増えている。他のメディアの登場が大きく影響していることがよくわかった。

■意外と少ないテレビのネット接続
 電通総研の主任研究員・森下真理子氏からはテレビのネット接続についての調査結果が披露された。
 10,000サンプルを対象にスクリーニングをかけたところ、テレビを所有しているのは8,853、その中でテレビを使用しているのは8,296だったという。そしてテレビをネットに接続しているのは2,107、それを動画視聴に利用しているのは1,037だった。テレビを実際に見ている人は100%ではないことと、ネットにつないで動画を視聴している人が1割というのは驚きだった。
 さらにもっとも多い使い方が、YouTubeで音楽を聞くことだったのも面白い。まだまだテレビでのネット動画利用はこれからなのだろう。スマートフォンではなくテレビで動画を見る理由を聞いたところ、子どもの視力を気にしたり、ライブ感・臨場感やリラックス性など“気持ち”の問題であるのも興味深かった。

■新たな視聴方法「サイマル・ビューイング」
 博報堂DYメディアパートナーズのマネージャー・加藤薫氏からは、コンテンツの視聴実態の調査が披露された。
 2人の若者のメディア接触の様子をビデオ撮影し、その実態が生々しくスクリーンに映し出された。就寝前にベッドに入った状態で、twitterやLINEでコミュニケーションしながらせわしなく小刻みに動画を視聴する様子がリアルに伝わってきた。
 男性の若者は、テレビでドラマを再生しながらタブレットでVODの別のドラマを視聴し、さらに手元のスマートフォンでコミュニケーションをする。次々に多様な動画をつまみ食いするように視聴する様を「Chain Viewing(チェイン・ビューイング)」、複数の動画サービスを並行して視聴する様子を「Simul Viewing(サイマル・ビューイング)と呼んでいるそうだ。メディア接触の実態を表すものとして憶えておきたい言葉だ。さらに加藤氏は、自分の好きなコンテンツを選んで見る姿勢から、定額サービスの普及で「そこにあるから、すぐ見れるから」見る新しい姿勢が生まれていると指摘する。コンテンツと人びとの関係を、新しいサービスが変えつつあると言えそうだ。

■メディア研究の双璧による価値ある共同プレゼンテーション
 電通総研とメディア環境研究所は、広告業界だけでなくすべての業界にとっても役立つメディア研究の双璧だ。会社としては競合関係に当たる2つのチームによる共同プレゼンテーションはいろんな意味で価値の高いものとなった。ひとりの観客としては、この形式のセッションを定期的に聴講したいところだ。来年のInterBEEに限らず、この続きを期待したい。

性年齢別で見ると若者層はテレビなどマスメディアよりスマートフォン中心に生活が変化している

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テレビを実際に見ている人は100%ではないが、ネットにつないで動画を視聴している人は1割程度

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テレビで動画を見る理由を聞いたところ、子どもの視力を気にしたり、ライブ感・臨場感やリラックス性など“気持ち”の問題という

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定額サービスの普及で「そこにあるから、すぐ見れるから」見る新しい姿勢が生まれている

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#interbee2019

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