私が見たInter BEE 2012(その3)コンテンツ制作系、映像モニター系

2012.11.29 UP

ファイルベースのトータルワークフロー(朋栄)
デジタル時代に対応する制作システム(グラスバレー)

デジタル時代に対応する制作システム(グラスバレー)

会場唯一の8Kシアター(アストロデザイン)

会場唯一の8Kシアター(アストロデザイン)

迫力ある高精細な4Kテレビブラビア(ソニー)

迫力ある高精細な4Kテレビブラビア(ソニー)

素晴らしいコンテンツを公開した4Kシアター(キヤノン)

素晴らしいコンテンツを公開した4Kシアター(キヤノン)

 (その1)では今大会の全体概要や各種イベントについて、(その2)では多様化、多極化しているカメラの動向について見てきた。本号では放送局や制作プロダクションで進んでいるファイルベースワークフローが進む制作系、そして高画質化する映像品質を管理・表示する映像モニター動向について見てみたい。


≪コンテンツ制作系≫

 朋栄はデジタル時代に相応しく、映像素材をメタデータと連携し素材のインジェストから編集、送出、アーカイブまでを統合管理するファイルベースのトータルソリューションを展開していた。全体を管理するMedia Conciergeは新機能が追加され、編集・送出系は運用性、操作性が改善され、アーカイブ系には高速転送で大容量の新型LTOサーバが投入されている。その他、テロップ入れやスイッチングなど制作に必要な機能を盛り込んだオールインワンプロダクションシステム“Smart direct”や新製品のビデオスイッチャー“HANABI”シリーズ、最近の複雑高度で高品質のコンテンツ制作環境に相応しい高機能カラーコレクターやフレームレートコンバータ、高画質のマルチビュアなどの最新鋭機が数多く公開されていた。

 ソニーは高速・大容量の“SRMemory” を使いHDはもちろん4K、3D、60pにも対応するファイルベースワークフローシステム“SRMASTER”の実演と豊富になったXDCAMシリーズに対応し、撮影からノンリニア編集、送出、アーカイブまで“XDCAM Station”を核にするファイルベースシステムを公開した。また記録媒体として大容量、高速のオプティカルディスクアーカイブも展示されていた。池上通信機も時流に添いファイルベースワークフローソリューションとして実績ある“iSTEP+”を公開していた。番組情報を管理するアセットゲートウエイサーバと実データを記録する編集・素材サーバを核に、登録・収録から編集・送出、アーカイブまでネットワークで繋ぎ一体運用するトータルシステムである。

 東芝はファイルベースワークフローの核になるサーバとして“VIDEOS neo”を出展した。記録メディアに信頼性の高い64Gbフラッシュメモリーを基本に構成し、メモリーボードは3種類から選択でき最大60TBまで拡張でき、低消費電力で小型の省スペースを実現した。さらなる信頼性向上のためRAID機能を追加し、番組・送出用サーバとして既に民放キー局やローカル局をメインに20局から受注実績を上げているそうだ。またアプリケーション“merify”を核にLTOメディアを使った拡張性のあるライブラリシステムも展示していた。フォトロンデジックスは、今年合併したイマジカデジックスともども培ってきた関係各社の様々な製品を展示していた。AVIDの現場からニュース配信できる“Interplay Sphere”、ブラックマジックのカラーグレーディング・フィニッシングシステム“Nucode FilmMaster”やカラーコレクター“DaVinci Resolve”、vizrtの3Dスポーツ解説システム“Libero Highlight”など多種多彩なシステムの実演公開を行っていた。
 
 50年以上にわたり世界の放送業界のトップブランドであるグラスバレーは、本格的デジタル時代を迎えた今、放送分野だけでなく広範なユーザーの多様な要望に添う最先端の多種多彩なシステムやソフトウェアを出展していた。映像制作ワークフローを効率的にする次世代アセットマネージメントシステム“STRATUS”、1080p 50/60フォーマットの新製品メディアサーバー“K2 Summit 3G”、 最新版ノンリニア編集ソフトウェア“Edius 6.5”、 マルチチャンネル対応の総合型送出システム“K2 Edge”、プロダクションスイッチャーの“Kayenne”&“Karrera”シリーズなど、各コーナー毎に実演展示が行われ大勢の見学者を集めていた。急速に世界的に販路を拡張しているブラックマジックデザインは最近の映像メディアの流れに沿い、4K関連システムとしてHyperDeckのSSDレコーダーと再生用“Studio Pro”、4Kワークフローに対応するSDI to HDMI 4KとSDI Multiplex、さらにTeranexの2D、3D用プロセッサーやコンバーターを展示していた。また恒例の“DaVinci Resolve”(Mac版)については国内外の著名なカラーリストによりカラーグレーディングシステムのデモが行われ、実際に使っているユーザーとの交流も行われていた。
クオンテルはNAB、IBCでも好評だった“Pablo Rio”や“QTube”などの実演公開をし、オートデスクは自社ブースではNABで発表以来注目のフィニッシングツール“Smoke 2013”などの実演が行われ、システム等はNGCなど代理店のブースで展示されていた。アビッドは今回自社ブースを開設せず、各代理店ブースにて多種多彩なシステムを公開していた。


≪映像モニター、ディスプレイ≫

 超高精細映像システムに積極的に取り組んでいるアストロデザインはブース正面に8K SHVシアターを設けていた。シアター内に設置されたディスプレイはNHK技研公開やロンドンオリンピックでのSHVパブリックビューイングでも使われていたシャープ製85"直視型LCD(画素数7680×4320)で、NHK制作のシャトル打ち上げの様子を撮影したSHV映像が8K用SSDを使い再生されていた。またシアター外周には4K液晶モニターも置かれ、8Kからダウンコンバートされた4K映像が表示されていた。さらにブース内には56"型、32"型、28"型の各種4Kモニターと9.6"型4Kビューファインダーが並べられていた。大画面の56"モニターにはセットの生映像に加え、富士通やキヤノンブースから伝送された4Kライブ映像が表示されていた。また同じモニターを使い、4K SSDレコーダーから再生された4K作品「小笠原の海」の美しい映像も映しだされていた。中型サイズの32"型は、先のシーテックやFPD展にも出展された“IGZO”技術(シャープ)が投入されたモデルである。IGZOとはインジゥム(In)、ガリゥム(Ga)、亜鉛(Zn)で構成される酸化物半導体で、これを採用した液晶パネルは従来のアモルファスシリコン利用に比べ、薄膜トランジスタの小形化、配線の細線化により省エネルギー、光の透過量の向上、高精細化が可能で、大型だけでなくモバイル端末用ディスプレイの高品質化にも有効である。さらにブース壁面には“Christy Microtile”を24面(6×4)を重ね合わせたマルチ画面ディスプレイ4Kビデオウォール(画面サイズ98"相当)が設置されていた。

 ソニーはスイートルームの4Kシアターにて、“F65”カメラで撮られた世界自然遺産などの素晴らしい迫力ある高精細4K映像が“SXRD”プロジェクターにより大画面に映写され、室外にはシーテックにも出展された4Kテレビブラビアが置かれ、スペインやイタリアの魅力的な美しい映像が映し出されていた。ブース内の映像モニターコーナーには、マスターモニターを目指すフルHD対応有機ELタイプの“TRIMASTER EL”シリーズの25"型および17"型や業務用4K液晶型ピクチャーモニターも展示されていた。パナソニックはIPSパネルを採用し広色域でフルHDの液晶タイプの21.5"型とWXGA 18.5"型モデルを展示していた。放送局などへの映像モニターの納入実績が高い池上通信機は、従来からの32"、24"、17"型に加え、新製品の9"、5"型3連、7"型2連モデルなどを並べていた。さらに次世代を視野に入れたモニターとして4K対応31.5"型LCDモデルや7.4"型有機ELタイプのビューファインダーを参考出品した。

 キヤノンは4Kシアターで大画面ディスプレイを使いEOSシリーズで制作したコンテンツ“Galaxy's Skirt”およびメイキング映像を公開していたが、森林の中の幻想的シーンや都会の夜の情景などが美しく表現されていた。ブースにはNABやIBCでも公開された忠実な色再現性と高解像度・高コントラストを実現した30"型4Kディスプレイも参考出品していた。ナックはNABやIBCでも評判になっていたリファレンスモニター(ドルビー)を展示していた。これはフレーム単位で個別にRGB LEDバックライトを制御するLCDモニターで、広いダイナミックレンジと深い黒レベル、全色域にわたり高いカラーコントラストを実現でき、正確な色再現を確認作業するプロ向きモニターで注目を集めていた。

映像技術ジャーナリスト(学術博士) 石田武久

デジタル時代に対応する制作システム(グラスバレー)

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会場唯一の8Kシアター(アストロデザイン)

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迫力ある高精細な4Kテレビブラビア(ソニー)

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素晴らしいコンテンツを公開した4Kシアター(キヤノン)

素晴らしいコンテンツを公開した4Kシアター(キヤノン)

#interbee2019

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