私が見た"IBC 2014"動向(その1)

2014.10.1 UP

例年と雰囲気が変わったIBCコンベンションセンターの情景
IBC Awardを受賞したソニーブースと大画面ワイドディスプレイ

IBC Awardを受賞したソニーブースと大画面ワイドディスプレイ

初登場の4K VariCam 35(パナソニック)

初登場の4K VariCam 35(パナソニック)

グローバル展開を目指すコンパクトな中継車(日立国際電気)

グローバル展開を目指すコンパクトな中継車(日立国際電気)

新しいコンセプトの4Kカメラ “URSA”(ブラックマジックデザイン)

新しいコンセプトの4Kカメラ “URSA”(ブラックマジックデザイン)

 NAB、Inter BEEとならび世界の3大放送関係コンベンションのひとつであるIBC2014がアムステルダムで9月12日から16日まで盛況に開催された。Inter BEEは今年50周年を迎えるが、IBCも最初の大会が1967年にロンドンで開かれ、90年代にアムステルダムに定着して以来、今回46回目を迎えた。会場のRAIコンベンションセンターは、スキポール空港からだと電車で20分、東京駅のモデルと言われる赤レンガつくりの古色蒼然としたセントラルステーションからは、中世の面影を残す旧市街を路面電車でのんびり走ること30分と、幕張メッセに比べるとかなり地の利が良い。会場はInter BEEのように大きなホールに集約されておらず、中小規模の14ものホールが複雑に入り組んでおり、コンファレンスやイベントを聴講し、目当てのブースを回るには相当な時間と手間が掛かる。円安とオイル高のあおりで航空運賃やホテル代もかなり高くなり、NABに比べ元々大きなホテルも少なく、日本からの参加者はかなり少なめだった。しかし全体的には、出展企業・団体は各国から170社以上、来場者数は昨年を2000人ほど上回る55000人を数え大盛況だった。

世界的にデジタル化が概ね山を越え、最近の放送・映像メディアの進展は非常に速く大きい。2~3年前には3Dが大きなトピックスになっていたが、最近は定着が進んだのか話題性が少なくなったのか、3D関連出展物は大変少なくなっている。その一方、昨今、世界的に4K、Ultra HDTVと言った超高精細映像が急速な展開を始めている。わが国では今年になり国策として4K、8K放送のロードマップが策定され、IBC直前にはそのスケジュールが2年前倒しになっている。今年は、ソチオリンピックやワールドカップサッカーでの4K、8Kのパブリックビューイングが行われ、最先端映像・音響技術が大いに活躍した。そのような傾向は欧米や韓国などでも同じような状況にある。またIBCの直前、ベルリンで開催された欧州最大のIT・家電ショー”IFA 2014”において、家庭向け4Kテレビがソニー、パナソニック、サムスンなどから出展され、4K対応の民生カメラやアクションカメラ、モバイル端末すら出展されたそうで、既存の放送局のみならずYou TubeやAmazon が4K番組配信を開始すると報じられている。日本、韓国、中国のアジアだけでなく、米国や欧州の量販店でも4K製品が扱われている状況である。

そのような世界的な放送、映像メディア状況を反映し、今回のIBCの最大のテーマは4K/U HDTVだったと言ってもよい。会場を回って見ても、どのホールでも、大手企業だけでなく多くの中小ブースでも多種多彩な超高精細映像関連の出展物が見られた。しかも今回は、従来のように、カメラとかモニターと言った単体機器だけでなく、編集・制作システム、各種インターフェース、伝送・配信系において、4K/U HD対応を謳っているところが多かった。さらにあらゆる分野で信号処理のベースになる符号化関連技術分野においても、同様な傾向にあった。まるで4K、U HDにあらざれば最新技術じゃないかのような雲行きすらあった。
それらの潮流を反映するかのように、会期中日に開かれたIBC Awards セレモニーでは、FIFA TVが最高栄誉賞を受賞し、Host BroadcasterのHBSを筆頭に、ソニー(4K)、NHK(4K、8K)、Fujinon、Dolbyなど14のパートナーが共に表彰された。

このような4K、U HDの盛り上がりの一方で、こちらも時代の流れにあわせ放送と通信の連携に関わるコンテンツ配信やIP伝送技術、マルチスクリーン向け配信やConnected TV、Cloud関連技術、膨大なデータ量になるアーカイブ関連技術、撮影支援のためのロボット技術や省エネ・効率化が進む照明系、放送・通信機器類や測定機器類、さらに急速に進展している音声・音響系などなど膨大で多岐にわたる出展物が見られた。さらに世界的にはHDTV、デジタル化にいたらず、SDTVの段階にとどまっている国もあり、地味ながらそのような市場の要望にも応える出展物も見られた。このように多岐にわたる膨大な出展の中で筆者が注目した幾つかの展示物を2回にわたり概略紹介するが、今号ではまずカメラ系に絞ってみたい。

最近厳しい経営状況が伝えられているソニーだが、この分野における冠に相応しく、今回も第12ホール全面を占めるIBC最大の広いブース一杯に、”Beyond Definition”を掲げ、多種多彩なシステムやソリューションを展開していた。ブースのレイアウトは一新され、まるで石造りのモニュメントのような太い柱が縦横に張りわたされ、天井上部には超ワイド大画面スクリーンが設置され、横12K、縦2Kからなるワールドカップサッカーなどの臨場感溢れる高精細映像が上映されていた。このソニーブースはIBC AwardsでGood Design賞を受賞した。主な展示物としては、4KカメラPMW55/F5をメインに各種HDカメラ、30”型有機ELモニター、2Kにも対応する4Kプロダクション、XAVCワークフローなどと多彩だった。
昨今世界的に勢いのあるキヤノンは、場外の目立つ所にも大きなPR看板を掲げ、第11ホールで最大規模のブースで主力製品のカメラやレンズ系などをメインに展示していた。主力の4K/HD対応カメラEOSシリーズのファームウエアがバージョンアップされることにあわせ、それらに対応する機器、システムを使ったワークフローの実演と、同じくBT.2020対応になり表示色域が広くなった4Kリファレンスモニターに、撮影、制作したコンテンツを公開していた。
民生部門に軸足をシフトしているパナソニックだが、第8ホールにかなりの規模のブースを設け、”See the Future of your Business”をテーマに多彩な展示を展開していた。注目はIBC初登場で映画製作やCM、ドラマ制作をターゲットにした4Kカメラ”Varicam35”で、高感度、低ノイズ、広い色域とダイナミックレンジで暗部からハイライトまで美しい表現力が得られる。その他に小型軽量で機動性が高いハンドヘルド型4Kカムコーダ、空撮や車載用に適する4Kデジタルカメラ”Lumix GH4”なども展示され、4K制作環境が一層広がると期待される。その他、HD対応の機器、システムも数々展示していた。
池上通信機はカメラをメインに出展していたが、その中で注目はARRIと共同開発した”HDK-97 ARRI”で、高感度と広いダイナミックレンジ、高S/Nで優れた階調再現性、低混色と高画質の上、PLマウントレンズ採用により浅い被写界深度と奥行き感あるフィルムルックの映像表現が得られ、7"サイズのビューファインダーと3G 対応光ファイバーを実装し、映画だけでなくテレビスタジオや中継用にも使うことができる。また今年のワールドカップサーカー中継で使われた8Kカメラがショーケースの中に展示されていた。
日立国際電気は、多種多様なHDカメラに加え、今回初めて4Kカメラも出展し注目された。新開発の2/3”MOSを採用し高解像度、高感度と忠実な色再現性を実現した。放送用B4マウントを採用したため、HD用レンズが使え従来のHDTV制作と同等の操作性で、4Kスポーツ中継やスタジオ制作が可能になる。欧州だけでなく中東やアフリカなどにおけるグローバルな事業展開を目指しているそうで、ブース内に制作、伝送配信機器などを搭載した小型コンパクトな新型中継車も公開していた。
 Blackmagic designが出展した新製品の4Kラメラ”URSA” は、スーパー35mm相当センサーを搭載し、グローバルシャッター、12ストップと広ダイナミックレンジ、12bit RAWと高画質で 内臓レコーダに4K/HDの24P/30p/60pのマルチフォーマットで収録できる。レンズ系はEF、PL、B4マウント3タイプが用意されており、本体両側面に装備された5”タッチスクリーンによりカメラの設定ができる上、開閉式の10”モニターも付き映像の確認もできる新らしいコンセプトモデルで、多人数クルーでもワンマン操作でも扱え、映画やテレビ番組、CM制作と様々な用途に使える。
GrassValleyは、FUTURE READYを掲げ、撮影から編集、送出までend to endのトータルソリューションを公開していた。カメラ系としては、従来からのHD対応のLDXシリーズに加え、新製品の4Kカメラも展示した。3 CMOSを採用し、B4マウントと従来の放送用カメラを踏襲し、グローバルシャッター式、6倍速対応に進化させたウルトラスピード”LDX Xtream Speed”である。

映像技術ジャーナリスト 石田武久(Ph.D.)

IBC Awardを受賞したソニーブースと大画面ワイドディスプレイ

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初登場の4K VariCam 35(パナソニック)

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グローバル展開を目指すコンパクトな中継車(日立国際電気)

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新しいコンセプトの4Kカメラ “URSA”(ブラックマジックデザイン)

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#interbee2019

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