私が見たInter BEE 2012(その4)符号化関連技術・伝送配信技術動向

2012.12.3 UP

AdvancedStereo3D NHKメディアテクノロジー
新符号化AVC ultraシリーズ(パナソニック)

新符号化AVC ultraシリーズ(パナソニック)

超解像技術による画質改善(東芝)

超解像技術による画質改善(東芝)

次世代符号化方式HEVCの画質評価(NEC)

次世代符号化方式HEVCの画質評価(NEC)

4Kライブ伝送実験のシステム(富士通、アストロデザイン)

4Kライブ伝送実験のシステム(富士通、アストロデザイン)

 (その1)では例年とひと味変わった今年のInter BEEの全体状況と各種イベントの概要について、(その2)では映像メディアの様々な展開にあわせ多様化、多極化するカメラについて、(その3)ではファイルベース化が進むコンテンツ制作系と高画質化が進む映像をしっかり監視、管理する映像モニターや高品質のコンテンツを上映するディスプレイの技術動向についてみてきた。本号ではデジタル時代におけるあらゆる分野の機器、システムに関係ある符号化技術、伝送・配信技術に関する動向について見てみたい。 

 最初のトピックスはNHKメディアテクノロジーのAdvanced Stereo 3Dである。従来のサイドバイサイド式3D放送と違い、現行放送と互換性あるデュアルストリームの3D放送方式でARIBに規格化を提案中だそうだ。3D対応テレビで見れば従来方式より高画質の3D映像が鑑賞でき、非対応のテレビで見れば通常の2D映像となる。同社は80年代末頃から20年以上にわたりHD 3D映像の制作、機材の開発に取り組み3Dコンテンツアーカイブスも進めているが、東日本大震災を機に制作した従来式3D作品「相馬野馬追い武者行列」も見せていた。さらに2009年から取組んでいる4K3Dについては、QFHD(3840×2160)のIPS液晶パネル2枚の映像をハーフミラーで合成する偏光式28型3Dモニター(計測技研)で見せていた。これらの一連の取り組みは、近い将来始まるSHV試験放送開始を視野に入れたものだそうだ。

 ソニーは高品質化、多様化するコンテンツに応える新たな制作ソリューションとして、4K、HDから民生分野まで包括するビデオフォーマットXAVCを提唱してきた。解像度はフル4K(4096×2160)、QFHD、フルHD、プロキシに対応し、圧縮方式は効率的・高画質のH.264、ビット数は12、10、8bitによる良好な階調再現性、カラーサンプリングは4:4:4、4:2:2、4:2:0、フレームレートは60Fに対応する。データ量はF65のRAWに対しXAVCでは大幅に軽くなり、MXFファイル形式で既存の編集系などが活用できる。オープンフォーマット化することで4Kによる制作環境を広げて行きたいとの戦略で、スイートルームではアライアントパートナーのアビッド、グラスバレーなどによる実演展示が行われていた。
 パナソニックも映像符号化の新体系として広い用途に使えるAVC Ultraを提唱している。4K、デジタルシネマを視野に入れた最上位のAVC-IntraClass4:4:4、放送用AVC-Intra Class 200、Class100、Class50、コストパフォーマンスが高いLong Gまた低ビットレートのプロキシ用AVC-Proxyがファミリーになる。高精細度ディスプレイを使い、別々のコーデックによる映像を表示し画質の評価をさせていた。

高画質化時代に応え画質を改善する「超解像技術」が公開されていた。NECは複数フレームの低解像度映像から高解像度化する再構成型超解像技術で処理したハイビジョン映像を見せていた。東芝は空間的近傍の画素情報を使うフレーム内と前後のフレーム間情報の両方を使う超解像技術を、計測技術研究所はオリジナルのHD映像からアップし独自の超解像処理した4K映像を公開していた。
 ネット時代に重要な電子透かしに関する展示も注目された。三菱電機はNHK技研と共同開発の技術で付加情報を映像に視覚的影響を与えずにリアルタイムに埋め込みや検出ができ、圧縮方式やサイズ縮小などに耐性がある電子透かし技術を、T3 Mediaのライブラリーコンテンツを使い実証実験を公開していた。コンセプトは違うが、富士通はテレビ映像に視覚的に分からないように別の情報を付加し、受信側で画面をスマートフォンで撮影すると付加した情報を取得できる「映像を媒介する新たな通信技術」の公開をしていた。商品販促や旅行予約、店舗情報など様々な用途が考えられるようだ。
 来年早々、国際標準化される予定の次世代符号化方式HEVC(High Efficiency Video coding)も何社かから公開されていた。H.264 の約2倍の圧縮効率が見込まれ、4K/8Kにも対応しSHV放送やネット動画サービスなど今後のメディア展開にとって大きな影響があり、各社が開発を競っている。富士通はフルHD映像をH.264とHEVCで同じビットレートで圧縮した映像を比較展示していたが、遅延時間は小さく画質の差ははっきりしていた。NTTは4KとHD映像をHEVCでエンコード/デコードした映像を公開し、NECはH.264とHEVCとで同じビット数の場合および1/2のビットレートにした場合の両者の画質の違いをシミュレーション画像により公開していた。先端情報通信技術の実用化を進めているみずほ情報総研はHEVCファイルを解析しグラフィカルに表示するストリームアナライザーを出展していた。圧縮データのブロックサイズや動き情報を一つの画面で確認できHEVC対応機器やソフトウェア開発などに有効だそうだ。

 NTTグループはHEVCの他にも放送やCATV向け様々なソリューションの展示を行っていた。ワンチップLSIを搭載し低ビットレートでも放送並の高画質、低遅延を実現するH.264 IPエンコーダ/デコーダ、パソコン並の性能で高品質の映像伝送を低コストで実現できる軽量で低遅延のソフトウェア、さらに4Kワークフローにも対応する超高速IPビデオシステムなどを公開していた。K-WILLは第2世代の自動品質監視装置を出展したが、1重刺激型(評価画像を使用せずに品質を評価)はブロックノイズ、ラインノイズの検出精度を向上し、2重刺激型はフルリファレンス評価を実装し画素単位のエラーも検知でき、さらにラウドネス測定機能も実装し番組平均のラウドネス値を正確に測定できるようになった。既に番組アーカイブスなどで素材変換作業検査に使われているそうだ。またCATV局やIPTV向けに1重刺激法を採用し、省スペースで低コストの多CH映像品質監視装置も展示していた。
 富士通はアストロデザインと共同で会場内での4K映像のライブ伝送を公開していた。両社ブース間にLAN回線を敷設し映像伝送装置“IP-9610”を2式使い、4Kを4分割したHD映像をH.264で符号化・伝送し、受信側では2台のデコーダで4CHの信号を同期を取りつつ復号し4Kモニターに表示していた。この方式はアストロと共同で実施したスカパーJSATによるJ1リーグの衛星伝送実験でも使われたそうだ。その他には、クラウドを用いたファイル伝送やウルトラ低遅延IPコーデックの展示、メディアアセットソリューションなどの展示も行われていた。またJVCはIPネット上での複数拠点間の4K非圧縮伝送実験について公開していた。

 機器メーカーがソフトウェアで柔軟に機能をセットできる集積回路FPGA(Field Programmable Gate Array) は、トランスコーダなど符号化分野だけでなくカメラやディスプレイの信号処理系などあらゆる分野で使われている。世界的にFPGAのシェアを競いあっているXilinxとALTERAはそれぞれ関係社と連携しつつ最新技術を公開していた。80年代半ばFPGAを初めて商品化したXilinxは東京エレクトロンデバイスと共同ブースで、最新モデル“Zynq-7000”によるOmni Tek社のブロードキャスト評価キット、Video over IPやメモリーレコーダー、放送向け音声アプリケーションなどを公開展示していた。一方ALTERAは代理店のアルティマ、アルセラとの共同ブースで、マルチ映像入力によるアップ/ダウンコンバータ、アドバンストシステム用開発キットなどを展示していた。
 intoPIX(ビリッジアイランド)はFPGA(Xilinx)を搭載し独自アルゴリズムによる超低遅延のJPEG2000コーデックによる4K映像を公開していた。JPEG2000はデジタルシネマのDCI規格にも採用されており、進展しつつある4Kさらには8K映像の伝送、配信にとって有効な高品質の符号化法である。同社のこの技術はアストロデザインやアサカのサーバなど他社製品にも採用されており、メディアグローバルリンクスは同技術を採用したマルチメディアIP伝送装置を出展していた。

映像技術ジャーナリスト(学術博士)石田武久

新符号化AVC ultraシリーズ(パナソニック)

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#interbee2019

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