私が見た”IBC 2015”技術動向(その2)

2015.9.30 UP

写1:小型4KカメラによるHDRライブプロダクション(ソニー)

写1:小型4KカメラによるHDRライブプロダクション(ソニー)

写2:4K、P化に応える多種多彩な機器を出展(朋栄)

写2:4K、P化に応える多種多彩な機器を出展(朋栄)

写3:IP時代の制作機器、ソリューションを出展 (グラスバレー)

写3:IP時代の制作機器、ソリューションを出展 (グラスバレー)

写4:高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

写4:高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

 今回のIBCでの大きな技術テーマは高精細度化と共にHDR(High Dynamic Range)化で、前述のカメラ系と同様に制作系、映像モニターやディスプレイもその傾向が強くなっている。
 ソニーは以前から高輝度と高コントラストを実現し、肉眼により近い視覚効果をもたらし映像表現力を飛躍的に高めるHDRについて取り組んでおり、4K 有機ELマスターモニターを使いきらめく夜景や燃え上がる炎などを美しく再現していた。従来、ハイエンドカメラで撮影し、時間と手間をかけて編集、加工していたが、今回、機動性高い小型4Kカメラで撮ったライブ中継映像をリアルタイムに処理しHDR映像として再現するプロセスを開発した。日なたと日影のフィールド、明るい空と暗い観客席が同居するスポーツ中継など暗部と明部の差が大き井場合でも、美しい映像表現が可能になる。今年行われた英国”MotoGP”をポータブル4Kカメラ”HDC-4300”を使って撮影し処理したHDR映像を公開していた(写1)。
 キヤノンは高画質映像モニターとして、従来の30”型4Kモデルに加え、今回撮影現場のニーズに応え機動性の高い小型・軽量の24”サイズの4Kリファレンスモニターを出展した。4K/60p、広い色域とCanon Log2に対応し、トレンドのHDR表示にも対応し、これまで困難だったデジタルシネマの映像表示も可能になる。Dolbyはマスター素材に近い輝度、コントラスト、ダイナミックレンジを再現表示できるHDRテクノロジーについて開発を進めており、CESやNABなどでも公開し注目されている。その成果であるHDR技術採用の”Dolby Vision”は、今回も自社ブースだけでなくThomson、Evertz など他社ブースでも映像表示に使われていた。その他にもHDRを謳った映像モニターは池上通信機、ARRI、Envivioなどで見られたが、とりわけ評判になっていたのはNHKの8Kの85”LCDによるHDR表示である。
 その他、映像モニターで注目されたのは、韓国系企業のTV LogicとSamsungの展示である。前者のブースには、4K対応30”型LCDモデルと25”型有機ELモニター、さらに各種サイズのHD対応LCDや4K対応のマルチビュアが数多く並べられていた。後者のブースには65”サイズ位でHDR対応の4Kテレビ局面型とフラットモデルが展示され美しい4Kテレビ映像に多くの見学者が見入っていた。
 また大画面のディスプレイも場内の随所で見られた。オリンピックやフォーミュラ1などのイベント映像で実績高いRiedel(独)はCREATE LED(中国)の200”位の大画面LEDディスププレイを第10ホールの天井に吊り下げ、高輝度で高精細度4Kの映像を映し来場者を圧倒していた(タイトル写真)。世界市場でLEDディスプレイを展開しているAbsen(独)は詳細スペックは不明ながら高精細映像を表示し、またIP関係業務を手がけるCINEGY(独)は、IP関連展示に加え60”×4面マルチながら総画素数8Kの大型映像を表示し、LEYARD (中国)は高細密度・高精細度の8K大画面LEDディスプレイを公開していた。さらに世界的に大画面上映システムで高い実績あるChristyは、各種スペックのDLPを出展していたが、注目機種はBig Screen会場で映画上映に使われていた6色のレーザーを使う最新機種のDLPプロジェクター”Mirage 4K LH 6P”やレジストレーション席付近の4面大型映像表示に使われていた”Boxer 4K 30p”である。

 次にコンテンツ制作系について見てみよう。
 今やコンテンツ制作・配信機器の総合メーカーになっている朋栄は、昨今の4Kの進展、IP化に対応する多種多彩な機器、システムを出展していた(写2)。主力のスイッチャーは2M/E ながら6M/E 相当の機能を持ち4K/HDに対応するビデオスイッチャーなどと最大256×256で柔軟性ある4K/HD対応のルーティングスイッチャーを、ファイルベースソリューションとしてはAVC-Intra、DNxHD など多様なコーデックに対応するLTOレコーダと、新たにXAVC やProRes などの素材管理にも対応するLTO サーバ、プロセッサー系は4K/HD対応フレームレートコンバータ、 超解像技術搭載の4Kアップコンバータ、多彩な機能を持つフレームシンクロナイザ・カラーコレクターなどである。さらにIP関係機器ではTSとIP信号のシームレスなチェンジオーバースイッチャーやIPエンコーダ/デコーダなど多種多彩な出展をしていた。
 日本はもちろん各国でも4K試験放送や伝送実験の展開が進んでいるが、4Kシステムを従来の同軸ケーブルで構築すると配線やルーター規模など煩雑だし、柔軟性の点でも問題がある。ソニーはIPを用いてシステムをネットワーク上で一元管理するIP Live Production Systemを提案し、機器間の各種信号伝送をネットワークケーブル 1本で実現するネットワーク・メディア・インターフェースを開発した。今回、これを搭載したマルチフォーマットスイッチャープロセッサーと4Kカメラ用ベースバンド・プロセッサユニットおよびマルチポートサーバーシステムを組み合わせた制作システムを公開していた。パナソニックも時流に沿い4KとIPによる放送業務ワークフローを支える多彩な製品・システムを出展していた。前述の豊富な4Kカメララインアップに加え、機能性を高めた2M/Eスイッチャーに対応するコンパクトなコントロールパネル”AV-HS60”を核にしたIP&Studioソリューションと、P2メモリーカードカメラレコーダでの取材、クラウドネットワーク利用のiNEWS、P2システムによるハイライト編集やワークフローで構成し、ニュース制作などの業務効率を飛躍的に高める"P2 Cast"ワークフローなどを公開していた。
 Grass Valleyは4Kワーク用に4Kカメラ LDX 86シリーズとK2 Dynoリプレイシステムの組み合わせによる柔軟性のあるライブ制作を公開し、あわせて”Glass-to-Glass IP” と銘うったソリューションを構築する撮影から編集、送出までの最新機器群を出展した(写3)。その構成要素はカメラ、サーバ、スイッチャー、ルーター、マルチビューワ、IPゲートウェイやコントロールシステムなどから成り、制作や送出で使われる様々な製品のIP対応を可能にした。コンテンツ制作業界の大きなブランドだったQuantelはSnellと一体化し、今回、SAM(Snell Advanced Media)と名を変え一新したブースレイアウトで、IPと4Kインフラストラクチャーへの移行を可能にするソリューションを展開していた。これまでにHD、4Kから8Kまでの高品質、高機能の制作系として実績を上げてきた製品群Quantel RioはPablo Rioのブランド名となり、従来からのPablo Rio 4K、Live Touch、Qubeなどと共に、今トレンドのHDRに関してはNHKやBBCが進めているHybrid Logγを搭載しHDRやSMPTE 規格2084に対応する最新のV3.0を公開していた。またビデオスイッチャー、ルーティングスイッチャーではIP変換をモジュール毎に交換することによりコストを抑え段階的にIP環境に移行する実機展示をしていた。IP方式に対しては、現在各社より様々な提案がでているが、同社は非圧縮HD映像IP伝送の国際規格となったSMPTE 2022-6をサポートしていくとのことで関連するシステム、ソリューションを公開していた。

 最後に会場でも大きなテーマだった符号化、配信技術関係の注目の展示物を見てみよう。
 NTTグループは多種多彩な先進的な技術、ソリューションを出展していた(写4)。高性能HEVCエンコードエンジンを搭載し、4K解像度までの各種フォーマットのファイルをWindows上でHEVCに変換できるファイルトランスコードアプリケーション、リアルタイムエンコーダASICによる1チップLSIを搭載し小型・低電力、高画質、高機能、低遅延、高安定性を実現した4K/HD/SD 対応HEVCリアルタイムエンコーダ、同機は高画質を保ちつつ低ビットレート化し伝送コストをおさえることができ、DVB-ASI伝送だけでなくIP伝送にも対応する。またFuture ZoneではNTT未来研究所が2020年頃に実現を目指している遠隔地でスポーツの感動を共有するイマーシブテレプレゼンス”Kirari”の実演をしていた。NECは1チップにより小型化した2K/4K対応のHEVCコーデック機器を展示していた。
 これらの分野ではThomson、Harmonic、Thomsonなど多くの,欧米系企業から多種多様の展示がなされていた。それらの中での注目はintoPIX(ベルギー)のHD/4Kなどの多様な解像度、高フレームレートに対応し、圧縮伸長を繰り返しても画質劣化が少なく遅延量も小さい圧縮技術”TICO”で、今回、GrassValley、Tektronixなど17社によるアライアンスが構築されたそうだ。Barnfindは新CWDM技術により36CHの4K/60p信号を一本の光ファイバーで低遅延とジッターなしで伝送可能な光多重伝送装置を公開し、DekTecは世界中の放送規格に対応しデジタルテレビの検査ツールに使えるペンライト型信号発生器USB 3.0モジュレータを、Zixiは劣悪なIPネットワーク環境で発生するパケットロスを修復し映像・音声の欠落を軽減する品質向上ソフトを出展していた。 映像技術ジャーナリスト(Ph.D) 石田武久

写1:小型4KカメラによるHDRライブプロダクション(ソニー)

写1:小型4KカメラによるHDRライブプロダクション(ソニー)

写2:4K、P化に応える多種多彩な機器を出展(朋栄)

写2:4K、P化に応える多種多彩な機器を出展(朋栄)

写3:IP時代の制作機器、ソリューションを出展 (グラスバレー)

写3:IP時代の制作機器、ソリューションを出展 (グラスバレー)

写4:高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

写4:高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

#interbee2019

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