【Inter BEE 2018】「ICTを活用する放送のユニバーサルデザイン~リアルタイムで伝えるセカンドスクリーン字幕~」ヤマハ、マルチスクリーン放送協議会による技術提案

2018.10.2 UP

昨年12月に総務省が発表した「視聴覚障害者等向け放送に関する研究会 報告書」のセカンドスクリーンのイメージ図
Sound UDコンソーシアムの活動概念図

Sound UDコンソーシアムの活動概念図

聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐユニバーサルデザインアドバイザーの松森果林氏

聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐユニバーサルデザインアドバイザーの松森果林氏

 Inter BEE 2018の会期二日目、11月15日(木)の午前中(10:15〜12:00)に、幕張メッセ国際会議室で開催する「ICTを活用する放送のユニバーサルデザイン〜リアルタイムで伝えるセカンドスクリーン字幕~」は、総務省が今年2月に発表した「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」に関して、総務省 情報流通行政局 地上放送課長の三田一博氏による講演のほか、ヤマハ、マルチスクリーン放送協議会による技術提案、ユニバーサルデザインアドバイザーである松森果林氏による講演がある。
(上写真=昨年12月に総務省が発表した「視聴覚障害者等向け放送に関する研究会 報告書」のセカンドスクリーンのイメージ図 出典:総務省発表資料「視聴覚障害者等向け放送に関する研究会報告書」)

■2027年までに字幕付与率向上の目標設定
 「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」は、テレビ番組を制作する際、聴覚障害者に対して、内容を説明するための文字等をできる限り多く設けるように規定した「放送法第4条第2項」等を踏まえたもの。「放送分野における情報アクセシビリティの向上を図るため、字幕放送、解説放送及び手話放送の普及目標を定める」(指針より)としている。
 具体的には、2027年までにテレビ番組の字幕付与率を高めることとしており、NHKと民放広域局は対象番組の100%、県域局は80%以上、解説放送はNHKが対象番組の15%以上、民放広域局は15%以上、県域局は10%以上を目標にしている。
 10年ごとに新たな方向性が示される指針の中で今回新たに加わった要素の一つとして、「新技術の積極的活用等により、視聴覚障害者等の情報アクセス機会の一層の確保を図ること」とあり、ITの活用が求められている。総務省では、新たな試みとしてリアルタイムで伝えるセカンドスクリーン字幕についての実証実験に取り組む。

■情報ギャップの発生と解消を検証
 講演では、冒頭で「聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐユニバーサルデザインアドバイザー」の松森果林氏が「聞こえる世界から聞こえない世界へ移り住んで、放送に求めること」と題した講演をし、続いて、総務省 情報流通行政局 地上放送課長の三田一博氏が「新たな視聴覚障害者等への放送と新行政指針について」と題した講演を予定している。松森氏は、手話通訳に関連する仕事をする傍ら、アドバイザーとして、聞こえない人にとっての情報ギャップやコミュニケーションギャップが生活のどういう場面で発生するかなどについて、アドバイスするほか、メディアやエンターテインメントなど文化的な場面についての検証も行っている。

■ヤマハ Sound UDの活用を提案
 ヤマハと、マルチスクリーン放送協議会からは、提案とデモを実施する。
 ヤマハが提案、デモするSound UDは、2017年にヤマハが提唱した音響通信の規格。SoundUD推進コンソーシアムには現在すでに、240社以上が加入している。対応する音響機器やサービス、アプリの導入を希望する施設や施設利用者が容易に確認・把握できるためのロゴやピクトグラムが用意されている。 音響通信の共通規格化により、機器やソフト間の相互接続性が保証されている。

 SoundUD対応スポットは、空港、交通機関、ショッピングなど広がりを見せつつあり、公共アナウンスや観光地のガイダンス、テレビやラジオの音声で、聴覚障害者向けの解説や、多言語対応、文字情報表示など、音のユニバーサルデザインを実現できる。受信用アプリケーションの中にあらかじめデータを収載しておくことによって、インターネット回線を必要とせずに通信できることから、災害時などに効果を発揮するとも期待されている。

 ヤマハ クラウドビジネス推進部 SoundUDグループの森口翔太氏は「活動を開始した2015年当初はまず、街中のアナウンスからスタートした。今回、放送の世界でも字幕の支援をする形で、我々の『音を文字化する技術』が活用できるのではないかと提案させていただく。耳の不自由な方にも不安のない社会になっていくことに貢献できればと思っている」とねらいを話す。

■マル研 番組制作の立場から提案
 マルチスクリーン放送協議会(マル研)は、2013年に在阪民放5社により設立され現在、全国62局が参加しており、さらに広告代理店、映画、テレビ関係企業などを含め、会員数は90社近い。セカンドスクリーンサービスなど、放送と通信が連携したシステム、サービスの企画、技術開発などを行っている。番組連動型の情報提供アプリ「Sync Cast」(2017年9月にサービス終了)など、放送局で実際に導入実績のあるアプリも提供している。今回の技術提案でも、テレビ番組制作の立場からアプローチしている。

 マル研で運営会のリーダーを務める テレビ大阪株式会社・経営戦略局メディア戦略部の西井正信氏は「進歩を続けるITをテレビで取り入れ、新しいサービスやビジネスができるのではないか。放送局どうしは、視聴率による競争をする面もあるが、「字幕を増やす」という点で、一致協力してやった方がいいだろうと考えている。現状で、放送は耳の不自由な方に十分な提供をするための途上にある。特に、ローカル局では、リソースの面でも課題がある。ITで、効率的に放送局が伝えたいと思っていることを、耳の不自由な方にもお届けできればと思う」と話した。

■新技術の導入で生まれる可能性を探る
 全体進行を担当するニューメディア 出版局長の吉井勇氏は、講演のねらいについて、次のように説明する。
 「10年ぶりに総務省がまとめた行政指針の内容をお伝えするとともに、今後、新技術を取り込むことでどういう可能性があるのか、という面についても検討していきたい。また、このような取り組みを必要とする当事者にも登壇してもらい『放送に求めること』を率直に話してもらう予定だ。当事者や家族、放送局、プロダクション、ネットワーク技術、IT技術開発、マーケティング、AI開発など、さまざまな立場の人が集まって互いに考える場にしてもらいたい」(吉井氏)

Sound UDコンソーシアムの活動概念図

Sound UDコンソーシアムの活動概念図

聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐユニバーサルデザインアドバイザーの松森果林氏

聞こえる世界と聞こえない世界をつなぐユニバーサルデザインアドバイザーの松森果林氏

#interbee2019

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