【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】「ローカルコンテンツ×持続力のある地域創生」〜地域のバイブルとなる番組とは〜

2018.12.14 UP

ラジオドラマが映画になった「ソローキンの見た桜」

ラジオドラマが映画になった「ソローキンの見た桜」

「おへんろ。」は実写とアニメを合成したユニークな番組だ

「おへんろ。」は実写とアニメを合成したユニークな番組だ

「バイブル」はこのセッションのキーワードだ

「バイブル」はこのセッションのキーワードだ

2018年のINTER BEE CONNECTED の最終日11月16日の最後2つのセッションは関連性の強い企画だった。いずれも主にローカル局の今後を考えていく上で非常に参考になる内容だ。ここではそのうち、13:30から先に行われた「ローカルコンテンツ×持続力のある地域創生」と題したセッションを紹介する。地域にとってコンテンツがいかに重要なものであり、ローカル局がその中で果たすべき役割が見えてきた。人口減少社会に向かう日本にとっての放送局の存在意義も感じられるものだった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境治)

まずモデレーターのNHK放送文化研究所 吉川邦夫氏がこのセッションの趣旨を説明。吉川氏はドラマ部の経験が長く、朝ドラや大河ドラマを制作する中で地域にとってドラマがいかに重要かを見てきた。舞台となった地域の人びとがドラマをうまく地域創生に活用することで、観光や住民の盛り上げに役立った事例が数多くあったという。その地域に人を呼び活性化させる可能性が、テレビ局のコンテンツにはあるのだ。

それを受けて最初に南海放送の取締役専務執行役員 大西康司氏がプレゼン。ラテ兼営の同局は長年、地域コンテンツの制作に取り組んできたという。例えば「書道パフォーマンス甲子園」は、愛媛県立三島高校書道部のパフォーマンスを取材したディレクターが地域や学校とともに番組作りを通して全国的な大会に育て上げた。2008年の第1回はわずか3校の参加だったのが2018年の第11回は全国から105校が参加するイベントになったそうだ。またオリジナルのラジオドラマ制作にも長期的に取り組み、「坊ちゃん」の物語を広げた1985年の「赤シャツの逆襲」は2017年にテレビドラマとしてリメイクした。日露戦争の時代を舞台にした2004年の「ソローキンの見た桜」は映画化作品として現在制作中、2019年3月の全国公開を目指しているという。まさに愛媛に根ざし愛媛を活性化する地域創生コンテンツを次々に発信する南海放送の活動は注目すべきだろう。

次に北海道放送の制作部副部長 後藤一也氏が「橋本奈々未の恋する文学」についてプレゼンした。橋本奈々未は北海道出身の乃木坂46のメンバーで、文学好きでも知られている。「恋する文学」は、彼女が小説の舞台となった北海道の各地を巡りながら、時にその小説の主人公を演じるドラマもある「ドキュメンタリー×フィクション」形式のユニークな番組だ。制作費が確保しにくい中、後藤氏が一人でプロデューサー・監督・脚本を兼任しプロモーションやリクープ策も背負って制作した。番組は2シーズン11回北海道で放送したのちBlu-ray/DVDを発売し1万5000枚売れ各ランキングで1位を獲得、賞も受賞し目標を超える売上を達成できた。橋本奈々未ファンも高く評価してくれ、SNSで「恋する文学神すぎる」などのコメントがあった。聖地巡礼や中国人のインバウンド効果ももたらし様々に波及したという。クオリティの高いコンテンツを作ることの効果が感じられたそうだ。

最後にプレゼンしたのは高知さんさんテレビの常務取締役 植田昌之氏。「おへんろ。八十八歩記」のユニークな事例を紹介した。2014年に四国八十八ヶ所霊場開創1200年を迎えたのを機に、お遍路さんにちなんだコンテンツの企画を岡山放送、テレビ愛媛と高知さんさんの3者で悩んでいたところ徳島にスタジオを持つアニメ制作会社ufotableと出会い、実写映像にアニメキャラクターを合成する「おへんろ。」の制作に至ったという。放送後もGYAOをはじめとしたネット配信や海外販売などでも展開され、四国遍路の活性化に一役かった。「定年間際の私が」と朴訥に語る植田氏のキャラクターも含めて、非常に思いの伝わるプレゼンだった。

後半は三者の事例をベースにディスカッションが行われた。様々な議論が出た中で印象的だったのが、吉川氏が示したスライドにあった「地域の泉を見いだし、地域のバイブルを生み出すこと」という一文だ。きらびやかな風景や歴史ある建造物がなければ地域が活性化できないわけでは決してない。それぞれの地域には掘り起こせば湧き出す「泉」が眠っており、それを見いだしてコンテンツとして形にする、そんな可能性はどの地域にもあるのだ。そのコンテンツが「バイブル」として地域で大切にされれば、地域創生に貢献できる。その役割はローカル局が担えるはずだし、それができる人材はそれぞれの局にいるはずなのだ。地域の中での放送局の役割を見直す機会としても、非常に価値あるセッションになった。

ラジオドラマが映画になった「ソローキンの見た桜」

ラジオドラマが映画になった「ソローキンの見た桜」

「おへんろ。」は実写とアニメを合成したユニークな番組だ

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「バイブル」はこのセッションのキーワードだ

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#interbee2018

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