私が見た"NAB SHOW 2014"における技術動向(その2、カメラ編)

2014.4.25 UP

再び脚光を浴びているハイエンドモデル”F65”(ソニー)
こちらもハイエンドの”EOS C500”(キヤノン)

こちらもハイエンドの”EOS C500”(キヤノン)

製品モデルとして登場した”4K VARICAM 35”(パナソニック)

製品モデルとして登場した”4K VARICAM 35”(パナソニック)

超高速度撮影4Kカメラ”FT-one”(朋栄)

超高速度撮影4Kカメラ”FT-one”(朋栄)

デジタルシネマ用6Kカメラ”RED DRGON”(RED Digital Cinema)

デジタルシネマ用6Kカメラ”RED DRGON”(RED Digital Cinema)

 (その1)では今回のNABの全体概要について紹介した。(その2)では映像の超高精細度化に伴い、高品質、高機能化が目覚ましいカメラ系について紹介する。多くのブースで多種多様なカメラが展示されていたが、注目された機種について技術動向を見てみたい。

 ソニーは大きなトレンドである4Kカメラをメインに展示をしていた。その中で今回注目されたのは、最近4K制作の主力機として使われている”F55”に代り、ハイエンドモデルの”F65”である。同機はスーパー35mmサイズの8K(G-CH画素数2000万) CMOSを搭載し、ハイフレームレート駆動も可能である。今回、周辺機器が機能アップされ、4K、16bit RAWで120fpsで撮影した動きの速い映像を滑らかなスロー映像として再現していた。同機はNexTVフォーラムと共同開発したプロセッサーと組み合わせ、8K SHVカメラとしてNHKブースでも展示されていた。もうひとつの注目は、裏面照射型1/2.3” CMOS(880万画素)を採用したハンドヘルド型4Kカムコーダで、高感度、広角、光学20倍ズーム、手振れ補正レンズ付きと小形ながら高機能で廉価な4Kカメラである。また4K動画にも対応するレンズ交換式デジタル1眼カメラ”α7S”も初公開され注目を集めていた。
 キヤノン主力のレンズ系として、着脱可能なドライブユニットを装備した高倍率EFシネマレンズ”CINE-
SERVO”で、ズーム全域にわたり中心部から周辺部まで高い解像力を持ち、放送から映画の4Kコンテンツ制作に威力を発揮するモデルを展示していた。カメラ本体としては、フラッグシップモデルの4Kカメラ”EOS C500”で、スーパー35mm相当CMOS(885万画素)単版を搭載し、高感度と広ダイナミックレンジ、3G-SDI 2系統を備え非圧縮Raw(60p、10bit)で出力しフル4K/QFHD/HDに対応する。また35mmフルサイズの大判CMOS(1810万画素)を搭載した一眼レフカメラ”EOS 1D C”は、ボケ味と高感度を活かし暗いシーンでもノイズの少ない美しい映像表現が可能で、Motion JPEGにより4KとHDの撮影ができるモデルである。HD対応の”EOS C300”や”C10”も展示されていたが、注目は新製品のハンドヘルド型”XF-205”である。ENG用や各種イベントなど業務用をターゲットに、1/2.8"CMOS(291万画素)を採用し、26.8mmワイドで光学20倍ズーム、回転グリップ構造で操作性が良く、視認性が良い3.5”有機ELファインダーも装備している。
 パナソニックのカメラ系の注目は、これまで参考出品だったがようやく製品として登場してきた”4K Varicam”である。スーパー35mmMOSを搭載、AVC-Ultra 映像コーデックを採用し、カメラヘッドとレコーダから成るモジュラー構造である。14ストップのラチチュードでハイコントラスと広ダイナミックレンジで、4K/QFHD/HDのマルチフォーマットに対応し、最大120fpsの可変速撮影も可能だ。ハイエンドの映画製作やCM、ドラマ制作をターゲットにしている。また2/3”(220万画素)3MOSを搭載しHD対応の”Varicam HS”も出展されていたが、240fpsの1080p撮影が可能である。両機共用のレコーダはAVC-Ultra初めAVC-Intra Class444~Class200に対応する。特異なカメラとして、4K動画撮影用ミラーレス一眼レフカメラ”AG-GH4U”や参考出品の4K対応ウエアラブルカメラも展示されていた。

 池上通信機の注目機種は、ARRIと共同開発した”HDK- ARRI”で、スーパー35mmCMOSを搭載し、高SN比、高感度で広いダイナミックレンジを実現した。PLマウントで浅い被写界深度、奥行き感あるシネマテイストの映像が得られる。また高性能の2/3”3CMOSを搭載し、スミアレス、広ダイナミックレンジで3G対応のHDポータブル型”HDK-97C”、2/3”プログレッシブCCDを採用し16bitでSN比62dBと高画質、3G対応のフルデジタルHDTVカメラ”HDK-97A”、 2/3”AITCCDを採用し16bitのフルHD対応で様々な運用性機能性を向上した番組制作に最適なスタンダード型HDK-790GXなどを並べていた。また2/3”3CMOSを採用し、AVC、ATW機能を有し、新製品のHD対応超高感度カメラ”HDK-5500” も展示していた。さらに注目は参考出品のスーパー35mmセンサーを採用しPLマウント対応の8Kハンディカメラで、試験放送が始まる2016年には製品化する計画だそうだ。
 "FOR A for a 4K Future"を掲げる朋栄は、多種多彩な4K機器、システムを展示していたが、カメラ系の注目はNAB初公開のフル4K高速度カメラ光ファイバーモデル”FT-ONE-OPT”である。カメラ本体はスーパー35mm相当でグローバルシャッター式FTI-CMOSを搭載し、11ストップと広いダイナミックレンジ、12bitの階調再現性、60fpsから最大900fpsまで高速度撮影でき、RAWデータでメモリーに最大9.4秒間録画できる。一本の光ケーブルに映像信号、電源、制御信号、インカム、送り返しなどを集約し約1Km伝送可能である。特殊用途のカメラとして、ノイズを低減し色再現性も改善し感度を一層向上させ、低照度下でも精密な色の判別が可能になったHbCMOS 3板式超高感度HDカラーカメラ”FZ-B3”も初公開していた。

 グラスバレーはHD対応LDXシリーズと参考出品の4Kカメラを出展していた。最新世代のXensium-FT 2/3”CMOSを搭載し、高感度、広ダイナミックで、標準的システム型とコンパクトなボックス型がありいずれも3倍速と6倍速可能だ。参考出品の4Kモデルはボックス型と同じ形状で、同等の感度、ダイナミックレンジを維持し、放送用B4マウントで3G-SDI×4で出力する。次のステップとしてシステムカメラ型やラージレンズ対応、ハイブリッド光ファイバーによる長距離伝送を計画中だそうだ。
 ブラックマジックは例年ながら今回も多々話題性のある多種多様な出展をしていたが、カメラ系としては、従来からの小型で高性能、低価格の4Kカメラ”Production Camera 4K”、HDカメラ”Pocket Cinema Camera”に加え、ニューモデル2機種が出展された。ひとつはハイエンドの”BM URSA”で、スーパー35mmサイズ(有効解像度QFHD)のセンサーを搭載し、グローバルシャッター式、12stopの広いダイナミックレンジ、12bit RAWと高画質、dual RAW/Proresレコーダを搭載、QFHD/HD24P、30p、60pのマルチフォーマットに対応し、EF、PL、B4マウント対応の3モデルが用意されている。本体両側面に装備された2面の5”タッチスクリーンで自由にカメラの設定ができ、開閉式の10”モニターも装備され映像の確認もできる。また前機より小判のセンサーを使い、マイクロフォーサーズレンズマウントで4K(QFHD)、HD対応のライブプロダクション用カメラ”BM Studio Camera”も展示されていた。マグネシューム製の堅牢で超軽量、超小型ボディには、10”ビューファインダー、4時間持続するバッテリー、トークバック、マイク端子、光およびHD-SDIインターフェースが搭載されている。いずれの機種もNAB後、間もなく発売予定だそうだ。
 高速度カメラで実績高いVision Researchは、昨年に続きフル4Kハイスピードカメラ“Phantom FLEX 4K”、 HD対応で小型、コンパクトな"Miro"を展示していた。前機はスーパー35mm、12bit CMOSを搭載し、低ノイズ、広ダイナミックレンジと高画質な上、フル4Kで1000fps、HDなら2000fpsの高速度撮影が可能である。後者は1.4kgと小型軽量だがHDで10~1500fpsの撮影ができ12GBの内蔵メモリーにRAWデータで記録でき、従来機以上に様々な場で活躍できる。これらのハイスピードカメラは映画や放送番組などで使われているが、先日のソチオリンピックでも使われたようだ。
 デジタルシネマ分野で急速に実績を上げているRED Digital Cinemaは、昨年デビューした6K(1900万画素)センサー搭載のデジタルシネマカメラ”DRAGON”を展示していた。16.5ストップと広いダイナミックレンジ、ノイズ低減策によりナイトシーンの撮影も楽になり100fpsまでの撮影も可能である。
 Goproはスポーツやカーレースなど激しい動きとスピードがある映像撮影用の超小型HDカメラ”HERO”シリーズを出展した。超小型、軽量で衝撃にも強く防水性もある高性能のアクションカムで、自動車車体やオートバイ、ヘリコプターやサーフボードに装着し、空中を飛翔したり高速で走りながら撮影しSDメモリーカードに記録する。会場ではそれらを使って撮影した臨場感あふれる映像を公開し相変わらずの人気を集めていた。今年1月のソチオリンピックのスノーボードや滑降競技、ジャンプなどで使われたようだ。

映像技術ジャーナリストPh.D.石田武久

こちらもハイエンドの”EOS C500”(キヤノン)

こちらもハイエンドの”EOS C500”(キヤノン)

製品モデルとして登場した”4K VARICAM 35”(パナソニック)

製品モデルとして登場した”4K VARICAM 35”(パナソニック)

超高速度撮影4Kカメラ”FT-one”(朋栄)

超高速度撮影4Kカメラ”FT-one”(朋栄)

デジタルシネマ用6Kカメラ”RED DRGON”(RED Digital Cinema)

デジタルシネマ用6Kカメラ”RED DRGON”(RED Digital Cinema)

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube