【Inter BEE 2014】基調講演-6 ブラジル放送技術協会が登壇 南米の放送局における放送のデジタル化の現状と課題を紹介

2014.11.21 UP

ブラジル放送技術協会(SET)会長のオリンピオ・ジョセ・フランコ氏

ブラジル放送技術協会(SET)会長のオリンピオ・ジョセ・フランコ氏

講演風景

講演風景

 ブラジル放送技術協会(SET)会長のオリンピオ・ジョセ・フランコ氏は、Inter BEE 2014会期中の11月21日12時30分から基調講演を行い、南米の放送事業者が直面する課題を説明した。今回は、ブラジル、アルゼンチン、チリについて詳細を説明した。また、周波数再編と移動体通信との周波数共用に係わる問題を指摘し、これは無料放送に関する死活的問題であるとした。
(映像新聞社 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)

■ブラジルのディジタル放送、2007年から開始 人口カバー率70%に
 ブラジルのDTVは、2006年にISDB-T方式(一部改良したISDB-Tb方式)の採用が決まり、2007年より放送が始まった。現在、人口カバー率で70%に達しているが、人口密度が極めて低い地域ではカバー率は低い。小都市、集落へ覆域を拡げることが課題となっている。DTV化により、映像品質の向上に加えて、(放送システムの)頑強性や柔軟性も向上した。また、DTVが始まったことでHD番組の制作も始まった。このように幅広い波及効果が見られている。ブラジルでは年間1,500万台以上のテレビが売られ、2016年のオリンピックに向けてさらに伸びると期待されている。
 メディアとしてのテレビは強力で、年々市場占有率は伸びており、現在は66.5%のシェアを持つ。一方、雑誌と新聞は漸減している。インターネットは、増加の後減少している。このように、ブラジルではテレビ放送は強力な地位を得ている。

■2015年からアナログ停波開始、2018年に停波の予定
 アナログ停波は、2015年末までにRio Verde(Goias州)で始まる。2016年〜2018年に大都市および経済発展地域で停波を行う予定となっている。問題は、小都市、集落だ。ブラジルには4982の小都市があり、ここに6400万人が住んでいる。停波は2018年末の予定だが、これらの都市の中継局は、地元自治体が所有しているものがほとんどだ。現在、連邦としての移行政策が固まっていない。これは大きな問題だ。各都市は、地元で取り組むべき多くの課題があり、アナログ停波に対応できる状況に無い。
 ブラジルの隣国であるアルゼンチンは、状況が異なる。放送局の多くは公営で民営のネットワークは規制されている。通信法の改正が議会で議論されている。ライセンスが暫定であるため、送信所への投資を安心して行える状況に無い。
 チリは、広告市場規模が14億2300万ドル相当あり、テレビは42.7%を占める。テレビは、この4年間で2.63%増大した。ただし、有料放送が急激に伸びており、低画質のアナログ無料放送は、早急にディジタル化を図る必要に迫られている。
 2010年に市場の51%を得ていた無料放送は、現在42.7%だ。チリは、520万世帯あるが、これまでに400万台のISDB-Tb受像機が販売された。昨年はテレビ販売中の59%がISDB-Tb機だった。DTVに関する法律は、5年間の審議の後、今年5月25日に成立した。DTVの国家政策は、今年末までに発表されると期待されている。

■南米のスペクトラム問題 未解決の700MHz帯LTEとの干渉
 ブラジルでは、第52チャンネルから69チャンネル(698MHz〜806MHz)までの108MHzを放送業界は失うことになっている。周波数再編後は、新技術を導入するだけの余裕が無くなると懸念されている。これは、ブラジルの地上波サービスの終焉を意味する。
 加えて、700MHz帯をLTEに使う問題がある。700MHz帯LTEとの干渉は確実に存在することが実験で判っている。しかし、どのようなフィルターを使うかの規定ができていない。新世代のチューナーは干渉に強いが、旧型機には干渉が起きる。700MHz帯に隣接するチャンネルだけでなく、第14チャンネルから51チャンネルまでのすべてで、影響が考えられる。もちろん、ワンセグにも影響が出る。
 さらに問題がある。478MHz〜698MHzに移動体通信サービスを割り当てることだ。ITU/WRC-15(3年に一度開催される世界無線通信会議)では、移動体向けに追加の帯域を割り当てることが議論される。(478MHz〜698MHzが)ホワイトスペース方式で利用されていないと(政府が)判断すると(移動体通信サービスの)電波を出すとされているが、(ホワイトスペースとの)干渉を考えるとハーモナイゼーション(協調)は不可能だ。478〜698MHzは、無料放送が存在できる限られた帯域だ。アメリカやカナダやベルギーでは無料地上波を受信する世帯は5%程度だ。しかし、イタリアでは80%だし、ブラジルでは95%視聴している。地域毎の違いをITUは考慮すべきだ。
 無料放送は、今でも強力なメディアだ。IP通信だけでは、人口の多くに届かない。IPは(現実としては)1対1のユニキャストだ。今後、地上波放送が長く続くかは、政府とITUが公平な規制を行うかどうかにかかっている。

ブラジル放送技術協会(SET)会長のオリンピオ・ジョセ・フランコ氏

ブラジル放送技術協会(SET)会長のオリンピオ・ジョセ・フランコ氏

講演風景

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#interbee2019

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