私が見た Inter BEE 2014 動向(その2)テレビカメラ編

2014.12.5 UP

4Kカメラ”EOS C500”と4K対応”CINE-SERVO”レンズ(キヤノン)
ハイエンドの4Kカメラ”Varicam 35”(パナソニック)

ハイエンドの4Kカメラ”Varicam 35”(パナソニック)

3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(日立国際電気)

3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(日立国際電気)

新型4Kカメラ”URSA”(ブラックマジックデザイン)

新型4Kカメラ”URSA”(ブラックマジックデザイン)

初登場の4Kカメラ”CION”(AJA Video Systems)

初登場の4Kカメラ”CION”(AJA Video Systems)

 (その1)では今大会の全体状況とイベント関係の概略を紹介した。(その2)では急速な放送メディアの展開にあわせ進歩しているテレビカメラの動向について紹介してみたい。

 キヤノンは、4Kカメラとしては感度が向上し色域がBT.2020対応となったハイエンドの”EOS C500”とコンパクトな一眼レフカメラ”EOS1D C”を出展していたが、注目機種はHD対応モデルだった。ひとつは従来より性能、機能が大きくアップした”EOS C 100 MarkⅡ” で、830万画素の大判CMOSセンサーに”C 500”と同じディベイヤーアルゴリズムを採用しモワレ発生と粒状性ノイズを軽減し、新映像処理プラットホーム”DIGIC DV 4”を搭載しノイズを抑えつつ高域特性を改善し、さらに”Dual Pixel CMOS AF* ”を標準装備しオートフォーカス機能を向上した。さらにチルト式電子VFとバリアングルの有機ELモニターも装備し操作性も向上した。もうひとつの注目は動画対応のデジタル一眼レフカメラ”7D MarkⅡ”で、約2000万画素、高感度CMOSを採用し、Dual Pixel AFも搭載し、最高画質の静止画とフルHD/60p動画撮影に対応し映画やCM制作などでも活躍できる機種である。主力のレンズ系では、4K対応CINE-SERVO第2弾の”CN20×50 IAS H”シリーズを出展した。世界最長の焦点距離(50~1000mm)と最高倍率、ズーム全域で4K高解像度を実現する高い光学性能を実現し、EFおよびPLマウントが用意され、さらに1.5倍のエクステンダーで焦点距離を望遠端1500mmまで延長することも可能だ。小型軽量な上、様々な通信規格に対応し利便性が高く、従来の放送用レンズと同等の操作性を実現した。ドライブユニットは着脱式で、放送スタイルだけでなくシネマスタイルの運用も可能だ。

 パナソニックの注目のカメラは4Kカメラレコーダ”VARICAM 35”である。スーパー35mm単板MOSを搭載し、高感度、低ノイズ、広い色域とダイナミックレンジで暗部からハイライトまで的確に表現できる。4K/HD対応で120fpsまでのフレームレートが選択でき、映画、CMやドラマ制作をターゲットにしている。モジュラー構造のレコーダはHDモデルの”HS”と共用で、express P2カードを採用しAVC-Ultra、AVC-Intra 4K/2Kに対応し、インカメラ・グレーディング機能を持ち撮影現場でも色調整可能である。その他の4Kカメラとしては、新開発の2/3”4Kセンサーを採用しB4マウントで4K/2K同時出力可能な小型ボックス型マルチパーパスカメラ、4K/60pでSDカードに記録しビットレートを選択できるビデオカメラ”HC-X1000”、また4K./30p動画撮影と共に1カットを切り出し800万画素の静止画撮影にも使える4Kミラーレスデジタル一眼レフカメラ”Lumix GH4U”、さらに4K/30p対応の超小型ウエアラブルカメラである。4Kカメラのラインナップが豊富になり、4Kコンテンツ制作が進みそうだ。

 ソニーはスーパー35mmサイズで新開発の8K CMOS(約2000万画素)を搭載し14ストップのラチチュードと120fpsのハイフレームレートのハイエンドモデルの4Kカメラ”F65 RS”を筆頭に多種多様なカメラを出展していた。最近4K制作の主流機として使われている”F55”は従来のショルダーカムコーダと同等の機動性を発揮するビルドアップキッドと組み合わせ展示していた。また有効画素880万単板CMOSを搭載し4K/60p対応で、HDなら180fpsも可能でXAVC intra/Longに対応しレンズ交換式でコンパクト、機動性が高いメモリーカムコーダの”PXW-FS 7”、 4K/2K RAW出力で240fps撮影も可能でS-Log2ガンマに対応する廉価モデルのNEXカム“FS700RH”、 さらに超小型のHD対応アクションカムコーダなど多彩なカメラを展示していた。 
 池上通信機の注目のカメラはデジタルシネマで実績高いARRIと共同開発した”HDK-97ARRI”で、スーパー35mmCMOSを採用し高感度と広いダイナミックレンジ、高S/Nで優れた階調再現性と高画質のシネマテイストの映像表現が得られる。今回、3G対応ファイバーアダプターとベースステーションに4Kコンバータボードを搭載し超解像技術と組み合わせ、従来からの運用性を損なわずに手軽に4K制作を可能にした。またNHK-ESと共同開発した2.5”サイズの3300万画素、単板CMOS、Dual Green式でPLマウントの8Kカメラ”SHV-8100”も展示していた。カメラ本体とCCU、映像プロセッサで構成され現行HDカメラと同じ光複合カメラケーブルで接続され、9”型VFを装備し操作性、運用性も優れている8Kカメラだ。

 日立国際電気は4Kカメラを初出展した。新開発の2/3”MOSを採用し高解像度、高感度と、独自の光学系により忠実な色再現性を実現した”SK-UHD4000”である。B4マウントを採用し既存のHD用レンズが使えHD制作と同等の操作性で4Kスポーツ中継、スタジオ制作が可能だ。CCUは小型コンパクトで4KとHD同時出力やHD切り出しもでき、HDカメラと混在使用もできる。また同社もNHKと共同開発のハンディ型8Kカメラを展示していたが、既に8Kコンテンツ制作に使われているそうだ。
 JVCケンウッドは4K対応とHD対応カメラを出展した。従来の4Kカメラの後継機”GY-HM200”はF1.2を実現した自社製レンズを搭載したハンドヘルドタイプのカメラレコーダで、H.264フォーマットによりSDHC/SDXCメディアへ記録し、既存のノンリニア編集システムとスムーズに連携できる。またスーパー35
mmセンサーとマイクロフォーサーズマウント搭載のハンドヘルド型カメラレコーダ”GY-LS300”と、分離型で小型ヘリに搭載しての空撮やジンバル撮影などに向いているミニカムも展示していた。HDカメラは、ハンドヘルドタイプのメモリーカードカムコーダ”GY-HM650”と1/3”型220万画素プログレッシブCMOS 3板を搭載し高感度で、20倍ズームレンズを搭載した新型”GY-HM850”を展示していた。これらのカメラには映像ストリーミング用QoSソリューション”Zixi”が実装され安定性高いIP伝送の実演をしていた。

 その他にも興味あるカメラが各社から出展されていた。朋栄のフル4Kハイスピードカメラの新型
”FT-ONE”は従来機種の性能はそのままに大幅に小型化された。また超高感度カメラの最新モデルは、優れた色再現性と解像感を備えた3板式で、最低照度0.003Lxでカラー撮影でき、分光感度特性が広く近赤外照明による特殊撮影も可能である。アストロデザインは2.5”3300万画素CMOS単板を採用した8K 60Pカメラ”AH 4800”を出展していた。縦横12.5cm、奥行15cmと小型で本体重量2Kgと軽くPLマウントを採用、従来のSHVカメラに比べ機動性高く中継や水中撮影などでも威力を発揮しそうだ。
 グラスバレーは3 CMOSセンサーとB4マウントを搭載し、従来のHD放送カメラの運用スタイルのままで4K撮影可能な”LDX UHD”を展示していた。また最新世代の2/3”CMOSを搭載しグローバルシャッター式、B4マウントを採用した6倍速のHD対応”LDX Xtreme Speed”も展示していた。ブラックマジックデザインは、スーパー35mmセンサーを搭載し、グローバルシャッター、12ストップの広いダイナミックレンジで、QFHD/HDの24/30/60pのマルチフォーマット対応で12bit RAWとProResに対応するた4Kカメラ”URSA”を出展した。EF、PL、B4マウントの3タイプあり、本体両側面の5”タッチスクリーンによりカメラの設定ができ、開閉式10”モニターで映像チェックもでき、クルーでもワンマンでも良く、映画、テレビ番組、CMと様々な用途に使える。もうひとつの注目機種は廉価モデルの”Studio Camera”で、小判センサーとマイクロフォーサーズマウントで、軽量、小型で4K、HD対応の2モデルある。AJA Video Systemsは日本初登場となる4Kプロダクションカメラ”CION”を出展した。人間工学に基づき快適性と利便性を重視し設計された小型軽量の4K/U HDおよび2K/HDプロダクションカメラで、最大4K/60pのProRes内部収録と最大4K/120pのRawデータ出力も可能である。

*注釈:1画素を2つのフォトダイオードで構成、1画素から2つの信号を検出し位相差AFを行い高速にピンと合わせを行う


映像技術ジャーナリスト(Ph.D.)石田武久

ハイエンドの4Kカメラ”Varicam 35”(パナソニック)

ハイエンドの4Kカメラ”Varicam 35”(パナソニック)

3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(日立国際電気)

3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(日立国際電気)

新型4Kカメラ”URSA”(ブラックマジックデザイン)

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初登場の4Kカメラ”CION”(AJA Video Systems)

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#interbee2019

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