【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】基調講演「ネットとテレビの境目からテレビの未来を語る」~境界線からの愛がテレビを救う~

2018.12.18 UP

左からドワンゴ吉川氏、バスキュール朴氏、8bitNews堀氏

左からドワンゴ吉川氏、バスキュール朴氏、8bitNews堀氏

朴氏はデジタルを活用し「データテインメント」に取り組んでいる

朴氏はデジタルを活用し「データテインメント」に取り組んでいる

堀氏は「パブリックアクセス」の定着を目指しさまざまなメディアと連携

堀氏は「パブリックアクセス」の定着を目指しさまざまなメディアと連携

会期初日の11月14日、INTER BEE CONNECTEDの基調講演「ネットとテレビの境目からテレビの未来を語る」が国際会議場で開かれた。「境目」という言葉は、登壇者がテレビに出自を持ちながらネットの世界に飛び出して活動していることを指している。ネットとテレビの文化の違いを肌で知る彼らに共通しているのはテレビへの「愛」だった。(関根禎嘉)

モデレーターの塚本幹夫氏は長くフジテレビに勤務し、現在はメディアストラテジストとして活動する一方またアプリ開発会社・フラーの監査役も務める。吉川圭三氏は日本テレビからドワンゴに移り、ニコニコ動画のドキュメンタリー番組のエグゼクティブプロデューサーを務めている。朴正義氏はバスキュールの代表取締役として、テレビを舞台に新たなクリエイティブな表現を展開している。この中では最もネット寄りの人物だ。NHKアナウンサーを経てNPO法人・8bitNewsでニュースメディアの運営、株式会社ガーデンでNPO団体の資金調達に関わる堀潤氏は、最もこの「境目」を象徴する人物かもしれない。

 各氏が自らのキャリアと現在の取り組みを紹介した後、議論はテレビとネットの文化の違いに進む。吉川氏は「テレビは会議に20人、15人でやる。ネットの場合はせいぜい4人。一人がいろんな役割をする。テレビの場合はとにかく人が多い。これがカルチャーの違い」と述べる。人の少なさに加え、堀氏も「人のかかわる数の少なさは大事なポイント」と同調する。「AbemaTVも(dTVチャンネルの)NewsXも意思決定がとにかく早い。NHKは自由なことをやらせてもらえてもらったが、怒られるのは自分だけじゃない。(AbemaTVは)番組を作っているのはテレビの人。そこに新しい技術の融合がある」(堀氏)
 朴氏は、テレビとネットの違いを「枠」だと言う。「テレビは限られた枠の中でCM単価を上げるビジネス。そのスキルは枠の外で使えるのにもったいない。みんな優秀だし生放送はスピードもめちゃくちゃ早い」とテレビマンを評価する一方、「決められていないこと、ビジネスの外側に出ることは遅いどころか何もしない」と辛口の批判も。「CM出稿が減るなかで対策する人が少ない」と、民放のビジネスの根幹部分への疑問を呈する。

 塚本氏の心配は、若いテレビマンが目的を持てるかどうかにある。吉川氏は特色のある番組が少なくなったと嘆く。「『あの番組みたいな企画書書いてよ』と編成に言われたら嫌になる」と、同じような番組が増えている現実に危機を隠さない。
 堀氏は、この背景に作る側と見る側の共犯関係があると指摘。「災害報道も、同じ場所を繰り返して報道していると『なぜ自分のところはやってくれないのか』と不満になる。そこでオーダーメイド取材といって、災害のときは(番組の)LINEのIDを開放して映像を送ってきてもらう。それがYahoo!トピックスに乗り、ほかのメディアでも取材する」と、ネットを活用した取材手法を駆使することでメディアのミスマッチを乗り越えることを期待する。

 テレビ局やテレビマンはまだまだ能力はある中で、安易な発想が内部崩壊を招いてしまうのではないかと塚本氏はここまでの議論をまとめ、パネリストにテレビ業界のベテラン・若手双方に向けてのメッセージを求めた。
吉川氏は「テレビの波及力はとてつもない。こんな成功したインフラはかつてない」とテレビの力を強調。その一方で「若いヤツは好奇心があるが、テレビだけはマネしないでほしいと言っている」と続ける。「小説、映画、アニメでもなんでもいいが、そこから(発想して)企画書を持ってこいと言う」(吉川氏)
 朴氏のメッセージは「テレビを作っている人のミッションはどこにあるのかが伝わりづらい。ドラマは正直Netflixに勝てない」とさらに辛口だ。「ビジネスモデルを変えない限り無理だが、テレビの人はビジネスモデルを変えない」と厳しい指摘。しかし、テレビの強みを「社会的つながりがあるとネットを使いこなせるが、そこからこぼれ落ちる人がテレビで救える」と、テレビの持つ“パブリック”の側面を強調して表現。「テレビ業界には才能豊かな人が入っているので、超難しいお題をぶつけたほうがいい」と叱咤激励する。
 堀氏は、「新しいパブリックのためにはインタラクティブが大事。視聴者が操縦桿を握れるかどうかを心がけた発信をしている」と、新たなビジョンを示しながら、「テレビは誰も見たことのないものをみせるのが大事」と原点回帰を同時に説く。その上で「ブルーオーシャンはまだまだある」と、自ら表現のフィールドを広げていくことが大切だと前向きなメッセージを送る。

 塚本氏は、「(登壇者に)共通しているのはテレビ愛」と総括。「テレビ愛のもとに、管理職でも若い人でも話し合うことでテレビが活性化するのではないか」と、キャリアを超えた自由闊達な議論がテレビの未来を作ると期待を示し、基調講演を締めくくった。

左からドワンゴ吉川氏、バスキュール朴氏、8bitNews堀氏

左からドワンゴ吉川氏、バスキュール朴氏、8bitNews堀氏

朴氏はデジタルを活用し「データテインメント」に取り組んでいる

朴氏はデジタルを活用し「データテインメント」に取り組んでいる

堀氏は「パブリックアクセス」の定着を目指しさまざまなメディアと連携

堀氏は「パブリックアクセス」の定着を目指しさまざまなメディアと連携