私が見た"Inter BEE 2015"(その1)全体概要、イベント編

2015.11.27 UP

写0.タイトル写真( オープニングセレモニー状況と8Kディスプレイ)
写1.基調講演から「8K放送の展望と放送外への展開」

写1.基調講演から「8K放送の展望と放送外への展開」

写2.特別講演から「リオ2016:オリンピックの展望」

写2.特別講演から「リオ2016:オリンピックの展望」

写3. 映像シンポジウムから「放送番組におけるビッグデータ活用」

写3. 映像シンポジウムから「放送番組におけるビッグデータ活用」

写4. アジアコンテンツフォーラム”Production & Creator’s Night”

写4. アジアコンテンツフォーラム”Production & Creator’s Night”

 Inter BEEは先の東京オリンピックの翌年の1965年「放送機器展」として始まり、昨年50周年と言う大きな歴史を刻み、今や米国のNAB、欧州のIBCに並ぶ放送業界最大のイベントになっている。この半世紀にわたり、Inter BEEはカメラやVTRなど放送を支える多くの機器開発に寄与し、衛星放送、ハイビジョン、デジタル化と言った放送メディアの成長に大きく貢献してきたこと改めて敬意を表したい。そして今年、次なる50年の第一歩となるInterBEE2015が11月18日から20日まで幕張メッセで盛況に開催された。デジタル化を果たし、放送を巡る状況は大きく変わり、通信系との連携が進み、4Kそして8Kへと超高精細度化が急速に進んでいる。それらを支える基本技術、インフラ、視聴環境も大きく変わりつつある。
 今回、記念大会だった昨年に比べれば、来場者数はわずかに下回ったが、出展者数は過去最多となる996社・団体を数え、機器展示は1ホールから6ホールいっぱいに展開され、イベントホールではラインアレースピーカーの体験デモが、その横の広い屋外駐車場では最近新たな技術トレンドのドローンの空撮デモが行われ、国際会議場では多種多彩なコンファレンスやセミナーが開かれていた。大きく変貌、進展する放送メディアの高まりを感じさせる大会だった。

 新たな半世紀を刻む51回目の大会オープニングセレモニーはエントランスロビーにて行われ、主催者のJEITA、総務省と経済産業省の揃い踏みの挨拶に続き、NABやIABM、ブラジルテレビ技術協会など海外からの来賓者も含めテープカットが行われ開会の幕が切って落とされた。なおメインステージの両側には、今大会の象徴とも言える4Kおよび8Kの超高精細映像の大型ディスプレイが設置され、NexTVフォーラムの”Channel 4K”試験放送を受信した4K映像と、NHKのウインブルドンテニス競技中継や青森ねぶた祭りなどの8K超高精細映像が上映され多くの来場者が見いっていた。
 その後、国際会議場では基調講演2件があった。最初のテーマは「4K/8Kロードマップ2015 今後の事業展望」と言う標題で、総務省の吉田大臣官房審議官から「我が国の放送政策の最新動向」と題し国が進める次世代放送に向けた施策が語られ、続いてNHKの浜田技師長から「8K放送の展望と放送外への展開」についての講演があった。その概要は、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて来年から始まる8K試験放送に対する準備状況について、さらに8Kはその優れた特徴を活かし、医療や映画、デジタルサイネージや広告宣伝、パブリックビューイング、美術館やミュージアムなど放送以外の広範な分野で応用の可能性を持っており、放送と共に産業応用も進むことを期待すると語っていた。さらにスカパーJSATから「当社の4K放送の取り組み」、NTTプララから「ひかりTVにおける4K IPTVサービス展開」、ジュピターテレコムから「ケーブルテレビの4Kの取り組み」と題し、進展する4K放送・配信状況について話が続いた。
 最後にNexTV-Forum(次世代放送推進フォーラム)の元橋事務局長から総括的な話として「4K/8Kロードマップ/その先にあるものは?」と言う題で、2016年の試験放送、2018年の実用放送、その先に向けての課題と問題提起をしていた。「16年試験放送、18年実用放送のチャンネルプランだけでなく、その後に向けた構想も出すべきではないのか」、「BSだけ、放送だけの議論で良いのか」、さらに様々な技術的問題の成熟に向け「広色域やHDR、さらなる高画質化に向けたHEVC圧縮技術の進化、制作の効率化に向けたポスプロの迅速化とアーカイブの低コスト化」などについて具体的に語った。そして「技術論や政策論だけでなく、クリエイティブの発展と映像ジャーナリズムの深化に繋がる議論が求められている」と提起し、「日本が生み出した最先端の技術を活用し、新しい放送文化、映像文化を創造して行こう」と締めくくった。
 どの講師の話も現在およびこれからの放送メディアの展開に関わる大きなテーマだけに、会場は壁際まで立錐の余地が無いほどの大入りで、外のロビーに設置された大型ディスプレイの前も聴講者で溢れていた。これからの放送メディアの展開にかける期待と制作者、技術者達の活力を感じさせる情景だった。

 午後の基調講演は「民放公式テレビポータル『TVer』サービススタート~映像配信の今後を考える~」の標題で、在京民放キー局のキーパーソンによる講演が行われた。また特別講演では、今ホットな話題である「マイナンバー時代を迎えたテレビ放送の次世代サービスを考える」と題し、飯泉徳島県知事の講演とNexTV-Forumの須藤理事長や総務省情報通信政策課の小笠原課長らによるパネル討論も行われていた。
 また同会議場1Fの会議室では、招待講演としてISDB-T陣営で映像情報メディア学会と連携関係にあるブラジルテレビ放送技術協会による特別フォーラムも開催されていた。その中では、来年に迫ったリオオリンピックに関して「リオ2016:オリンピックの展望」と題して進む準備状況とこれからの課題についての話があり、続いて「ブラジルにおけるアナログTVの終了」、「ラテンアメリカ放送業者の過去と未来」、サンパウロ大学のマルセロ教授による「インタラクティブなデジタルTVシステムの相互運用性」と題した講演がなされていた。東京オリンピックにも関係あり、また日本との関係が深いブラジルのメディア状況に関するテーマだけにほぼ満席に近い入りだった。

 大会中日には、例年好評の映像シンポジウムと音響シンポジウムが開催された。前者は女子美大評議員の為ヶ谷氏とNHKアートの国重常務のコーディネートにより「新たなコンテンツ制作の潮流~ビッグデータの視覚化のインパクト~」をメインテーマに、「NICTにおけるソーシャルビッグデータ研究と可視化の例」、首都大学東京の「データを紡いで社会につなぐ」、NHKからは「放送番組におけるビッグデータ活用の現状とさらなる進化の可能性」および「データ視覚化システムの開発と課題」と題した講演が行われた。ビッグデータを活用することにより従来の可視化とは違う映像表現が可能となり、その例として原発事故時の汚染状況や台風の進路予想、天気予報などでの使いかたなどの紹介がなされていた。これからは「放送の中でインターネットを活用し情報の収集や発信を如何に行っていくか、新しい技術を活用した防災報道の強化とか、ビッグデータを活用するデータジャーナリズムのありようなど、今後も新たな応用を考えて行きたい」と語っていた。

 第6ホールの一郭のICT/クロスメディアエリアには4Kシアターが開設され、連日、多彩なコンテンツ関係のイベントやホットなテーマの講演が行われ大勢の参加者を集め盛況だった。初日にはAdobeによる「クラウド映像製作ツールのデモ」などが、中日には日本ポストプロダクション協会によるJPPA Dayが開催され、イマジカによる「HDR映像と評価画像」、レイによる「4K HFR & HDRの編集ワークフロー」、パナソニックの「4K映像制作ソリューション」など最近の大きなテーマについての講演やプレゼンテーションがあった。さらに夕方からは大勢のクリエイターやエンジニアが参集し、”Production & Creator’s Night”交流パーティが開かれたが、場内は入りきれないほどの大盛況だった。

 放送・通信メディアは大きく変わりつつある。その大きなポイントは4Kや8Kと呼ばれる高精細度化、空間的情報量の増大であり、HFRと呼ばれる時間的情報量の増加、さらにBT.2020に代表される広い色域による色再現性、最近大きなトピックスになっているHDRと呼ばれる映像のコントラスト、ダイナミックレンジの拡張である。それら情報量の増加や高速化に応える効率的、高圧縮、高画質の符号化技術であり、それらをベースにした制作・配信・伝送システムも変貌し、ファイルベース化、IP化が一層進んで行く。これら今大会に見た技術動向については、次号以降で紹介していきたい。
映像技術ジャーナリスト(Ph.D.) 石田武久

写1.基調講演から「8K放送の展望と放送外への展開」

写1.基調講演から「8K放送の展望と放送外への展開」

写2.特別講演から「リオ2016:オリンピックの展望」

写2.特別講演から「リオ2016:オリンピックの展望」

写3. 映像シンポジウムから「放送番組におけるビッグデータ活用」

写3. 映像シンポジウムから「放送番組におけるビッグデータ活用」

写4. アジアコンテンツフォーラム”Production & Creator’s Night”

写4. アジアコンテンツフォーラム”Production & Creator’s Night”

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube