私が見た"NAB SHOW 2015"動向(その1、概要編)

2015.4.27 UP

写1:NHK 技研による8K Roadmapに関する講演
写2:新製品4Kカメラを紹介するソニーのプレスコンファレンス

写2:新製品4Kカメラを紹介するソニーのプレスコンファレンス

写3:企業イメージを一新したImagineのプレスコンファレンス

写3:企業イメージを一新したImagineのプレスコンファレンス

写4:往年の喜劇俳優Jerry Luise氏が NAB Award受賞

写4:往年の喜劇俳優Jerry Luise氏が NAB Award受賞

写5:日本企業ブースが集中するセントラルホールの景観

写5:日本企業ブースが集中するセントラルホールの景観

 世界最大の放送機器展NAB’2015が、4月11日(土)から16日(木)までカジノとショーそしてコンベンションの街ラスベガスで盛況に開催された。世界的な景況感の中、世界164ヶ国(昨年156)の1789社・団体(昨年1550)が出展し、登録来場者数は昨年(実績97,915)を上回り103,042人を記録した。日本からの出展も堅調で、一時沈滞気味だった日本人見学者、出展企業関係者も、場内を廻って見た印象では復調気味だった。

 セッションやコンファレンスは機器展示に先立ち11日から始まっており、”Next Generation Television”のセッションに参加した。12日(日)の朝9時半と言う時間にも関わらず、4Kや8Kなど今大会最大のテーマだけに、サウスホールのかなり広い会議室は立ち見が出るほどの聴講者で溢れていた。最初の講演は、NHK技術研究所の”U HDTV Roadmap for Ultimate 8K from 4K”で、テレビ開始以来今日までの放送メディアの成長に始まり、”More Pixels”(8K:7680×4320)、”Faster Pixels”(HFR:60p/120P)、”Better Pixels”(Wide ColorimetryとHDR(10/12bits))を併せ持つ超臨場感メディア8K SHVの最新技術状況と今後のロードマップを語っていた。それに向けて開発中のカメラ、各種制作用機器、各種インタフェース、高度符号化技術、衛星・地上波放送システムなどの状況と、それらを使って既に制作されている多彩なSHVコンテンツも紹介された。さらに放送以外にもデジタルシネマ、医療、教育など幅広い産業分野への応用についても触れ、特に既に行われている8K医療手術について実例を紹介していた。聴講者から数々の質問や意見も出され、8Kシステムの持つ可能性と実用化に向けた関心の高さを物語っていた。その他には、”Comparative Field Tests of DVB-T2 and ATSC”や”Live 4K Broadcasting via Terrestrial Channel”や最近話題の”HDR(High Dynamic Range)”などに関する講演が行われていた。

 午後には翌日からの機器展示を前に、多くの企業が自社出展物のPRや経営戦略を紹介するプレスコンフォレンスを開いていた。会場はコンベンションセンター(LVCC)会議室や市内のホテルなどに散在し時間もばらばらなので、それらを渡り歩くにはバスやモノレール、時にはタクシーや徒歩で移動するため時間的にも体力的にも大変だったが、何社かのイベントに参加したので概要を紹介してみたい。
 昨年スネルと合併したクオンテルは、LVCC会議室にて新社長らが2社合併により大きくなる相乗経営効果や注目の出展物として”4K/8K Pablo”などをオーソドックスな記者発表風に紹介していた。次にモノレールで市内の中心部に移動し、ミラージュホテルのGrandBall Roomで開かれたソニーのコンファレンスに出席した。大勢の来場者が参集した広い会場には横長の大スクリーンが設置され、同社幹部達や製品ユーザーも次々に壇上に上り、多種多彩な4K関連製品の紹介とそれらを駆使し制作した”Disney nature”の”Monkey Kingdom”などコンテンツの紹介もなされた。また最後にはNBCなどの放送メジャーもあわせ大勢が壇上に並び、スポーツ中継用の新製品4Kカメラ”HDC 4300”などが披露された。
 その後、近くのPallazzo Hotelにバスで移動し、軽食付きでリラックスな雰囲気のGrass Valleyの発表会に参加した。昨NAB直前に”Belden Brand”に入った同社は大画面ディスプレイを使い、”Future Ready”を掲げBeldenグループと一体でメディアビジネスを推進していく経営戦略を語り、そして4Kや Live Productionのさらなる推進、今後のIP 化にむけた多種多彩な製品を紹介していた。既に夕刻も遅くなっていたが繁華街から少し離れた場所にあるHard Rock Hotelに移動し、昨年、Harris Broadcastから社名を変えたImagineのプレスコンファレンスに参加した。新たに飛躍すべくイメージも一新したことをPRするためか、ラスベガスのロックの本場のホテルで、アルコール、食事付き、ライブショーのアトラクション付きの華麗なイベントだった。元々ショーをするような広い会場は溢れんばかりの参加者で埋まっていた。正面の演台に設置された大型スクリーン3面を使い、ビジネス戦略や製品紹介の後、企業関係者やユーザーも交えたパネル討論風プレゼンテーションが行われていた。別室で軽い食事とアルコールがふるまわれた後、再びこの会場に戻るとメインイベントのロックバンドのライブ演奏が始まった。大音響に加え大型映像照明を駆使したライブショーは、ほとんど経験のない筆者には驚きだったが、会場一杯の来場者の中には音楽にあわせて踊りだす人もいて大いに盛り上がっていた。

 展示会初日の13日の朝9時からは、ノースホールに隣接するラスベガスホテルでオープニングセレモニーが開かれた。毎年趣向を凝らし人気イベントになっており、会場の広いホールには大勢の参加者が参集していた。NAB会長就任6年目になるGordon Smith氏は放送界の現状と4K/8K放送にかける期待を語り、引き続き今回のメインイベントとも言えるキャラクターとして、往年の著名なコメディアンで脚本家、映画監督でもあるJerry Lewis氏が登場した。若い人にはなじみが薄いかも知れないがシニア層には懐かしく、1950年代から60年代に、ディーン・マーチンと組み一世を風靡した名喜劇俳優である。大画面スクリーンには当時大活躍した映画のシーンが次々に映し出され、それらをいとおしむかのように御年89歳の老優が昔を思い起こしつつ語る表情に、参加者は皆立ち上がりスタンディングオベーションが沸き起こった。長年にわたるエンターテインメント産業への貢献に加え慈善事業にも尽力していると言うことでNAB Awardを受賞した。続いてソニーピクチャーズのCEOなどを務め、マルチメディア産業をリードするMandalay Entertainment Group.会長のPeter Guber氏のキーノートスピーチがあった。

 その後、3日間にわたり広大な展示会場を廻ったが、Inter BEEの幕張メッセや多数のホールが入り組んでいるIBCのRAI会場に比べると、各ホールの規模は大きいが集約されているので見学はわりと楽である。セレモニー会場に近いノースホールには、”Future Park”の中にNHKの8Kシアターが開設されワールドカップサッカーなど迫力ある超高精細映像が上映され、大勢の見学者を堪能させていた。同ホール中央付近には、イメージ一新のImagineやevertz、Ross Videoなどが大きなブースを構え、最新の符号化やIP技術など多種多彩な展示物を並べ見学者で賑わっていた。最も広いセントラルホールには日本企業のブースが集中し、地の利の良いエリアに世界のリーディングカンパニーのキヤノンとパナソニックが大きなブースを構え、その周辺に中堅どころの朋栄とJVCケンウッド、少し離れて池上通信機やアストロデザインが、東側コーナーには今回もソニーがキヤノンに匹敵する広大なブースにて最先端の4K機器などを出展していた。
 横長の大きな建物で上下2フロアから成るサウスホールには、Grass ValleyやBlackmagic Designが大きなブースで先進的でインパクトある展示物を公開し、デジタルシネマ分野で急成長し例年特徴あるレイアウトと雰囲気で評判になるRed Digitalが広いスペースで華麗な展示をしていた。コンテンツ制作系の老舗で昨年Snellと合併したQuantel は8K編集系を初公開し評判になり、世界の映像業界に各種機器を提供しているAJAやRhode Schwarzも斬新な4K対応機器を展示していた。また従来セントラルホールで他の日本企業と共にブースを構えていた日立は、この近くのエリアで新製品の4K、8K対応など多彩なカメラなどを展示していた。サウスホール2階では、常連のAvidやHarmonicが多彩なシステムのプレゼンテーションをし、Dolbyが評判のHDR技術など特徴ある映像・音響システムの公開をしていた。またNTTグループは最新の符号化・配信技術を公開実演し高い評価を受けていた。さらに今大会の大きなトピックスになっているAirial Robotics and Drone技術を集めたパビリオンも開設され大勢の見学者を集め評判になっていた。

 今大会の技術動向を概論すると、急速に展開している4K/8K映像、多種多様な高品質カメラやディスプレイ、ファイル化/IP化が進みつつある制作・配信システム、それらをサポートする多彩な符号化技術、それに最近急速に普及しだし注目されているドローン技術などである。それらの詳細については次号以降で順次、概略紹介して行きたい。
                         映像技術ジャーナリストPh.D.石田武久

写2:新製品4Kカメラを紹介するソニーのプレスコンファレンス

写2:新製品4Kカメラを紹介するソニーのプレスコンファレンス

写3:企業イメージを一新したImagineのプレスコンファレンス

写3:企業イメージを一新したImagineのプレスコンファレンス

写4:往年の喜劇俳優Jerry Luise氏が NAB Award受賞

写4:往年の喜劇俳優Jerry Luise氏が NAB Award受賞

写5:日本企業ブースが集中するセントラルホールの景観

写5:日本企業ブースが集中するセントラルホールの景観

#interbee2019

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