【Inter BEE 2018】デジタルコンテンツEXPO 基調講演 社会や生活を変える「テレイグジスタンス」の今と将来を探る アバターロボット「モデルH」も登壇して“時空間瞬間移動”を実感

2018.11.8 UP

舘氏の研究室で開発した最新のアバターロボット『TELESAR V』

舘氏の研究室で開発した最新のアバターロボット『TELESAR V』

「物質が移動するのではなくて、機能が移動する」とテレイグジスタンスの特性を語る東京大学名誉教授の舘 暲氏

「物質が移動するのではなくて、機能が移動する」とテレイグジスタンスの特性を語る東京大学名誉教授の舘 暲氏

YouTubeで公開中の「テレイグジスタンスを実現するアバターロボット「TELESAR」の発達の歴史」

YouTubeで公開中の「テレイグジスタンスを実現するアバターロボット「TELESAR」の発達の歴史」

 その場に居ながら、遠隔地に出かけているような体験ができたら。介護や子育てで自宅から離れられなくても職場と同じ仕事ができたら――。自分の動きを遠隔地で再現するロボットを使って、こうした夢のような“時空間瞬間移動”を実現する技術が「テレイグジスタンス」(telexistence)である。

 Inter BEE 2018と併催される「デジタルコンテンツEXPO2018」(主催;一般財団法人デジタルコンテンツ協会)の基調講演では、テレイグジスタンスの提案者である東京大学名誉教授の舘 暲(たち・すすむ)氏が登壇し、「テレイグジスタンスの今 -時空間瞬間移動産業とテレイグジスタンス社会への挑戦-」と題した講演を行う。テレイグジスタンスがどのように社会や生活を変える可能性を持っているのか、この基調講演で明らかになる。

■現実に近づいてきたテレイグジスタンス、その威力
 テレイグジスタンスは、1980年に舘氏が提唱した技術で、とてもシンプルに言ってしまえばロボット型のアバターを遠隔操作して人間の体験を拡張するものである。ロボットを人間の動きに合わせて遠隔操作し、ロボットが得た視覚や聴覚、触覚の情報を人間にフィードバックする。人間は、あたかもロボットのある場所で自然に振る舞っているような体験を、異なる場所で得られる。概念の提唱から40年近く経って「ロボティクス、通信・ネットワーク、人間に提示するためのVRの3つの技術が革新的に進歩し、ようやく世の中のものになろうとしています」(舘氏)という。

 基調講演では、テレイグジスタンスの歴史や技術だけでなく、テレイグジスタンスがどの ように私たちの社会や生活に関わってくるかを紐解く。舘氏は「テレイグジスタンスが実用化されることで、新しい時空間瞬間移動産業が生まれるでしょう。テレイグジスタンスのロボットに“入る”ことで、人間が瞬間移動したようにその場の体験やその場で必要な業務を行うことができるのです。これを新しい産業として発達させ、テレイグジスタンス社会の創出を目指します」と説明する。

 テレイグジスタンス社会では、瞬間移動によってさまざまな効果が得られる。介護や子育てで自宅から離れられない人がロボットを介して職場の業務を行って人手不足を解消したり、海外からインターネット経由でロボットに入って仕事をすることで時差を活かした業務の遂行ができたり、無医村に専門医がテレイグジスタンスのロボットの形で派遣できたり、危険な場所での作業を安全なコントロールセンターから遠隔で実行できたりと、その応用は幅広い。もちろん、テレイグジスタンスのロボットに入ることで、自宅に居ながらパリやロンドン、ニューヨークの街に旅行をすることも可能だ。障がいがある人がロボットを新しい体として使って、旅行や趣味などのさまざまな体験をしたり、社会参加を果たしたりすることにも貢献できる。

■テレイグジスタンスロボット「モデルH」も登壇
 基調講演には、テレイグジスタンスの産業化を目指す企業であるテレイグジスタンス株式会社のロボット「モデルH」も登壇する予定である。舘氏はこれまでに人間型ロボットの「TELESAR」を開発し、最新のTELESAR Vでは視聴覚だけでなく触覚テレイグジスタンスの実現にも成功した。これらの技術を受け継ぎ、商用ロボットとして開発されたのがモデルHである。舘氏と共演する形で講演を進めるとのことで、なかなかイメージがしにくいテレイグジスタンスについて、実際にどのようなもので、どのようなことができるのかを実体験する貴重な機会となる。

 舘氏は、「テレイグジスタンスがどのようにここまで発展してきたか、技術的にどこまでのことができて、何ができないかを示します。そうした中からテレイグジスタンス社会について来場者の皆さんがそれぞれの専門分野における応用について考えていただけたらありがたい。テレイグジスタンスが実現すると、機械や人工知能(AI)が主体になって人間が仕事を奪われる社会ではなく、人が主体の社会が開けることを感じてもらいたいと思います」と語る。技術は、すでにテレイグジスタンスを実用化する段階に至っている。その上で、新しいテレイグジスタンス社会を実現していくためには、実際のビジネスの現場で多様な応用を考えている来場者の経験やアイデアと結びつけることが求められている。

舘氏の研究室で開発した最新のアバターロボット『TELESAR V』

舘氏の研究室で開発した最新のアバターロボット『TELESAR V』

「物質が移動するのではなくて、機能が移動する」とテレイグジスタンスの特性を語る東京大学名誉教授の舘 暲氏

「物質が移動するのではなくて、機能が移動する」とテレイグジスタンスの特性を語る東京大学名誉教授の舘 暲氏

YouTubeで公開中の「テレイグジスタンスを実現するアバターロボット「TELESAR」の発達の歴史」

YouTubeで公開中の「テレイグジスタンスを実現するアバターロボット「TELESAR」の発達の歴史」

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube