私が見た"NAB SHOW 2015"における技術動向(その2、超高精細度化進むカメラ)

2015.4.30 UP

写1:4K/HD対応となった”EOS C300 MarkII”(キヤノン)
写2:レンズ一体型ハンドヘルドタイプの4Kカメラレコーダー”AG-DVX200”(パナソニック)

写2:レンズ一体型ハンドヘルドタイプの4Kカメラレコーダー”AG-DVX200”(パナソニック)

写3:スポーツ中継に最適な新型4Kカメラ”HDC-4300”(ソニー)

写3:スポーツ中継に最適な新型4Kカメラ”HDC-4300”(ソニー)

写4:NHKと共同開発の8Kカメラ”SK-UHD8060”(日立国際電気)

写4:NHKと共同開発の8Kカメラ”SK-UHD8060”(日立国際電気)

写5:新型4Kカメラ”ALEXA SXT”とアナモズームレンズ(ARRI)

写5:新型4Kカメラ”ALEXA SXT”とアナモズームレンズ(ARRI)

 (その1)では今回のNABの全体状況について紹介した。本稿では、今年のNABで大きなテーマになっていた4K、8K超高精細度映像に関して、急速に進歩している4K、8Kカメラの動向を取り上げてみたい。会場を巡り、SDTV、HDTV以来カメラ分野で大きな実績を上げてきた日本企業陣の勢いは4K/8K時代においても揺るぎないことを強く感じた。一方、海外企業からも特徴ある様々な機種が出展されていた。

 キヤノンは今回4Kカメラのラインナップを拡大してきた。実績高いEOSシリーズの中で、従来HD対応だったC300が機能、性能アップし4K対応の”EOS C300 MarkII” として登場した。新開発のスーパー35mm相当CMOSを採用、映像処理プラットフォーム”Dual DIGIC DV5”を搭載し、独自のコーデックXF-AVCを記録モードに応じて使い分け、4K/QFHD、2K/HDに対応するようになった。記録メディアには4K動画撮影向けに転送速度が速いCFast 2.0を採用している。8bitから10/12bitに、色域もITU-R BT2020に対応し、色鮮やかで精細な映像表現が可能になった。堅牢性を向上し様々なアクセサリーも装着しやすく操作性も向上した。また、動画と静止画撮影可能な小型軽量でコンパクトな4Kカムコーダ”XC10”も初登場した。自社開発の1.0”サイズCMOSを搭載し低照度でもノイズが少なく、上機と同じDIGIC DV5プラットフォームとXF- AVC対応でCFastを採用している。機動性が求められる映像制作用に適しており、超ローアングルの撮影、車載など狭小スペースにも設置できる。手持ちでの体験や最近流行のドローンに実装しデモしていた。
 パナソニックは多種多彩な4K対応カメラを出展していたが、注目モデルは4/3”MOSセンサーを搭載したレンズ一体型ハンドヘルドタイプの4Kカメラレコーダー”AG-DVX200”である。大判センサーにより被写界深度の浅い美しいボケ味と広いラチチュードの4K60p 映像をSDカードに収録する。5 軸ハイブリッド手ブレ補正、インテリジェントAF システムも搭載し、機動性・即応性に優れている。その他の4Kモデルとしては、スーパー35mm単板MOSを搭載し、高感度、低ノイズ、広い色域とダイナミックレンジで暗部からハイライトまで表現できる”Varicam 35”で、モジュラー構造のレコーダはHDモデルの”HS”と共通でexpress P2カードを採用しAVC-Ultra、AVC-Intra 4K/2Kに対応する。また2/3”型レンズを採用しスポーツ中継や小規模スタジオ向けの廉価、Box型のマルチパーパスカメラ”AK-UB300”も注目された。さらに4K./30p動画と800万画素の静止画撮影にも使える小型4Kミラーレスデジタル一眼レフカメラ”Lumix GH4U”も注目で、今回は最近のトレンドのドローンに装着して展示していた。
 ソニーは”Beyond Definition”を掲げ会場随一の広大なブースで、4K映像関連をメインに多種多彩な機器を公開していた。4Kカメラについてはコンテンツ制作で高い実績を上げている”F55”や”F5”、コンパクトモデルの”PXW-FS7”などに加え、注目機種はスポーツ中継に好適な新型4Kカメラ”HDC-4300”である。2/3”型4K CMOS 3板を搭載し、BT.2020に対応し高精細で広い色域での色再現が可能である。B4マウントレンズを本体に直接装着でき、既存のHDカメラの操作性、運用性を維持したまま4K撮影ができる。既存の4KやHDカメラシステムと組み合わせ4K/HD混在運用が可能で、HDから4Kへの円滑な移行を実現すると共に本機の投入により4K市場の普及、拡張を目指しているそうだ。
 池上通信機は4K/8Kテクノノロジーをメインに多彩な映像ソリューションを展開していた。カメラ系では、4K解像度の2/3型CMOS を3板搭載し、既存の放送カメラシステムの操作性と運用性を継承しつつ、高精細かつ被写界深度の深い映像表現を実現し、スポーツ中継現場やスタジオでの運用に適している4Kカメラを技術展示していた。またセンサーにスーパー35mmサイズ3300万画素DG方式 CMOS単板、PLレンズマウントの小型軽量のポータブル型で運用性を現行カメラシステム並みに高めたNHKと共同開発の8Kカメラ”SHK-810”を展示し注目された。
 日立国際電気は次世代を見据え8K、4K、2Kのフルラインナップの出展をしていた。4KカメラはNAB初公開となる”SK-UHD4000”で、新開発の2/3”MOSセンサーを採用し高解像度、高感度と、独自の光学系により忠実な色再現性を実現した。B4マウント採用で既存の放送用HDレンズが使え、HD制作と同等の操作性、運用性で4Kスポーツ中継やスタジオ制作が可能である。2.5"サイズの3300万画素単板CMOSを搭載し、PLマウントのハンディタイプでNHKと共同開発の8Kカメラ”SK-UHD8060”を初出展した。カメラヘッドとSSD収録ユニットのドッカブル構造で、小型ヘッドとCCU間は光複合ケーブルで接続し、クレーンや汎用カメラスタビライザーなどへの搭載もでき、運用性、機動性が大幅に向上した。CCUは4K出力も備えており8K/4K/2Kのサイマル出力も可能で、今後の4K/8K市場の普及、拡大をめざし展開を進めて行くそうだ。
 朋栄は”For-A for a 4K Future”を掲げ、現在および次世代の放送メディアの展開を支える多種多彩な展示をしていたが、その中でカメラ系はHD収録機能が追加され毎秒コマ数向上(HDの場合1670fps)になった4K高速度カメラ”FT-ONE OPT”に加え、撮影速度は最大360fpsながら前機より小型コンパクト化し運用性を改善した”FT-ONE-S 4K”を初公開した。小型軽量に加えカメラヘッドを分離型にしたことにより機動性が大幅に向上し、あわせて防塵、防水機構系を採用し運用性も改善した。アストロデザインは2.5”3300万画素CMOS単板を搭載しPLマウント、重量2kgと超小型化した8Kカメラ”AH4800”を出展した。従来のSHVカメラに比べ機動性が高く、中継番組や水中撮影などで威力を発揮する。
 富士フイルムは4Kカメラ対応ズームレンズとして、80倍の高倍率で広角9mmから望遠720mmまで広い焦点距離をカバーし、高解像度、高コントラストで色再現性にも優れスポーツ中継やライブコンサートなどで威力を発揮する”UA 80×9”とポータブル型コンパクトな22倍ズームの”UA22×8”を出展していた。

 一方、外国企業の4Kカメラ状況を見てみよう。ブラックマジックはラインナップをさらに豊富にした。ハイエンドの”URSA”はアップグレードされ、センサーがスーパー35mm 相当で水平方向画素数が4.6Kになり、ダイナミックレンジは15ストップと35mmフィルムに匹敵する。内蔵のdual CFastカードに収録し、側面の操作パネルや映像モニター類は従来通りで、レンズ系はEF、PLマウント対応の2モデルが用意されている。また同じセンサーを搭載し、小型、軽量化し廉価にしたハンドヘルド型”URSA Mini”に加え、URSAより小判のセンサーとマイクロフォーサーズレンズマウント対応のライブプロダクション向き放送用カメラ”Studio Camera 4K”のニューモデルで、さらに小型軽量化した”Micro Studio Camera 4K”も展示していた。U HDで最大2160p30、HDで最大1080p60にも対応し、手の平サイズながら高画質で、ボディーは堅牢なマグネシューム合金製で、B4アダプターを追加すれば放送用レンズも使え、ニュース報道、スポーツ中継、ライブイベントなどに向いている。グラスバレーは2/3” 型FT CMOS 3板を搭載し、B4マウントで従来の放送用カメラの機能、運用性を継承した4Kカメラ”LDX 81”を出展していた。
 デジタルシネマ分野で実績を上げているRED Digital は従来の4Kセンサーより高解像度の6Kセンサー”Dragon”を搭載したハイエンド機”Epic”をメインに展示していた。16.5ストップとダイナミックレンジが広く、ノイズ低減策により低照度下での撮影も楽になった。AJAは人間工学に基づき快適性と利便性を重視し設計された小型軽量の4Kカメラ”CION”を初出展し評判になっていた。ARRIの従来モデルを進化させた新製品”ALEXA SXT”は、カメラ内でのProRes4K収録、BT2020ガンマに対応し、ウルトラワイド映像が撮影できるアナモフィックズームレンズと組み合わせ公開していた。従来機”AMIRA”と同じ4:3センサーを採用し4Kなら60fpsまで収録可能な小型モデル”mini”は、ProRes4K、非圧縮ARRI RAWを内蔵のCFast 2.0カードまたは外部のCodex製 レコーダに収録する。約2.3kgと小型、軽量のためドローンに装着したり、水中撮影で威力を発揮するそうだ。 

映像技術ジャーナリストPh.D.石田武久

写2:レンズ一体型ハンドヘルドタイプの4Kカメラレコーダー”AG-DVX200”(パナソニック)

写2:レンズ一体型ハンドヘルドタイプの4Kカメラレコーダー”AG-DVX200”(パナソニック)

写3:スポーツ中継に最適な新型4Kカメラ”HDC-4300”(ソニー)

写3:スポーツ中継に最適な新型4Kカメラ”HDC-4300”(ソニー)

写4:NHKと共同開発の8Kカメラ”SK-UHD8060”(日立国際電気)

写4:NHKと共同開発の8Kカメラ”SK-UHD8060”(日立国際電気)

写5:新型4Kカメラ”ALEXA SXT”とアナモズームレンズ(ARRI)

写5:新型4Kカメラ”ALEXA SXT”とアナモズームレンズ(ARRI)

#interbee2019

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