私が見た"NAB SHOW 2013"における技術動向(その4)制作系、伝送配信系、符号化技術編

2013.5.2 UP

多種多彩な制作システム公開(グラスバレー)
Enterprise sQシステム(クオンテル)

Enterprise sQシステム(クオンテル)

AVC Ultra 4K映像の表示 (パナソニック)

AVC Ultra 4K映像の表示 (パナソニック)

ハイスピードIPビデオシステム(NTT グループ)

ハイスピードIPビデオシステム(NTT グループ)

HEVCとAVCの画質比較評価(ハーモニック)

HEVCとAVCの画質比較評価(ハーモニック)

 ここまで今回の大きなテーマ4K/8K、多様化しているカメラや映像モニターなどの動向を見てきた。最終回では、放送と通信の連携、新たな映像メディアの展開が進む状況下、ファイルベース化により大きく変わりつつあるコンテンツ制作・配信系、それらをベースで支える符号化技術などの動向を紹介してみたい。

 グラスバレーは今年も広大なブースで”Nonlinear Production”を掲げ多種多彩な制作システムを華麗に公開していた。インテグレーテッド・ノンリニア・ライブプロダクションセンター”GV Director”は、シンプルなタッチスクリーンとスイッチャーボタン、Tバーにより、ライブ制作ワークフローをダイナミックに行えるようになり、新機能追加した次世代アセットマネージメントシステムの”STRATUS”により一層映像制作ワークフローと素材管理がやりやすくなり、ノンリニア編集ソフト”EDIUS”はバージョンアップにより機能が向上し、従来モデルよりコストダウンし 3G-SDIに対応し1080/60pでの制作が可能になった中型ビデオプロダクションセンター”Karrera”に加え、マルチチャンネル対応の総合型送出システム”K2 Edge”やリプレイシステム”K2 Dyno”などをコーナー毎に実演公開していた。またカメラステージには基本性能はそのままに1080iまたは720p専用とし価格ダウンした新モデルの”LDX FLEX”カメラも展示していた。
 隣り合った大きなブースのブラックマジックは、前述の4Kカメラ以外にも制作系や配信系に関する先端的で低価格の様々な機器、システムを展示し評判になっていた。最大8系統の6G-SDI(1本のBNCケーブルで3G、HD、SDを扱える)に対応する 4K映像の独自インタフェース、グラフィックジェネレータも内蔵するライブプロダクションスイッチャー、1Uラックマウントサイズと小型ながら4系統の光ファイバーコンバータを搭載した”Conveter 2”、U-HDTV収録がSSDに記録可能になり前記スイッチャーと整合性が良くなった”Hyper Deck Studio Pro”などを展示していた。例年好評のカラーコレクションの実演は、映画・テレビ業界で使われる様々なソフトウエアとのワークフローと統合する機能が搭載されバージョンアップした”DaVinci Resolve 10”を使い行われていた。このバージョンアップの採用により、他社編集ソフトのFinal Cut Pro、Avid and Premiere Proなどとタイムライン上で自由に移動できるようになる。
 クオンテルは前述のPablo Rioによる4K/8K以外にも、機能向上した最新のソフトウエアや制作システムの実演公開をしていた。ニュース・スポーツ制作向きの簡単かつ高速な制作ワークフロー”Enterprise sQ”、世界のどこにあるサーバの素材でもインターネット経由で扱えるグローバルワークフロー”QTube”、撮影段階で使用できないと思われた素材でも精密に調整し救うことができる3D映像調整システム”SynthIA” などを大画面を使いデモしていた。オートデスクは例年より小振りになったシアターで、ハイエンドのVFXシステム”Flame Premium”や映像編集フィニッシングソフトウエアの最新版”Smoke”による実演とユーザーの事例紹介をやっていた。また各コーナーではプロ向け3DCGソリューションAutodesk Maya、Autodesk 3ds Max、Autodesk Softimageの最新情報も公開していた。

 ソニーは高品質化、多様化するコンテンツ制作に応える新たなソリューションとして、拡張性あるフォーマットとして効率的で即時性があり、オープンフォーマットのXAVCを提唱しており、既にクオンテル、グラスバレー、アストロデザインなど世界各国の30数社の賛同が得られているそうだ。今回、利用範囲をさらに広げるべく、XAVC Intraに加えLong GOP(4K4.2.0およびHD4.2.2)を、さらに民生部門用にMP4ファイルを採用するXAVC Sをも追加することにより、4Kの世界をさらに広げHDから民生部門まで、Workflow Innovationに大きく寄与して行く戦略だそうで、そのコンセプトに添う様々なシステムの実演公開を行なっていた。
 一方、パナソニックも映像符号化の新体系として幅広い用途に使用可能なAVC Ultraを提唱している。最上位は4K放送やデジタルシネマを視野に入れたAVC-IntraClass4:4:4、現行放送マスター用AVC-Intra Class 200やNews用フルHD のClass100とClass50(1440×1080)、またコストパフォーマンスが良いLong GOP、さらには低ビットのAVC-Proxyもファミリーになる。これら各フォーマットの映像を表示しそれぞれの画質の違いを比較・評価させていた。
 朋栄は前述した4K対応以外にも数々の特徴ある制作用機器、システムの展示をしていた。ファイルベース時代に必須となっており機能および容量をアップしたSSDサーバ、機能を追加したノンリニア編集系、アーカイブ用LTOサーバ、HD/SD混在の高精細マルチビュア、多目的・多機能映像プロセッサー、HD/SD用のフレームレートコンバーター、ビデオスタビライザーや高機能カラーコレクターなど多種多彩な展示を行っていた。

 デジタル時代において、圧縮符号技術はあらゆる分野の機器、システムを支える基本である。その中で今年標準化された符号化方式HEVC(High Efficiency Video coding) H.265は、Mpeg 2の4倍、H.264 の約2倍の圧縮効率が見込まれると言うことで、放送やネット動画サービスなどのメディア展開、さらに4K/8Kの進展にとっても大きな影響があり、多くの社から関連する様々な技術が出展されていた。

 NTTグループは、放送と通信の連携や高精度化が進む最近のメディア展開に応える多彩なソリューションを提案していた。高効率で安定性が良くU-HDTV、HDモバイル、ライブストリーミング配信に使う4K/HD HEVCリアルタイムエンコーダ、低遅延で高品質ながら低コストのH.264による低遅延コーデック、非圧縮/圧縮の4Kプロセッシングに使える超ハイスピードIPビデオシステム、低遅延リアルタイムH.264コーデックなどを、実際に映像を見せながら公開していた。また同じブースの一郭では、NTTや民放局などが出資し、デジタル移行後のアナログ空き地で昨年からスマフォ向けマルチメディア放送をやっているmmbiも”Nottv”の事業モデルの紹介や視聴端末による実演を公開し評判になっていた。
 富士通はスカパーJSATによるJリーグ戦の4Kライブ中継伝送実験の様子のPRとHD映像によるHEVCとH.264符号化方式の比較評価映像を見せていた。ハーモニックはかなり広いユニークなブースで、コンテンツ制作から配信用に使うエンコーディングやトランスコーダ、昨今のクラウド、マルチスクリーンサービスに関連する様々なソリューションを公開していた。またライブ中継やVODを想定したHEVCとAVCの画質比較評価と今後の符号化技術動向やトレンドについての解説をし、Ultra HD シアターではHEVCでエンコードしたフルHD映像を公開し、コンテンツ制作や配信用の衛星やネット向けに高画質、低遅延で配信する4:2:2、10ビット技術なども見せていた。IPビデオ処理、配信技術のEnvivio(米)は4K伝送やHEVC圧縮技術に関する先進テクノロジーを公開し注目を集めていた。

 以上、4回にわたりNAB2013における技術動向を紹介してきた。11月、幕張メッセで開催されるInter BEEでは、今回NABで見られた多くの技術がさらに完成度を高め、さらに新たに開発されたな技術が見られることを期待したい。

映像技術ジャーナリスト(Ph.D.)石田武久

Enterprise sQシステム(クオンテル)

Enterprise sQシステム(クオンテル)

AVC Ultra 4K映像の表示 (パナソニック)

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ハイスピードIPビデオシステム(NTT グループ)

ハイスピードIPビデオシステム(NTT グループ)

HEVCとAVCの画質比較評価(ハーモニック)

HEVCとAVCの画質比較評価(ハーモニック)

#interbee2019

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