【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】「進化するテレビ視聴ログデータ最前線」〜ホットな話題に最多の聴講者〜

2018.12.21 UP

パネルデータと視聴ログデータの違いを示す図がわかりやすい

パネルデータと視聴ログデータの違いを示す図がわかりやすい

ソニーの視聴ログデータは他のデータと連携できる

ソニーの視聴ログデータは他のデータと連携できる

集めた視聴ログデータにDMPで属性を付与できる

集めた視聴ログデータにDMPで属性を付与できる

HAROiDは独自のIDで個人を特定した視聴ログデータが使える

HAROiDは独自のIDで個人を特定した視聴ログデータが使える

2018年のINTER BEE CONNECTED の中でもっとも聴講者を集めたのが「進化するテレビ視聴ログデータ最前線」と題したセッションだ。多くの人々が集まったのは、それだけ「視聴ログデータ」が放送業界でタイムリーな話題となったからだろう。最新・最先端のテーマを扱うこのセッションにはテレビ朝日 インターネット・オブ・テレビジョンセンター・ビッグデータ担当部長 松瀬俊一郎氏、HAROID取締役副社長 田中謙一郎氏、ソニーマーケティング ネットワークサービス部ビジネスプランニングマネージャー 佐保学氏が登壇。電通 ラジオテレビ局局長補 須賀久彌氏がモデレーターを務めた。視聴ログデータとはどんなもので、何に活用できるのか、基礎から課題までよくわかるセッションとなった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境治)

このセッションでは会場の椅子は満席となり、壁際と会場後ろも立見の人びとで埋め尽くされ、会場をはみ出す形で熱心な聴講者が集まった。まず最初に、モデレーターの須賀氏が基礎編的にテレビにまつわるデータについてまとめたスライドを披露。ビデオリサーチの視聴率など調査対象が定まっている「パネルデータ」がある一方で、機器から上がってくるデータを集めた「視聴ログデータ」があることを解説した。ログの方を「全数データ」と呼ぶことも多いが、「全ての視聴データが取れるならこれまでのパネルデータは不要になるのか?」と誤解する人も多いので、あえて「実数」という言葉を使っているという。例えば「番組を見ていない人の割合」は調査対象が固定されているパネルデータしか把握できない。一方、実数データは量が多いためセグメントを切った細かな分析に適している。パネルデータと視聴ログデータは異なる特徴を持つため、両方を組み合わせて使うべきと説明された。

続いて佐保氏がソニーマーケティングの考え方をプレゼン。ソニーのテレビと録画機、そしてゲーム機からの100万台のデータソースを活用し、それをレポーティングする「TV Viewing Trend」、他のデータと接続する「TV Viewing Connect」を提供しているという。後者はWEB行動データや来店位置情報データ、ネット広告配信データなど様々なデータと連携することで多様なマーケティングに役立てることができる。

テレビ朝日の松瀬氏は地上波テレビ局が視聴ログデータを分析する目的を解説。編成や制作にも役立つ一方、営業面ではスポンサー企業からの要望に応えて性年齢だけでなく興味関心・趣味嗜好などの視聴者プロフィールを明らかにしたり、大量の実数データを提示することでデータ不足の解消を示せるなどメリットは大きいという。テレビ局同士の協力もはじまっており研究は加速しそうだ。

田中氏は、この分野で一歩先んじた感のあるHAROiDの取り組みをプレゼンした。これまでの取り組みを通じてHAROiDでは570万人のアカウントを取得済みで、そのうち10万人(2018年10月末現在)はTVログインしているユーザー。年度内には15万人を目指すそうだ。このユーザーからは個人を特定した視聴ログデータが収集できるので、誰がどのCMを視聴したあと、購買やクーポン利用などに関与したかまで把握できる。これにより企業のマーケティングでの様々な活用が考えられそうだ。

3社からのプレゼンのあとは、さらに深掘りするディスカッションに入った。中でも収集・利用する上での課題の議論は重要かもしれない。松瀬氏は「参考」としてスライドを見せながら「視聴履歴」と「非特定視聴履歴」の違いについて解説した。「視聴履歴」は個人を特定できるものなので事前に同意が必要であり、法律やガイドラインを遵守する必要がある。収集できる数は限られるが、その分活用領域は広い。「非特定視聴履歴」は個人を識別できないもので、事前同意は原則不要。実数データとして大量に扱うことができ、他のデータと連携すればダイナミックに活用できる。それぞれ取り扱い方が違うことは、知っておくべきことだろう。さらに実際の運用面では、各社が様々な配慮から慎重に取り組んでいることも説明された。

ディスカッションの後半では、TVログインしたアカウントを対象にネット広告を配信すればクリック率が約5倍に高まったHAROiDの事例や、VODとリアルタイム視聴のログの照合で見逃し配信の放送への影響を分析したソニーマーケティングの事例も話題に上った。視聴ログデータはこれまでのテレビとデータの関係を格段に広げて、広範囲に渡って役立つことが見えてきた。その研究はまだ始まったばかりだが、テレビ放送の、あるいは個々の番組の新しい価値づくりにつながることがイメージできた。視聴ログデータについて初めて大勢を前に議論された場として、非常に有意義なセッションだったと言えるだろう。

パネルデータと視聴ログデータの違いを示す図がわかりやすい

パネルデータと視聴ログデータの違いを示す図がわかりやすい

ソニーの視聴ログデータは他のデータと連携できる

ソニーの視聴ログデータは他のデータと連携できる

集めた視聴ログデータにDMPで属性を付与できる

集めた視聴ログデータにDMPで属性を付与できる

HAROiDは独自のIDで個人を特定した視聴ログデータが使える

HAROiDは独自のIDで個人を特定した視聴ログデータが使える

#interbee2019

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