【NEWS】International CES クアルコム基調講演 同社のSoC内蔵スマートTVに同期技術「オールジョイン」を搭載し新たな視聴環境を提案

2013.1.15 UP

アルコム会長兼CEOのジェイコブス博士
ゲストとして登場した米マイクロソフト社のスティーブ・バルマーCEOは、「Windows RT」を紹介した

ゲストとして登場した米マイクロソフト社のスティーブ・バルマーCEOは、「Windows RT」を紹介した

同期技術「オールジョイン」搭載スマートTVによるNASCARレース番組(左がTV画面、右がセカンドスクリーン)

同期技術「オールジョイン」搭載スマートTVによるNASCARレース番組(左がTV画面、右がセカンドスクリーン)

クアルコムのARソフトウェアを利用した、米セサミワークワークショップ財団の教育用ソフトが紹介された

クアルコムのARソフトウェアを利用した、米セサミワークワークショップ財団の教育用ソフトが紹介された

 新年の幕開けを飾る展示会「International CES」(以下、CES)の最初の基調講演は、米クアルコム社のポール・ジェイコブス会長兼CEOが行った。通信技術の開発と通信用半導体の販売で大きく伸びた同社は、通信に軸足を置きつつも多様な分野に業務を広げようとしている。
(日本大学生産工学部 講師/映像新聞 論説委員:杉沼浩司)

■クアルコム会長がCESの開幕講演の定席に
 CESは、以前は夏季、冬季の年2回開催されており、夏はシカゴ、冬はラスベガスが長く続いた。後に冬季CESがインターナショナルCESと改称し、夏季は廃止された。冬季CESでは、開始前夜に米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長による基調講演が行われてきた。1月開催のCESの講演内容は、前年11月に開催されるCOMDEXでの講演と重なる時期もあった。その後、COMDEXの開催がなくなり、ラスベガスでゲイツ会長が基調講演を行うのはCESとなった。
 この講演は2008年まで続き、2009年からは同社のスティーブ・バルマーCEOが引き継いだ。バルマー氏の基調講演は、2012年で終了しマイクロソフトもCESから撤退した。そのため、伝統ある前夜基調講演を引き継ぐのは誰であるかが注目されていた。昨年のCESでは、クアルコムのポール・ジェイコブス会長兼CEOが見事な開幕講演を行った。また、同社が新たなモバイル時代を切り開いてきたことから、ジェイコブス博士が引き継ぐ可能性が高いと見られていた。
 周辺の予想通り前夜基調講演の場に立った同氏は、講演者としては「第三の男」となる。

■「2016年までに50億台のスマートフォンが販売」
 昨年の基調講演を経験しているジェイコブス博士は、緊張した様子もなく基調講演の舞台に立った。約3000席を擁するベネチアンホテルのボールルームは満席であった。
 最初に同氏は、携帯電話とスマートフォンの普及の状況を報告した。現在、毎日100万台のスマートフォンが新たに利用開始されているという。2016年までに50億台のスマートフォンが販売されると予測されている。また、同氏によると、新興国や発展途上国では、スマートフォンが唯一のネットワークアクセスの道具であるという。PCと固定のネットワークサービスの組み合わせは価格的に受容されないことになる。
 クアルコムは、現在の無線通信技術の中核をなすCDMA(符号分割多元接続)技術を実用化した企業である。同社の知財権は、第3世代およびそれ以降の携帯電話技術に多く取り入れられている。また、同社はCDMAを中心とする通信用の半導体をこれまでに110億個以上出荷してきており、CDMA通信分野では最大規模を誇っている。通信技術とビジネスの双方を把握する立場からなされる予想は、非常に説得力を持って捉えられている。
 同氏は、スマートフォンに代表される機器を用いて通信を活用する人たちを「ボーン・モバイル(モバイル人)」と表現した。ボーン・モバイルは決して若年層に限られるのではなく、活用する人は物理的な年齢に関係ない。そして、我々すべてがモバイル人たる、と定義した。

■バルマー氏登場 スナップドラゴンへのウィンドウズ搭載をアピール
 続いて、ジェイコブス博士は、同社が開発したシステムLSI(SoC)「スナップドラゴン」に話題を進めた。スナップドラゴンは、ARMアーキテクチャによるコアをCPUとし、グラフィックス、メモリ制御、通信などの周辺機能を集積したものである。このSoCを用いたタブレットやノートPC、そのほか多様な機器が開発されている。
 ここで同氏は「マイクロソフトでさえモバイルに対応している」として「スナップドラゴン用のウィンドウズがある」とOSもリナックス/アンドロイド以外にあることを示した。同氏がゲストとして紹介したのは、昨年まで同じ場所、同じ時間に基調講演を行っていたマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOである。
 ビデオ出演かと思いきや、本人が舞台の袖からうなり声とともに駆けてきた。これは、同氏が登場の際に取っていたスタイルである。バルマー氏はARM機用に「ウィンドウズRT」があり、これには多くのウィンドウズ用アプリケーションを容易に移植できることを示した。また、スナップドラゴンを搭載しウィンドウズ・フォーンが動作するスマートフォンも2機種も紹介し、同社がスマートフォン分野でも対応していることを示した。

■大幅な性能向上 「800シリーズ」は4K対応で消費電力を低減
 次に、ジェイコブス博士は最新のスナップドラゴンの紹介に移った。スナップドラゴンは、これまでに70以上の企業から製品が出荷され、機種数は500以上に及ぶ。
 今回、新たに「600シリーズ」と「800シリーズ」の2系統が追加された。800シリーズは、4個のコアを搭載し、駆動周波数は2.3GHzという極めて高い周波数となっている。通信機能は、LTEの最新規格であるLTEアドバンスドに対応している。また、無線LANはギガビット級の速度をうかがう最新規格「IEEE802.11ac」に対応したインターフェイスをもつ。
 本年後半に出荷開始予定の800シリーズは、フルHDで30fpsの出画が可能という。この性能をデモで示した同氏は「ゲーム機級の画質がモバイル機で得られる」と誇った。また、800シリーズは4Kにも対応していることも明らかにした。
 新世代のスナップドラゴンは、消費電力も抑えられ「グラフィックス部分の消費電力は半減している」という。極めて高性能のモバイル機器が年末から来年にかけて登場しそうだ。

■TVとセカンドスクリーンとの同期を可能にする技術「オールジョイン」
 スナップドラゴンは、スマートTVにも搭載されている。スマートTVで楽しめるコンテンツとしてはNASCAR(市販車改造車によるレース)番組が示された。同社の同期技術「オールジョイン」を搭載したスマートTVでは、NASCARレース番組においてメインスクリーンとセカンドスクリーンに種々の情報が表示され、従来とは異なる次元の楽しみ方ができることが示された。このコンテンツでは、視聴者はどのカメラの画像を表示するかを選択でき、さらには選択したレーサーとピットの無線通信も聞くことができる。パーソナライゼーションを徹底できる。
 デモでは、地デジのデータ放送では実現できないダイナミックな画面構成でレースが中継される様子が見られた。また、タブレットとの同期も問題なく行われており、オールジョインが機器間同期技術として有効であることがデモされた。「スマートフォンやタブレットが協働することでデジタル第6感として働く」とジェイコブス博士はその可能性を示した。
 デモの最後は、同社の非接触充電技術を搭載したEV版ロールス・ロイスであった。3ヶ月に及ぶ実証実験に使われた車両が静かに自走して登場した。この後、人気バンド「マルーン5」による生演奏が行われ、賑やかに前夜基調講演は終了した。

ゲストとして登場した米マイクロソフト社のスティーブ・バルマーCEOは、「Windows RT」を紹介した

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#interbee2019

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