私が見た"NAB SHOW 2016"における技術動向(その2、成長し続けるカメラ編)

2016.5.11 UP

写0:タイトル(ATOMOSブース情景)
写1:新型4Kカメラ”VARICAM LT”をドローンに取り付け展示(パナソニック)

写1:新型4Kカメラ”VARICAM LT”をドローンに取り付け展示(パナソニック)

写2:4Kカメラ用コンパクトサーボレンズ(キヤノン)

写2:4Kカメラ用コンパクトサーボレンズ(キヤノン)

写3:8Kカメラ”SHK-810”(池上通信機)

写3:8Kカメラ”SHK-810”(池上通信機)

写4:4Kカメラ”SK-UHD4000”(日立国際電気)

写4:4Kカメラ”SK-UHD4000”(日立国際電気)

 放送メディアは超高精細度化とIP化が進んでいる。その状況に合わせ、各社ブースに出展されたカメラやレンズ系の性能、機能はますます進歩している。この分野は元々日本がぬきんでているが、今年夏にはリオオリンピック・パラリンピックが開催され、4K、8K試験放送が本格的に始まる。それらを視野に、さらなる展開を目指し各企業から最新モデルが出展されていた。

 ソニーは4KからHDまで豊富な機種を出展していたが、注目はコンパクトな4Kカメラ”HDC-4800”である。新開発のスーパー35mm単板CMOSを搭載し、データ読み出し速度を高速化し、4Kで最大8倍速、フルHDなら16倍速のスーパースロー映像を可能にした。カメラヘッドと組み合わせ、撮影データの画像処理・映像出力を行うプロセッサーユニットは、大容量ストレージ機能を搭載し4K映像を8倍速で最大4時間の長時間記録が可能である。色域はBT.709とBT.2020に対応し、さらにIP化に向けたNMI(前述)インフラにも対応する。ポータブルメモリーレコーダー”AXS-R7”は4Kで120fpsのハイフレーム撮影や録画開始の30秒前からのスキップバックレコードも可能である。
 パナソニックの注目は、高画質、小型軽量の4Kカメラレコーダー”VARICAM LT”で、スーパー35mm 相当のMOSセンサーを搭載し、高感度、広ダイナミックレンジ、広色域である。本体は小型軽量で堅牢な一体型の筐体に搭載し、ショルダースタイルだけでなくジンバルやドローンへの搭載(写1)など、自由な撮影スタイルが取れる。もうひとつの注目機種は、4K画質と長距離光伝送を実現し、4K/HD/SD対応のスタジオハンディカメラ”AK-UC3000”で、新開発の4K大判センサーを採用し、高感度とSN比60 dB以上を確保し、高いダイナミックレンジで豊かな階調を表現できる。
 キヤノンは、4Kカメラ”EOS C300 MarkII”を出展した。スーパー35mm相当CMOSの採用と映像処理プラットホーム”Dual DIGIC DV5”を搭載し、高画質コーデックXF-AVCで高速のCFast2.0に記録する。Canon Log 3ガンマも搭載され、ダイナミックレンジが広がりHDRにも対応する。また、プロトタイプの8Kカメラは、カメラ出力Raw信号はCanon LogとCinemaγに対応し、PQ式HDRとBT.2020に対応する。レンズ系は豊富なラインナップの機種が出展されていた。その中で注目は4Kカメラに対応する高い光学性能を備え、EFマウントの小型軽量のコンパクトサーボレンズ”CN-E 18-80”である(写2)。標準装備の電動ズームユニットによりスムースなズーム操作が可能な上マニュアル操作も可能で、レンズシフト式防振機能も装備している。その他、プロトタイプの2/3型スタジオ4Kカメラ用”UHD Digisuper”と今後の4K展開に応える機動性の高いENG/EFP用の小型ズームレンズCJシリーズも展示されていた。
 池上通信機は小型軽量の8Kカメラ”SHK-810”を出展した(写3)。3300万画素、スーパー35mmCMOS単板センサーを搭載し、光複合カメラケーブルによる映像信号の伝送、フォーカスアシスト機能やレンズ色収差補正機能付きで、CCUからは8K/4K/HDの出力も可能で、従来の8Kカメラに比べ機動性、 運用性が向上した。4Kカメラ”UHK-430”は、2/3型CMOSセンサーとB4レンズマウントを採用し、HDカメラと同様の運用性で、高精細度と高品質の色再現性を実現した。光学分離型構造を採用しヘッド部の延長も可能となり、新開発のCCUとの伝送は40Gbpsの超広帯域を確保し、RGB 444の4K非圧縮信号伝送を実現した。デジタルシネマで実績高いARRIと共同開発した”HDK-97ARRI”は、スーパー35mm COMSの採用により、高感度、広ダイナミックレンジ、高S/Nで奥行き感のあるシネマテイストの映像が表現でき、ベースステーション・カメラコントロールユニットと組合せ4K映像も得られる。
 日立国際電気は8K、4K、2Kフルラインナップのカメラを出展した。小型単板式ドッカブル構造の8Kカメラ”SK-UHD 8060B”は、2.5"サイズの3300万画素単板CMOSを搭載し、レンズマウントはPL型で映画用や市販4Kレンズも使え、収録装置との一体化構造により、従来、困難だった環境でも運用可能になった。最近のトレンドであるHDR、広色域にも対応する。CCUは1.5G-SDI(1系統)と3G-SDI(2系統)を備え、8Kと4K/HDの同時出力も可能である。4Kカメラ”SK-UHD4000”は、新開発の2/3型MOSセンサーを搭載し、独自開発の高精度の映像信号処理により、高S/N比、広ダイナミックを実現した。B4マウントを採用し、現行HDカメラと同等の操作性と運用性で4K撮影ができる。スポーツ中継現場で問題となる感度と被写界深度の問題をクリアし、最近のニーズであるHDRにも対応し、テニス中継などで利用され好評を得ている。CCUは小型コンパクトで4K/HD同時出力もできHDカメラと混在使用もできる。
 富士フイルムはデジタルシネマ、放送で進む4K制作に応える高画質、高機能の豊富なラインナップのレンズ類を出展した。注目は4K対応シネマカメラ用ズームレンズの新製品”XK6x20”で、スーパー35mmPLマウント、ズーム全域でT3.5の明るさを実現しズーム操作中にTナンバーが変化しないため、本レンズ1本であらゆるシーンの撮影に対応できる。放送カメラ用レンズは、スポーツ中継やライブイベント用ズームレンズとして、2/3”レンズを採用した広角9mmから望遠端720mmの 4K箱型ズーム”UA80x9”と4.5mmの超広角と最短撮影距離0.3mを実現した小型ワイドズームレンズなどを並べていた。さらにNHKの8Kカメラ用に開発した”Fujinon 8K 12-36”がショーケースの中に展示されていた。このワイドレンズは水中ブリンプでの使用をも想定しているそうだ。
 アストロデザインの8Kカメラ”AH-4810A”は1臆3300万画素単板CMOSを搭載し、12bit、RGB444、60pで、3色分解プリズムが不要なため従来の3板式3300万画素フル解像度モデルに比べ、大幅に小型軽量化され大きく機動性が増した。レンズは Cinema PLとフル35mmのEFに対応する。
 朋栄は、4Kハイスピードカメラとして、従来機種より小型軽量化し機動性を改善した”FT-ONE-S”を出展した。スーパー35mmサイズで有効4096 × 2304画素のCMOSセンサーを搭載し、4Kで360fps、HDなら最高1670fpsの高速度撮影ができる。小型軽量で防塵、防水機能が強化されたカメラヘッドは、ベースステーションと光ケーブルで接続され、機動性、運用性が大幅に向上し利用範囲がこれまでより広がる。

 ブラックマジックデザインは豊富なラインナップのカメラを出展した。ハイエンドの”URSA 4.6K”はスーパー35mmサイズ、画素数4.6K、15ストップと広いダイナミックレンジで、10”サイズのモニターを装備し、12G-SDI出力で2枚の内蔵CFastカードに記録し、PLおよびEFマウントが用意されている。”URSA Mini 4.6K”は前機種とほぼ同じ仕様だがモニターが5"サイズと小さく、全体も小型軽量になり値段も若干安い。“Micro Studio Camera 4K”は、60fps までの高フレームレート4K/HDの撮影が可能、カメラヘッドはデジカメ風の形状で小型だが大きなモニターを実装でき、ライブスポーツなどの撮影に適している。”Micro Cinema Camera”はスーパー16mmサイズセンサーを採用した超廉価、小型軽量モデルである。グラスバレーの4Kカメラ”LDX-86”シリーズは、2/3”CMOS 3板を搭載しB4レンズマウントで、15ストップと言う広いダイナミックレンジでトレンドのHDR、BT.2020に対応し、K2 Dyno Universeリプレイシステムを使い映像を上映していた。
 AJAは今や同社の目玉になっている感もある小型コンパクトな4Kカメラ”CION” を出展した。4K/U HDおよび2K/HDに対応し、リアルタイムに ProRes 422、4K 60fpsで直接収録され、業界ニーズに応え明暗部の処理を改善した新たなファームウェアも搭載された。また今回は産業用、セキュリティ、放送用アプリケーション向けのコンパクトカメラも初出展していた。ATOMOSは各社のカメラに装填できるモニターとレコーダー一体型の各種製品を出展していた(タイトル写真)。ハイエンドモデル”SHOGUN Inferno”は、12G-SDI/HDMI2.0入力に加え3G-SDI×4により4K/60p対応とし、従来のプロセッサーを一新、7”サイズのモニターは従来比で約4倍の高輝度LCDパネル採用し屋外での視認性を改善し、HDR映像のモニタリングも可能なモードも搭載した。
映像技術ジャーナリストPh.D.石田武久

写1:新型4Kカメラ”VARICAM LT”をドローンに取り付け展示(パナソニック)

写1:新型4Kカメラ”VARICAM LT”をドローンに取り付け展示(パナソニック)

写2:4Kカメラ用コンパクトサーボレンズ(キヤノン)

写2:4Kカメラ用コンパクトサーボレンズ(キヤノン)

写3:8Kカメラ”SHK-810”(池上通信機)

写3:8Kカメラ”SHK-810”(池上通信機)

写4:4Kカメラ”SK-UHD4000”(日立国際電気)

写4:4Kカメラ”SK-UHD4000”(日立国際電気)

#interbee2019

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