Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2024.02.13 UP

【Inter BEE CURATION】生活者に受け入れられる広告―利用デバイスと広告の受容性の関係 (ひと研究所/広告研究シリーズvol.2)

ひと研究所 生活者×広告研究チーム VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

【この記事はこんな方にオススメ!】
✅広告キャンペーンのメディア・プランニングを担当される方
✅メディア・プラットフォーム間の広告効果の違いに興味がある方

【全体の趣旨】
・ テレビデバイスとスマートデバイスで広告の受容性に違いがある
・ その主な要因は、様ざまな時間や場所で利用できるスマートデバイスの特徴にある
・ 広告の受容性を高めるには、生活者のメディア利用状況を考慮した出稿が求められる

1.利用デバイスによる広告の受容性の違い

生活者は様ざまなデバイスを利用してコンテンツに接触しています。デバイス間の広告の受容性の違いやその要因を理解しておくことは、効果的なメディア・プランニングを行うために非常に重要です。前回の記事「生活者に受け入れられる広告―メディア接触モードと広告の受容性の関係」では、メディア利用動機や時間・場所のコントロール意識が高い状況では、広告の侵入感が増加して、広告の受容性が低下することを確認しました(図1)。今回はこの関係にデバイスの視点を加え、コンテンツに接触する際の利用デバイスの違いが広告の受容性に及ぼす影響を検証していきます。

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【図1】前回の記事で明らかになった関係

分析に利用するデータは前回と同じ「ひと研究所 広告研究調査2023年7月」のデータです。この調査では以下のメディア・デバイスに関するデータを取得しています(本記事の末尾の調査概要を参照)。

☑ テレビ番組のテレビ画面での視聴
☑ 動画共有サイトのスマホやタブレットでの視聴
☑ 動画共有サイトのテレビ画面での視聴
☑ テレビ番組配信のスマホやタブレットでの視聴
☑ テレビ番組配信のテレビ画面での視聴
☑ SNSのスマホやタブレットでの利用
☑ ニュースサイト・アプリのスマホやタブレットでの利用
☑ GoogleやYahoo!検索のスマホやタブレットでの利用

今回はこれらのうち、
☑ 動画共有サイトのテレビ画面での視聴
☑ テレビ番組配信のテレビ画面での視聴
をテレビデバイスでの視聴、

☑ 動画共有サイトのスマホやタブレットでの視聴
☑ テレビ番組配信のスマホやタブレットでの視聴
をスマートデバイスでの視聴とし、
両者で広告の侵入感や広告の受容性に差が生じるのかを分析していきます。なお、デバイス以外の条件を統一するため、
☑ テレビ番組のテレビ画面での視聴
はテレビデバイスでの視聴に含まないことにします。

まず、「広告の侵入感」と「広告の受容性」のスコアを確認します【図2】 。それぞれの指標の定義は下記のとおりです。

広告の侵入感:以下の3項目のTOP2ボックス(とてもそう思う+そう思う)
● 広告が煩わしく感じる
● 広告で注意をそがれる
● 広告が目障りに感じる

広告の受容性:100%から以下の項目のTOP2ボックス(とてもそう思う+そう思う)を引いた値
● 広告をスキップしたい、無視したい、避けたいと思う

※各項目は7段階で測定

調査では1人の回答者が複数のメディア・デバイスについて回答していますが、【図2】ではテレビデバイスでの視聴(延べ471の回答データ)とスマートデバイスでの視聴(延べ795の回答データ)のそれぞれを合算して集計しています。
「広告の侵入感」の3項目のスコアを見ると、テレビデバイスはスマートデバイスよりもやや低いことがわかります。また、「広告の受容性」はテレビデバイスがスマートデバイスをやや上回っています。つまり、スマートデバイスと比較して、テレビデバイスの方が広告の侵入感がやや低く、広告の受容性が高いということです。

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【図2】広告の侵入感と受容性のデバイス間比較

2.デバイス間の広告の受容性の違いは、時間や場所のコントロール意識の影響が大きい

次に、テレビデバイスの広告の受容性がスマートデバイスよりも高い理由を確認します。【図3】は、メディア接触モードと広告の受容性の関係を表現したものです。まず、図の4象限について説明すると、横軸はメディア接触モードのうちメディア利用動機の強さを表しており、7段階尺度で測定した
● 内容を集中してみる
● 内容について考えながらみる
の2項目を回答者ごとに合計し、合計スコアが平均値より高いか低いかで回答者を2つに分類したものです。縦軸はメディア接触モードのうち時間や場所のコントロール意識を表しており、7段階尺度で測定した
● 好きな時間に楽しめる
● 好きな場所で楽しめる
● 誰にも邪魔されずに楽しめる
の3項目を回答者ごとに合計し、合計スコアが平均値より高いか低いかで回答者を2つに分類したものです。また、各象限内の数値は各象限における広告の受容性と回答者の構成比(ボリューム)を表しています。

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【図3】メディア接触モードと広告の受容性

結果を見ると、テレビデバイス、スマートデバイスともに、右上の象限(メディア利用の動機と時間や場所のコントロール意識がともに高い回答者)で広告の受容性が最も低いことがわかります。また、テレビデバイス、スマートデバイスともに、上の2象限(時間や場所のコントロール意識が高い回答者)の方が下の2象限(時間や場所のコントロール意識が低い回答者)よりも広告の受容性が低いですが、その差はスマートデバイスでより大きくなっています。
次に各象限の構成比を確認すると、テレビデバイスとスマートデバイスでかなり傾向が異なることがみて取れます。具体的には、テレビデバイスでは左下の象限(メディア利用の動機と時間や場所のコントロール意識がともに低い回答者)の構成比が最も高い一方、スマートデバイスでは右上の象限(メディア利用の動機と時間や場所のコントロール意識がともに高い回答者)の構成比が最も高くなっています。加えて、スマートデバイスの左上の象限(時間や場所のコントロール意識のみが高い回答者)の構成比がテレビデバイスのそれよりもかなり高いことも特徴的です。これは、テレビデバイスでの視聴よりもスマートデバイスの視聴の方が時間や場所のコントロール意識が高いことを表しています。
時間や場所のコントロール意識が高い状況では、広告の受容性が低くなるというのは先ほど述べたとおりです。この傾向は特にスマートデバイスで顕著でした。従って、広告の受容性がテレビデバイスの方が高くなるのは、スマートデバイスでの視聴の方が時間や場所のコントロール意識が高いためといえそうです。時間や場所に縛られず様ざまなシチュエーションで利用できるというスマートデバイスの特性が、広告効果に悪影響を及ぼす可能性があるということです。

3.スマートデバイスでの広告の受容性をより高めるために

では、時間や場所のコントロール意識が高い状況で広告の受容性を高めるにはどうすればよいでしょうか。ここでは、時間や場所のコントロール意識が高い人の「広告を不快に思う理由」のフリーアンサーをいくつか確認してみます。

・ 隙間時間に早く見たいのに、広告がスキップできないと時間ロスになる
・ 自分だけの空間に入ってくる異物のように感じる
・ 音楽を楽しんでいるときに広告が流れて楽しみを邪魔される
・ ながら聴きなどをしている場合にいちいち手を止めなければならない

「隙間時間を効率よく使いたい」、「自分の時間をゆっくり楽しみたい」というメディア利用のニーズに対して、それを阻害する広告への不快感がうかがえます。時間や場所のコントロール意識が高い状況で広告への不快感を低減させることは簡単なことではないかもしれません。しかし、広告自体をコンテンツの一部として楽しめるようにする、広告表示を柔軟に制御できるようにするなど、生活者の広告視聴体験をより快適にする工夫が重要になりそうです。

今回は視聴デバイス間の広告の受容性の違いを分析しました。広告の受容性はテレビデバイスよりもスマートデバイスの方がやや低いという結果になりましたが、その背景には様ざまなシチュエーションで柔軟に利用できるというスマートデバイスの特性が影響していそうです。この分析結果は、メディア・プランニングを行う際に配慮すべき重要な知見だと考えられます。
ひと研究所では、引き続き広告の侵入感や広告の受容性の概念に注目し、効果的なメディア・プランニングに繋がる知見の抽出に取り組んでいきたいと考えています。

【ひと研究所 広告研究調査2023年7月 調査概要】
調査日 :2023年7月21日(金)~7月22日(土)
調査手法 :web調査
調査エリア :全国
サンプルサイズ :828
対象者属性 :男女15~69歳(なるべく均等になるように回収)
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