【InterBEE 2013】Inter BEE で一気に花開いた「4K」 HEVCによる伝送関連機器も充実 次世代放送へ向けた支援機器も多数登場

2013.11.24 UP

エクスプローラは、開発中の4K対応HEVCエンコーダ・デコーダを出展した

エクスプローラは、開発中の4K対応HEVCエンコーダ・デコーダを出展した

ヴィレッジアイランドの4Kプレイヤー「VillageSTUDIO」は、10bit60Pに対応する

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三菱電機は、FPUでの素材伝送を想定したHD用HEVC小型エンコーダを開発した

三菱電機は、FPUでの素材伝送を想定したHD用HEVC小型エンコーダを開発した

ローデ・シュワルツ・ジャパンは、4K伝送の全過程を自社製品で扱えることを示した

ローデ・シュワルツ・ジャパンは、4K伝送の全過程を自社製品で扱えることを示した

 11月13日から15日の間、千葉県千葉市の幕張メッセで開催された「Inter BEE 2013」は、4K関連展示で埋まった。4月のNAB Showでは、ポツポツ、9月のIBCではアチコチといった状況が、11月には一気に花開いた感がある。なかでも、4K伝送の要たる符号化方式HEVCに対応した機器が多く見られた。また、それ以外でも次の世代の放送に向けた支援機器が登場してきた。特徴的な機器を紹介しよう。(上写真=営電の信号発生器3253Aは、4K放送で使われる新たな衛星伝送方式の信号を発生する)
(映像新聞 論説委員/日本大学生産工学部 講師 杉沼浩司)

■花開いた4K デジタルシネマ仕様から放送仕様へと領域拡大
 本放送がどのように実施されるかは別にして、4K機材はついにInterBEEにおいて花開いた。カメラ、モニタから始まった4K関連機材は、送出、伝送機器、そして測定器まで整備が進んだ。今回のInterBEEでは、制作から送出に至るほとんどの過程に4K機材が現れた。また、従来4Kでは24Pもしくは30Pといったデジタルシネマ仕様の時間解像度程度の機器がほとんどだった状況も激変した。今回は、60Pという放送仕様の機器が増えており、制作に向けて状況が整備されていることがみてとれた。
 本来、InterBEEに先駆的な機材が現れ、翌年のNAB Showで一部企業が販売を開始、そしてIBCで機材が豊富に揃うのが放送機器の流れだったはずである。InterBEEが流れの最後の場所になるということは、それだけ日本のメーカーが様子見に入っていることを意味するように感じられてならない。次の8Kでは、是非とも流れはInterBEEに始まり、NAB ShowとIBCが流れを拡げるものとなって欲しい。

■エクスプローラ 4K30Pを15Mbpsでリアルタイムエンコード 来年には60Pを完成へ
 エクスプローラは、開発中の4K対応HEVCエンコーダ「EHU-1401E」とデコーダ「EHU-1401D」を出展した。メインプロファイル@レベル5.1に対応する。展示された機器の仕様としては「3840×2160/30P、60P」となっており、放送利用を強く意識したものとなっている。
 会場では、デコーダのみを動作させており、同社が4Kカメラ(ソニーF55)にて函館市内を撮影した映像を流していた。デモでは、30Pの4K映像を15Mbpsでエンコードしたものが使われた。
 同社の4Kエンコーダ、デコーダは、マルチコア型のプロセッサを使用して処理している。現在、ソフトウェアの開発が急ピッチで進められており、来年2月には60Pを処理するエンコーダ、デコーダが完成する見込みという。通常の符号化機能に加えて、レート制御機能を持つ事を大きな特徴としており、この面でも注目が高いという。
 市場へのリリースは来年4月が予定されているため、NAB Showの頃には、60Pに対応して4Kエンコーダ、デコーダとして世界にお披露目がなされそうだ。

■富士通が4K映像を15MbpsでHEVCエンコード LSIは再来年完成へ
 富士通は、HEVCとMPEG-4/H.264(以下、AVC/H.264)の4K(3840×2160@60P)画質比較を大きくデモしていた。フォーミュラ・ニッポンの映像は20Mbpsで、野球の映像は15Mbpsでエンコードされたものである。いずれも、AVC/H.264では多くの破綻があり商用には難しい画質であったが、HEVCでは乗り切っていた。同社は、現在HEVCのLSIを開発しており、これを組み込んだ装置を2015年に発売するという。来年のInterBEEには、サンプル段階のLSIによる映像を展示したいとしていた。

■三菱電機 HD素材伝送をHEVCで FPUの新周波数帯に対応
 三菱電機は、素材伝送用途としてHD用HEVCエンコーダを出展していた。ボード1枚に収められており、小さな筐体に実装できる。同社によれば、FPUの新周波数帯利用に合わせた機材更新にあわせてHEVC導入が進むことを期待しているという。新周波数帯では、現行並みの物理チャンネル数が確保されるが、ここにより多くの映像を入れたいとの要求があり、伝送効率に優れるHEVCを用いることで、物理チャンネル数以上の映像チャンネルを提供することを目指している。デモでは、3MbpsでエンコードしたHD映像が示されていた。このエンコードおよびローカルデコードは、出展された検証機(注:このまま製品に実装されるバージョンではない事を示す)で実施された。

■ヴィレッジアイランド 4K60Pプレイヤー HEVC、JPEG2000に対応
 ヴィレッジアイランドは、会期開始直前に発表した「ヴレッジスタジオ4K」を出展した。これは、4K60Pで再生可能なプレイヤーで符号化方式はHEVC、JPEG2000などに対応する。最上位機種は、HEVC4K(3840×2160@60P)の再生が可能だ。色分解能は10ビットであり、ビットレートは40Mbpsまでとなっている。また、ソニーがAVC/H.264を拡張して開発したXAVCに対応させることもできる。デジタルシネマの標準方式であるJPEG2000も使用できる。基準信号(映像)の発生の他、高精細デジタルサイネージ用のコンテンツ送出装置としての利用も見込んでいるという。

■測定環境が充実 営電は「4K放送方式準拠」の製品を出展
 測定環境も4Kへの対応が始まった。
 ローデ・シュワルツ・ジャパンは、4K映像をHEVCでエンコードし、DVB-T2方式にて変調しケーブル伝送、復調後最終的にマルチモニター環境に映像を映し出すデモを行った。素材のエンコードからマルチモニター表示まで、すべて自社の機材で行っている。同社は、測定器や信号発生器で知られているが、最近は上流(HEVC等の符号化、復号や画面表示制御)関連装置もラインアップに含めている。今回のデモは、送出した4K画像を中央に、周辺に複数のHD画像(いずれも縮小)を表示して、状況観視などに使えることを示していた。
 営電は、4K放送に使われる電波方式である「高度広帯域衛星デジタル放送方式」に準拠した信号を発生する信号発生器「3253A」を参考出展した。3253Aは、方式に準拠した信号を発生するばかりでなく、中継器の非線形性、降雨減衰、受信配線による反射などのシミュレーションが可能で、実際の受信環境での性能評価などに使える。同社は、セットメーカーやチューナーなどの受信用部品を製作するメーカーへの販売を見込んでいる。
 同社のブースには、新製品のRFキャプチャー装置「4416A/4417A」も出展されていた。地デジ、衛星放送の電波をそのまま取り込み、実際の受信状態を解析するために使用する。キャプチャーは、フィールドで行われることが多いため、いずれも可搬型であり、特に4416AはDC12V駆動に対応している。
 測定器の充実は、4Kが研究段階から開発・設計の段階に移行していることを示している。測定器の充実があれば、製造の立ち上がりも速いと期待される。

エクスプローラは、開発中の4K対応HEVCエンコーダ・デコーダを出展した

エクスプローラは、開発中の4K対応HEVCエンコーダ・デコーダを出展した

ヴィレッジアイランドの4Kプレイヤー「VillageSTUDIO」は、10bit60Pに対応する

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三菱電機は、FPUでの素材伝送を想定したHD用HEVC小型エンコーダを開発した

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ローデ・シュワルツ・ジャパンは、4K伝送の全過程を自社製品で扱えることを示した

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#interbee2019

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