【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】「テレビ局発のSVODサービスはどこに向かうのか?」~各社の成長戦略と差別化~
2018.12.13 UP
米大手配信事業者運営のSVODサービスは今後も成長路線にある
国内で展開されている主要配信事業者のスマホアプリMAU数の比較ではAmazonが圧勝に
民放各社が参入するSVODサービスに注目したセッションが2018年のINTER BEE CONNECTED で企画された。フジテレビが総力戦でコンテンツ群を並べる「FOD」と、TBS、テレビ東京、WOWOWら6社強力タッグによる「Paravi」、ブランド力を誇る日本テレビ傘下の「Hulu」の3社が登壇し、「テレビ局発のSVODサービスはどこに向かうのか?」をテーマに各社が成長戦略を語った。
(テレビ業界ジャーナリスト/長谷川朋子)
テレビ局発のSVODサービスを代表する3社がINTER BEE CONNECTEDに集結した。パネリストには「FOD」を運営するフジテレビ コンテンツ事業室 野村和生氏、「Paravi」を運営するプレミアム・プラトフォーム・ジャパン チーフ・プロデューサー 高澤宏昌氏、「Hulu」を運営するHJホールディングス取締役編成部部長 高谷和男氏が並んだ。
進行を務めたメディアストラテジスト 塚本幹夫氏は冒頭、NetflixやAmazonが勢力を振るう世界のSVODサービス事情を紹介した。来年はディズニーをはじめ、AT&T傘下になったワーナーメディアやアップルもSVODサービスに着手する。アップルについては2022年までにオリジナルコンテンツに制作費42億円(日本円で約5000億円)を投じる計画なども報じられている。塚本氏が提示したデータによると、「米大手Netflix、Amazon、Hulu、YouTube各社のユーザー数は成長路線にあり、今後も伸長が続く傾向にある」という。そんななか、日本の民放各社が進めているSVODサービス戦略が紹介された。
野村氏は「FOD」の特長を「何でもアリなサービス」と説明した。現在放送中の番組を無料配信する「ADVOD」から、映画新作など配信する都度課金型の「TVOD」、CSチャンネル「フジテレビONE・TWO・NEXT」を同時再送信するライブ配信、約5万タイトルを有する電子書籍サービスまで網羅。そのなかで、フジテレビ制作の名作ドラマやバラエティを独占見放題で配信するSVODサービスとして「FODプレミアム」を展開している。開始した当初からオリジナルコンテンツに力を入れ、昨年は連続ドラマのタイトル数が12作品に上った。またスマートテレビ対応も開始し、野村氏は「テレビ端末の視聴時間はスマホ、PCの3倍に上ったことがわかった。改めてテレビの可能性を感じた」と話していた。
今年4月からサービス開始した「Paravi」はSVODサービスを中心に現在展開している。TBSとテレビ東京で放送中のドラマやバラエティ番組を独占で見逃し配信できることが最大の強みだ。高澤氏は「開始から7か月が経過したところ。ライブ配信なども試み、日々チャレンジだ。数字については非公開だが、7月以降、非常に伸びている。毎日使ってもらえるようなサービスを目指している」と説明した。また視聴動向が変化するなか、自ら伝送路を持つことによって、これまでできなかったマーケティング分析ができることにもメリットを感じているという。
Huluの有料会員数は約170万件に上る。高谷氏は「堅調に順調に会員数を伸ばしているが、昨年5月のリニューアルの際にトラブルを経験し、会員数を伸ばすことよりも、むしろ既存の会員に長く使ってもらえることを重要視するようになった」と話す。その戦略のひとつが海外ドラマの投資強化。会員の75%が海外ドラマを積極視聴していることから、海外ドラマファンに向けたラインナップも充実させているという。また日本テレビとの連携したプロモーションやクオリティ重視のオリジナルドラマ制作にも力を入れている。HBOアジアと共同制作したドラマ『ミス・シャーロック』は海外市場でも成功を収めた。2019年以降もグローバルを視野に入れたドラマ企画を進めていく。
日本国内で展開されているSVODサービスのなかで、月間アクティブユーザー数はAmazonが圧勝の状態。外資系参入によりサービス終了を余儀なくされたケースも見られる。そんななか、高谷氏から「SVODサービスに取り組む以上、放送局の一事業としてだけで考えるべきではない」と、力強い発言もあった。発展を続けていくためのヒントを探る議論は続いた。
米大手配信事業者運営のSVODサービスは今後も成長路線にある
国内で展開されている主要配信事業者のスマホアプリMAU数の比較ではAmazonが圧勝に