【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】「ショート動画はテレビ局の次の主戦場になるか?」~テレビ番組のショート動画から早くもヒット事例あり~

2018.12.14 UP

右肩上がりに伸びる動画広告市場

右肩上がりに伸びる動画広告市場

「NHK 1.5ch」のヒット事例。さまざまなジャンルの動画が国内外で再生されている

「NHK 1.5ch」のヒット事例。さまざまなジャンルの動画が国内外で再生されている

SNSを中心にインターネット上にショート動画が溢れている。多くの企業が参入し、テレビ局もこの新たな分野に取り組み始めている。そんななか、ショート動画に注目したセッションがINTER BEE CONNECTED で企画された。NHKと日本テレビ、フジテレビの3社が登壇し、「ショート動画はテレビ局の次の主戦場になるか?」をテーマに各社が現状と可能性を語った。
(テレビ業界ジャーナリスト/長谷川朋子)

テレビ局が取り組む事業のなかでも、ショート動画事業は比較的新しい分野である。日々研究と開発を重ねているエキスパート陣である「NHK 1.5ch」を担当するNHK制作局 エグゼクティブプロデューサー 田中端人氏と、オールアバウトと日本テレビが共同出資する動画サービス「チルテレ」担当者の日本テレビ ICT戦略本部 原浩生氏、バーティカルメディアなどに早くから着目しているフジテレビ コンテンツ事業室 橋本英明氏の3人がパネリストに並んだ。

進行はHAROiD代表取締役社長の安藤聖泰氏が務めた。はじめにショート動画の定義を示し、「カジュアルにスマホで視聴できる動画であって、自社のサイトだけでなく、SNSなど複数のチャンネルを通じて拡散して配信されるものがショート動画。テレビ番組と比較すると、尺が短い動画という考え方もあるが、結果的に短尺になっているものと捉えていただきたい」と説明した。またショート動画にテレビ局が参入している理由のひとつに「動画広告市場の伸び」を挙げた。来年には動画広告市場は2000億円を突破、2023年には約3500億円に広がることが予想されている。

NHKは昨年3月からショート動画サービス「NHK 1.5ch 」を開始した。NHKの放送番組をベースに、情報やアイデアの部分などを切り出してショート動画を提供している。早くもヒット作も生まれ、『蚊を引き寄せる原因 16歳の高校生が世界的発見』(2017年7月5日配信)は411万再生、国内外合計1800万再生を記録したという。また台湾やインドなど海外でヒットした動画もあり、「地上波の番組とは異なる視聴者層にもリーチする。コンテンツを観てもらうきっかけを作り出している」と田中氏が語った。

また2018年4月からスタートした「チルテレ」はミレニアム世代向けに様々なジャンルの専門家であるインフルエンサーと共に発信しているメディアになる。原氏は「スタート当初はネット上でテレビ番組を面白くみせようとしたが、軸足をネットの世界に置きながら、そのなかでテレビとの連携を考えることが大事であることにやりながら気づいた」と説明した。現在、実験的にテレビと連動したコンテンツや、ユーチューバー的なコンテンツなど、多種多様なコンテンツを揃え、サービス展開している。

そもそもなぜ、テレビ局はショート動画施策に取り組んでいるのか。そんな疑問を安藤氏がパネリストに投げかけた。チャレンジ予算内で「食・料理」に特化したバーティカルメディア「ビデリシャス」を展開した経験もある橋本氏は「今、若い世代はテレビを観ない。だから、テレビを使って自社の新しいメディアを宣伝しても意味がない。我々からアプローチし、接点を作る必要があるから、取り組んでいる。ショート動画にはこれまでにない新しい表現の仕方があるのも面白い。アメリカの新興メディアが取り組んでいるように、プラットフォームに最適化した動画を提供することが大事だと思う」と答えた。

またNHK田中氏は「NHKの目的は接触者を増やすことにある。ネット上で放送番組を観る時代に備えて、回路を作っていきたい」と説明し、続けて「NHKがこんなに大量の番組を流していることに気づかなかった。テレビは流して見逃されて終わっていた。それが新しい発見だった。だから、ショート動画を通じて、番組をもっと届けていく必要がある」と述べた。

スタートアップ企業との連携の必要性やテレビ局が提供するショート動画の価値についても意見交換が続いた。最後に安藤氏は「ショート動画は収益化できる可能性もありそうだ。ネットは新しい領域としてこれからも期待できるもの。テレビ業界がもっと踏み込んでいくべき分野だ」とまとめた。

右肩上がりに伸びる動画広告市場

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「NHK 1.5ch」のヒット事例。さまざまなジャンルの動画が国内外で再生されている

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