Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2024.03.18 UP

昨年を上回る参加者数と出展社数で活気戻す〜国際コンテンツ取引からVP・AIまで網羅する香港フィルマート2024現地取材レポート~

テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子

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香港貿易発展局が主催するアジアを代表するエンターテインメント・コンテンツのトレードショー「香港フィルマート」が3月11日から14日までの期間、香港島湾仔区にある香港コンベンション&エキシビションセンターで開催された。参加者数、出展社数共に昨年の数を上回り、活気に満ちた会場はアジア随一のクリエイティブ産業のビジネスハブとして印象づけた。さらに今年は生成AIをはじめとする最新映像技術の話題も積極的に取り入れていた。現地取材した「香港フィルマート2024」をレポートする。

参加者数7500人以上、出展数760以上

アジアのエンターテインメント市場のハブとして発展し続ける映像コンテンツの国際トレードショーが「香港フィルマート」である。コロナ禍の影響により4年ぶりにリアル開催を復活させた昨年は準備が足りない面が否めなかったが、今年は計画通り準備を進め、本格的に再始動したマーケットの姿を見せた。3月11日から14日までの期間中、香港島湾仔区にある香港コンベンション&エキシビションセンターのホール1を会場に50か国・地域から7500人以上が参加し、27の国と地域から約760社・団体が出展、香港フィルマートの名物と言える30以上のナショナルパビリオンブースが出揃った。参加者数、出展社数共に昨年を上回り、会場は出展ブースで埋め尽くされた。

今年はインドネシアとマカオが初出展を果たし、引き続き韓国、台湾、EUブースなども展開された。また昨今、台頭が目立つタイは約30社が集結したナショナルパビリオンブースを構え、連日にわたり賑わいをみせた。主催の香港貿易発展局は、タイ国政府商務省国際貿易振興局と期間中、貿易ビジネスに関する覚書を締結したことを発表し、両国の関係性の強化を進めていることを強調していた。

中国本土からも恒例の地域パビリオンが出展され、北京、重慶、広東、杭州、湖北、湖南、江蘇、寧波、山東、陝西、四川、浙江省など各省、直轄市ごとの巨大ブースが会場の敷地の約4分の1を占めた。またデジタル中国の躍進を支える代表的企業のバイドゥ(iQIYI)、アリババ(Youku&Tudou)、テンセント(Tencent)のブースも目立ち、国際展開を広げる中国版GAFAと呼ばれるこの「BAT」3社のプレゼンスはアジアのエンターテインメント業界内で着実に拡大している。

日本からの出展はユニジャパンおよび民放連がとりまとめたパビリオンに加えて、各地域フィルムコミッション団体が集まった合同ブースや、日本テレビ、TBS、東宝、東映、KADOKAWA、日本経済新聞社などによる単独ブースで構成され、40社以上が出展参加した。

「香港フィルマート」は、香港の芸術と文化の祭典「エンターテインメント・エキスポ香港」(期間:2月24日から4月14日)の主要イベントの一つにあり、「エキスポ香港」としての開催は今年で20回目の開催を記念した。香港フィルマート初日の11日に開催された開幕式でピーター・ラム(林建岳)香港貿易発展局会長は「過去20年にわたり、映画やエンターテインメントの団体と協力し、このメガイベントを創り上げてきた。対話とコラボレーションを促進し、エンターテインメントビジネスの一大拠点としての香港の役割を強化している」と挨拶し、マーケット視点に長けたトレードショーの在り方を訴えかけた。

字幕や吹替えの活用で期待される生成AI技術

地元の香港メディアのブースはラム香港貿易発展局会長が創設した制作スタジオのメディア・アジア・エンターテインメントが会場の正面入り口に構える一方、これまで会場を盛り上げていた香港最大手の民放テレビ局TVBは今回ブースを大幅に縮小したのが印象的だった。「VIPラウンジブース」をスポンサードするかたちで香港フィルマートの活用を変えていた。また生成AIによる映像制作を紹介したバプティスト大学やバーチャル・プロダクション・スタジオの開設を発表した香港デザイン学院など香港教育機関による大型出展は新たな動きとなった。

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さらに香港拠点のクリエイティブ・テック企業Votion Studiosによるバーチャル・プロダクション・スタジオが会場内に新設され、リアルタイム生成コンテンツのデモが行われたほか、「香港フィルマート」公式スタジオとして展開された。コンテンツの投資や開発と大きく関わる映像技術の話題も取り入れたアジア発トレードショーとして印象づけていたのではないか。

 「エンターテインメント・パルス」と称された会議シリーズにおいても業界における生成AIの展望を主題としたセッションが積極的に企画された。登壇したiQIYIのバイスプレジデントのチュー・リアン氏は効率化のための生成AIの具体的な活用について説明し、「AI技術はドラマやアニメなど幅広いジャンルのコンテンツ制作の過程を進化させる役割を持つ。現段階ではAIが専門知識を持つ人材の代わりとなることはないが、制作管理からマーケティングに至るまで時間コストの改善に役立っている」と、現状を語った。

またアジア各国の主要プレイヤーが登壇したセッションでも生成AIの話題は続いた。多様な言語のコンテンツに対するニーズが増え、「コンテンツの民主化が起こっている」とも言われるなかで、AI技術が字幕制作や吹き替えの手助けに役立つことを期待する声なども聞かれた。

香港最大手の通信系PCCWグループのインターナショナル配信プラットフォームのViuでコンテンツ購入&開発チーフを務めるマリアンヌ・リー氏はバーチャルプロダクションやAI技術は「制作面でコストを大幅に削減できるメリットがあり、今後のAI技術の向上に期待したい」と述べた上で、「産業界の雇用が奪われるという懸念も拭えない」とも指摘し、「ディストリビューターやプラットフォーム事業者、コンテンツ制作者にとって大事なのは量よりも質。最善の方法でストーリーをどのように伝えるべきか探るなかで、AIや最新映像技術を取り入れ、プレミアムなコンテンツを提供し続けることを重要視したい」と意見を述べた。

 今年の「香港フィルマート」は全体を通じて映画、テレビ、配信コンテンツの国際取引を促進しながら、アジアのエンターテインメント業界のトレンドと今語るべき話題を提供し、マーケットとしての価値を高めたのではないか。

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