【インタビュー】Short Shorts Film Festival & Asia2011開催に向けて 代表 別所哲也 氏インタビュー

2011.6.30 UP

●約100作品を上映
 米国アカデミー賞公認でアジア最大級の国際短編映画祭である「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2011(SSFF & ASIA 2011)」(企画運営:パシフィックボイス)が、6月16-26日に表参道ヒルズ スペース オー、ラフォーレミュージアム原宿、TOHOシネマズ六本木ヒルズなどを会場に開催される。
 今年は世界104カ国から4200本以上の応募があり、その中から選ばれた約100作品を上映。オフィシャルコンペティションでは、インターナショナル部門、アジア インターナショナル部門、ジャパン部門の3部門を実施した。
 各部門優秀賞の中から選出されるグランプリ作品は、次年度(2012年)の米国アカデミー賞短編部門の選考対象となる。
 最近の傾向として、デジタル一眼レフカメラ(DSLR)で撮影された応募作品が多く、国内応募作品の4分の1を占める。キヤノンマーケティングジャパンとのコラボ企画「EOS MOVIEプログラム」など、関連行事も用意した。
 東日本大震災に伴い、チケット収益の一部を義援金として日本赤十字社、CIVIC FORCEへ寄付するほか、ジョージ・ルーカス監督ら映画祭関係者からの出品によるチャリティーオークションも行った。
【ショートショート フィルムフェスティバル & アジア事務局】TEL:03-5474-8844/オフィシャルサイト=www.shortshorts.org、ツイッター=@s_s_f_f

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「SSFF&ASIA2011」  映画祭代表 別所哲也氏インタビュー
 「SSFF & ASIA 2011」の開催にあたり、同映画祭の代表を務める俳優の別所哲也氏にインタビューした。
(石川幸宏)———

 --今回で開催13年目を迎えるが。
 人間に例えれば、思春期を迎えた青少年時代に入り、さまざまな形での成長が見えてきた。扱う分野も大きく広がってきたと感じている。
 昨年は「3D(立体視)元年」と言われ、映画は新たな領域に入ってきているが、ショートフィルムの世界ではそれよりも少し前から技術的な試行錯誤を含めて3D作品が制作されていた。今回は本格的に「3D部門」を設置した。
 また、アニメーションや実写も含めてさまざまな形で映画作りに介在しているCGについても「CGプログラム」として紹介する。今はこれら新しい技術が、いかに作品性に生かされてくるかが問われている時期だと思う。
 今年は、技術面においてもクリエイティブな面においても、本格的に 『21世紀型の映画祭』へ向かって動き出すといったプレリュード(序曲)のような雰囲気を持っていると思う。

 --映画祭の成長という点で、近年はどのような変化があったのか。
 10周年の節目には、横浜・みなとみらいに短編映画専門のブティックシアター「ブリリア ショートショート シアター」を開設するなど、さまざまな挑戦をしてきた。
 今年は、世界へ作品を発信していく選択肢がそろってきたことを実感している。また、映画祭も進化していく過程にあると思う。インプット、アウトプット、そして編集技術に至るまで、テクノロジーの面ではどんどん変化してきている。

 --映像テクノロジーの進展とともに、作品性の進化というのは。
 「フィルムフェスティバル」と名乗っているのは、映画の原点に対して敬意を表し、あえて『フィルム』としている。だが、時代の変容とともにフィルムで撮影された作品は減り、今ではデジタル撮影された作品がほとんどだ。そういう意味では技術とともに映画も進化していく。ショートフィルムは『ノールール』なので、型破りな手法による作品を応募してほしい。
 これはあくまで個人的な考えだが、映画の制作手順のうち、かつてはプリプロダクション、つまり脚本やコンテ作り、ロケーションスカウトなど、最初の段階が重要だったと思う。
 今でももちろんそれは大切だが、撮った後にどういう編集加工ができるかなど、最後のポストプロダクションでの処理で何ができるかを事前に知っていないと、作品が仕上げられない時代になっている。今はさまざまなテクノロジーを味方に付けないと、良い映画が撮れないという時代に入っているのかもしれない

 --DSLRで撮影された映像の印象は。
 最初にEOS MOVIEの画を見たときは、本当に驚いた。とてもフィルムライクで、それぞれの作家の個性も出ていて、DSLRの力に驚かされた。今回の応募作品もDSLRで撮った作品が多く寄せられた。日本国内だけでなく、海外でもDSLR撮影作品がこの1、2年で増えた。これから映像作りの選択肢の一つとして、大きな位置を占めてくると思う。

 --このたびの東日本大震災は、さまざまな分野に大きな影響を与えた。これによる映像作品や、映画祭の在り方などに変化はあるのか。
 今回の大震災で感じたのは、「当たり前のことは無い」「すべては有限である」、そして「人間の想像力や勇気、愛、優しさ、思いやりというものは、限りなく無限に近いパワーを持っている」ということだ。特に表現者にとって(地震が発生した)3月11日とそれ以降の出来事は、こうしたことを強く感じたのではないか。そして『映像が持っている力』を、良い部分も悪い部分も見せつけられたと思う。
 映像メディアの在り方もそうだが、事実を伝える強力な道具にもなれば、事実と違うことを伝えてしまうものにもなる。とは言え「映像」の持っている力はすごい。人を奮い立たせて一つにまとめる力があり、たった1人の苦しみを世界の人々で分かち合うことができる。まさに『魔法』のような存在だ。
 しかもそれを私たちは受け手となり、または発信する側にもなり得ることを痛感した。一番大切なことは目を背けずに、みんな一緒に立ち向かっていくということだと思う。
 映画祭の主催者として心を打たれたのは、海外からたくさんの励ましの言葉をもらったことだ。その一つとして、初年度から映画祭を応援してくれているジョージ・ルーカス監督から、当映画祭に対して、「自粛せず実施して日本は大丈夫だということを示すように」という激励と、被災地への心配りのメッセージを頂いた。
 それを発端にチャリティーオークションの実施を決めた。売り上げの一部を義援金として被災地に送る予定だ。何よりも世界の映像作家が集い、映画の持っている「感動を分かち合う力」「元気を生み出す力」そして「現実から目を背けずに前進する力」を伝える思いを込めて、今回の映画祭を開催したい。

#interbee2019

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