私が見た"Inter BEE 2015"動向(その2)テレビカメラ編

2015.12.1 UP

写0:大幅に機能アップされた4Kカメラ”EOS C300 Mark 2”(キヤノン)
写1:新製品のフラッグシップモデル”F65 RS”(ソニー)

写1:新製品のフラッグシップモデル”F65 RS”(ソニー)

写2:主力となるハンドヘルドタイプの4Kカメラ”AG-DVX200”(パナソニック)

写2:主力となるハンドヘルドタイプの4Kカメラ”AG-DVX200”(パナソニック)

写3:大幅に小型化された3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(池上通信機)

写3:大幅に小型化された3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(池上通信機)

写4:廉価な子型4Kカメラ”URSA mini 4.6K”(ブラックマジックデザイン)

写4:廉価な子型4Kカメラ”URSA mini 4.6K”(ブラックマジックデザイン)

 (その1)では今大会の全体状況とイベント関係の概略を紹介した。(その2)では高精細度化、IP化に向け進歩、成長しているテレビカメラの動向について紹介してみたい。

 キヤノンの注目機種は従来HD対応だったモデルを4K対応にした”EOS C300 MarkII”で、スーパー35mm相当CMOSを採用し、独自のコーデックXF-AVCを採用し高速のCFast2.0に記録する。従来の8bitから10/12bitになり、新しいガンマカーブCanon Log2が選択でき、ハイライトからシャドーのディテールまで広いダイナミックレンジを表現できる。色域はBT2020に対応し最近の動向であるHDRにも対応する。 35mmフルサイズの大判CMOSを搭載し、静止画のみならず24P/8bitの4K動画像も撮影できる一眼レフデジタルカメラ”EOS 1DC ”も展示していた。また同社初出展の超高感度HDカメラは肉眼では見えない低照度下や月明かりのない暗闇でもノイズの少ないカラー動画が撮影でき、自然災害監視や野生動物の生態撮影など幅広い用途に使えそうだ。さらに2.5億画素CMOSを搭載し、HDの125倍、4Kの約30倍の解像度で5fpsの動画が撮影できるプロトタイプのカメラを使い、800mmの超望遠レンズをつけ撮影した遠方の小さな被写体を電子ズームと特殊な画像処理により鮮明な映像として判別できる実演をしていた。
 ソニーはフラッグシップモデルとして新開発のスーパー35mmサイズの総画素数約2000万の8K単板CMOSセンサーを搭載したCineAlta Premium 4Kカメラ”F65RS”を出展した。高解像度と広色域でラチチュード14ストップ、最大120fpsのHFR(High Frame Rate)撮影も可能である。今回注目のカメラはスポーツ中継に最適なマルチフォーマット対応のポータブル型4Kカメラ”HDC-4300”で、2/3”型3板式CMOSを搭載し、BT.2020対応、B4マウントで既存の放送HDカメラの操作性、運用性を維持したまま4K撮影ができHDから4Kへ円滑な移行がしやすい。さらに小型軽量の4K/HD対応XDCAMメモリーカムコーダ”PXW-FS5”も注目で、スーパー35mm4K CMOSを搭載しレンズ交換式で大判センサーによるぼけ味が出せ、HDなら120/240fps撮影も可能である。小型軽量で機動性が高く廉価なため、放送以外にもイベントやミュージックビデオなどに向いており4K制作環境が拡大し4K市場の拡張に役立ちそうだ。
 パナソニックは広がる4Kの展開に備え4Kカメラのラインナップをさらに豊富にした。ハイエンドの4Kカメラレコーダー”Varicam 35”は4K/120p非圧縮Raw収録システムの実演と共に最近取材ツールとしてニーズの高いドローンに装填し展示していた。4K大判MOSを搭載しB4マウント採用で2/3型レンズが使えるハンディカメラ”AK-UC3000”と廉価ながら高感度モードでフォーカスアシスト機能、HD-IP出力もでき柔軟性・拡張性のある4Kマルチパーパスカメラ”AK-UB300”も展示していた。今回最大の注目機種は、NABでデビューしInterBEE初出展となる4/3”MOSを搭載したレンズ一体型ハンドヘルドタイプの4Kカメラレコーダー”AG-DVX200”である。深度の浅いボケ味とV-Log L により広いラチチュードが得られ、4K/QFHD/HDに対応し120fps(HD 時)の可変速撮影も可能である。レンズは新開発の4K対応 13 倍ズームで手ブレ補正やAFも搭載し、バッテリーや端子部をカバー内に格納し機動性、運用性も高い。また4K./30p動画と静止画撮影もでき、ポスプロでカラーグレーディング、ワイドなダイナミックレンジの映像処理が可能になった4Kミラーレスデジタルカメラ”Lumix GH4U”と多彩なモデルを展示していた。
 池上通信機は8K、4K、HDと多種多彩なカメラを展示していた。8Kカメラは初代モデルに比べ約1/10と大幅に小型化した”SHK-810”で、3300万画素スーパー35mmCMOS単板センサーのDual Green方式を採用し、カメラ本体とCCU間は光複合ケーブルで接続され、フォーカスアシストやレンズ色収差補正などの機能を搭載し、現行HDカメラと同様の運用性を実現した。またCCUからは8K/4K/HDの出力が可能で様々な場での運用に対応できる。参考出品の4Kカメラは2/3”型 3板CMOSを搭載しB4レンズマウントでHDカメラと変わらぬ運用性を確保し、高精細で被写界深度の深い映像表現が得られスポーツ中継などに適している。またARRIと共同開発の”HDK-97ARRI”は、スーパー35mmCMOSを採用し高感度と広いダイナミックレンジ、高S/Nで優れた階調再現性と高画質のシネマテイストの奥行き感のある映像表現が得られる。超解像技術機能を持つ4Kコンバーターボード搭載のCCUからは4K映像も得られ、従来からの運用性を損なわずに手軽に4K制作も可能である。
 日立国際電気の8Kカメラ”SK-UHD8060B” はInter BEE初出展だ。2.5"型3300万画素単板CMOSを搭載したハンディモデルで、PLマウントで映画用レンズや4Kカメラ用レンズも使え、ドッカブル構造の小型軽量ヘッドはスタビライザーやクレーンへの搭載も容易で、光伝送や収録用ユニットと組み合わせ機動性が大いに向上し様々な運用形態が取れる。またCCUからは8K(DG)と4K、HDの同時出力も可能である。4Kカメラ”SK-UHD4000”は2/3”MOS を採用し、感度2000lx F8、S/N 62dBと高画質で、B4マウントレンズが使用でき、従来のHD放送カメラの同等の操作性と運用性で4K撮影できる。スポーツ中継で問題となる感度と深い被写界深度の課題を解決し、既に海外テニスイベントの中継などで利用され好評を得ている。CCUは小型コンパクトで4KとHD同時出力もでき、HDカメラと混在使用もできる。 
 JVCケンウッドはスーパー35mmセンサーとマイクロフォーサーズレンズマウントを採用したレンズ交換型の4Kカメラレコーダー”GY-LS300CH”を、多種多様なレンズと組み合わせ体験させていた。またリリースしたばかりのファームウェアによりダイナミックレンジを広げるJVC Logモードも公開していた。他の機種としては同じセンサーとレンズマウントの分離型の小型4Kカメラ”GW-SP100”も展示し、自由度の高い設置と遠隔操作撮影可能な新たな4K撮影スタイルを提案していた。
 朋栄は従来機種の光ファイバー搭載モデルの4Kハイスピードカメラ”FT-ONE OPT”の性能を継承しつつ、ヘッドを本体と分離し大幅に小型化した”FT-ONE-S”を出展した。ヘッドは約5.5kgと軽く小型になり、防塵・防滴性を強化し、機動性が大きく向上した。ベースステーションと光ファイバーで繋ぎSSDに収録し、撮影速度は4Kモード時最大360fpsである。また撮影時のフリッカーをリアルタイムに除去する画像処理装置”FC-ONE”も展示していた。さらに従来からの直観的なタッチパネル操作で4K 映像の中から任意のサイズ、場所を切り出しHD映像として出力することができ、スポーツ中継のリプレイ用に適した映像処理装置”ZE-ONE”も公開していた。
 ブラックマジックデザインは、軽量小型のハンドヘルドタイプの”URSA Mini 4.6K”と超廉価モデルの”Micro Studio Camera 4K”の2機種を出展していた。前者はスーパー35mmサイズ、画素数4.6Kのセンサーを搭載し、グローバルシャッター式、15ストップのダイナミックレンジで最大60fpsに対応し、レンズマウントはPLおよびEFモデルが選択できる。後者はデジカメスタイルのHD/UHD対応カメラで、堅牢で小型軽量なマグネシューム合金製ボデイには大型10”ビューファインダーが付いている。小型廉価ながら高画質でイベント用だけでなくライブ放送用にも使える。  
 ナックイメージテクノロジイはエージェントをつとめるARRIのALEXAシリーズを展示した。”ALEXA XT”をアップした”SXT”は、大判の4:3センサーを搭載し4K DCI(4,096×2,160)および4K UHD(3,840×2,160)、さらに4K ProResに対応し、アナモフィックレンズと組み合わせ簡便にウルトラ映像を撮影できる。また従来機の性能を引き継ぎ小型軽量化した ”Alexa mini”は、多彩な機能を搭載したオールインワンのカメラで、4:3/16:9切替式のセンサーを採用し、ARRIRAW内部収録、4K UHD ProRes収録が可能である。高画質でメインカメラとして利用できる上、軽量小型性および最大200fpsのハイスピード収録機能を活かした特別用途のカメラとしても活用できる。
 世界の放送業界に小型インターフェースやミニコンバーターなど様々なツールを提供しているAJA Video Systemsは4K60pをメインテーマとしたソリューション展示をしていた。その中でカメラ系は昨年発表されNABやIBCでも評判になっていた4Kプロダクションカメラ”CION”である。人間工学に基づき快適性と利便性を重視し設計された小型軽量モデルで、4K/UHDと2K/HDに対応し、4K60pのProRes内部収録と4K120pのAJA Rawデータ出力が可能である。(映像技術ジャーナリストPh.D.石田武久)

写1:新製品のフラッグシップモデル”F65 RS”(ソニー)

写1:新製品のフラッグシップモデル”F65 RS”(ソニー)

写2:主力となるハンドヘルドタイプの4Kカメラ”AG-DVX200”(パナソニック)

写2:主力となるハンドヘルドタイプの4Kカメラ”AG-DVX200”(パナソニック)

写3:大幅に小型化された3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(池上通信機)

写3:大幅に小型化された3300万画素、単板CMOS搭載のハンディ型8Kカメラ(池上通信機)

写4:廉価な子型4Kカメラ”URSA mini 4.6K”(ブラックマジックデザイン)

写4:廉価な子型4Kカメラ”URSA mini 4.6K”(ブラックマジックデザイン)

#interbee2019

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